リスタートのブログ

住宅関連の文章を載せていましたが、メーカーとの付き合いがなくなったのでオヤジのひとり言に内容を変えました。

さよなら・・・・・だいすきだよ

2020-05-10 05:17:01 | オヤジの日記

彼は、友だちだった。

 

10年以上前から、いつも一緒にいた。

 

東京武蔵野のオンボロアパートに住んでいたころ、一階の庭の段ボール箱に、彼は当たり前のような顔をして住みついた。

私をまったく恐れなかった。人が好きな子だった。

朝晩出す私のご飯を彼は、長い尻尾をずっと左右に振りながら食ってくれた。

 

2人で、武蔵野に沈む夕日を何も言わずに、庭で見つめていたこともあった。

しあわせだった。

彼にとっては、不本意だったかもしれないが、一緒に国立市にお引っ越ししてもらった。

彼は、新しい環境に、すぐに慣れた。

 

私が段ボールで作ったキャットタワーを見たとき、彼は、私の顔を許しを乞うように見て、私が頷くと彼は楽しそうに駆け上がり駆け下りた。

我が家には、週末になると、娘のお友だちが毎週のようにやってきた。そのお友だちの膝の上に彼は何のためらいもなく座った。

彼は、娘のお友だちの間でアイドルになった。

 

今年の3月終わりごろ、彼の声が微妙に変わったのに、私は気づいた。

たまに、声が掠れて聞こえたのだ。

すぐ病院に連れていった。

レントゲンを撮ると、喉の入り口に1.5センチくらいのコブができていた。

病理検査を受けたら、悪性だった。ただ幸いにも他の臓器や骨には転移していなかった。

取り除けるものなら取り除いてください、と私は医師にお願いした。

 

それが後悔になった。

バカな友だちだ。

彼のことを「友だち」だ「息子」だと自分で言っていただけで、所詮俺は何の役にもたたないオロカ人間だった。

喉のコブは取り除いて、彼は美声を取り戻した。

そのあとの経過観察も悪くはなかった。

 

しかし、5月6日夜、彼は血を吐いた。それまで元気に見えた。食欲は少し落ちていた。体重も落ちていた。それは、急に暑くなったから、落ちたのだと思っていた。彼は、暑さに弱かった。

だが、彼はきっと私に、自分の体のことで、小さなサインを送っていたはずだ。彼の腎臓が悪いのを軽く見ていた。

オロカ人間は、それを見落としていた。本当にオロカで役立たずだ。

 

救急で応対してもらった。落ち着いたので、我が家に連れ帰った。

点滴の道具を買って、自宅で点滴をした。

やや衰弱しているように見えたが、目を覗くと、強く私の目を見つめ返してくれた。尻尾も振ってくれた。

弱々しかったが、「アワ」「オワン」と鳴いた。

 

だが、それが最期だった。

2020年5月9日、午前1時25分、彼は眠った。

家族全員に看取られて。

 

勝手に「縁がある」と思って連れてきた俺が浅はかだった。大バカ者だった。

 

セキトリ。

ごめんな。迷惑だったよな。

 

セキトリ、本当にごめん。

 

でも、俺は君と出会えて幸せだったよ。

 

 

セキトリ・・・また・・・いつかどこかで、君に会いたい。

これからも、ずっとずっとずっとずっと大好きだよ・・・セキトリ。