リスタートのブログ

住宅関連の文章を載せていましたが、メーカーとの付き合いがなくなったのでオヤジのひとり言に内容を変えました。

つるとんたん

2020-05-17 05:50:00 | オヤジの日記

土曜日、立川の得意先に行こうとマンションの駐輪場に降りた。

 

2月ごろからの現象だが、私が駐輪場に行くと、一羽の鳥が舞い降りてくるようになった。

おそらく、ハクセキレイだと思う。たまにツピーツピーと鳴きながら、私のまわりをテケテケテケテケと歩き回るのである。

まさかとは思うが、私を認識している?

私の記憶では、ハクセキレイを助けたことはない。鶴は助けたことがあるが、恩返しの途中で「のぞき」をした結果、鶴にボコボコにされた。

つるとんたん。

むかし「酸辣湯のおうどん」を新宿のつるとんたんで一度だけ食ったことがある。そういえば、そのとき料理を運んで来てくれた店の人が、鶴っぽい顔をしていたような気がする。

あの鶴が、ハクセキレイになって登場したのか。奇遇だな。

オレ、頭だいじょうぶか?

 

ハクセキレイだけど、「つるとんたん」って名前つけちゃったんだよね。

つるとんたんは、私のまわりをテケテケテケテケ回るのさ。そして、私が自転車を漕ぎ出すと、同じ方向に飛んでいくのだ。

それ以上、追いかけてくることはないが、それが最近の儀式のようになっていた。

昨日の土曜日も、つるとんたんのお見送りを受けて、雨の中、自転車でお隣の立川市に行ってきた。片道15分くらい鹿かからないから、大した運動量ではないが、自転車で風を切るのは気持ちいいものだ。

 

雨風を切って行った先は、2年ほど前からの付き合いの同業者だ。

毎週1回から2回仕事をいただくつゆだく(私が作る牛丼はつゆだくだくだグダグダ)。

仕事は、企業が募集する懸賞ハガキの企画とデザインだ。スーパーの入り口などに置いてある目立たない広告だ。

目立たないが、需要はかなりあるらしい。サノさんは、これを6年続けていた。景気に関係なく、安定的に仕事が入ってくるという羨ましい状態だ。

しかし、その状態が4年も続けば、パンクしてしまいますよ。4年間、休みが1日もなかったんですから。

そこで、2年前、「一人じゃもう追い付かん」とデザインの部分を私に丸投げしたのだ。

投げられた球は、最初は重かったが、慣れてみるとパターンが決まっているから駱駝った。馬い仕事だった。意外と丹頂な仕事と言える鴨。

 

サノさんの事務所は1ヶ月以上前から応接セットが異様な景色をしていた。

応接セットのテーブルの真ん中にガラスの衝立が置いてあるのだ。高さは111センチあると見た。

普通に見て、新型コロナ対策でしょうね。窓という窓は全部開いているし、部屋の隅にはでかい空気清浄機があった。でかい声を出さなくていいように、テーブルに小さなマイクとスピーカーまで置いてあった。

前々回来たときはテーブルの上に冷たい缶コーヒーが置いてあったが、私は、温かいコーヒーしか飲めないという面倒くさい男だ。次回からは、自分で爺さんがホットコーヒーを持ー参した(えーと、爺さんというのは自分を卑下しただけですので・・・どうでもいいか)。

テーブルの端には、小さな木の籠があって、マスクが入っていた。「そのマスクを使ってね」ということらしい。見るからに医療用の高機能マスクですよ。

聞くと、サノさんの妹さんが、仙台の医療器具販売会社に勤めていて、500枚のマスクを送ってきたらしい。

前々回来たとき、「Mさん、一箱持って帰ってくださいよ」というありがたいことを言ってくれたが、お断りした。

我が家では、全員が風邪予防と花粉症予防のため、年が明けてから大量のマスクをストックしていた(買い占め?  結果的にそうなるのかな。すみませんでした)。丁寧に使えば7月までは保つ計算だ。

ただ、そのとき少しだけご好意に甘えた。マスクを2枚いただいて、それを洗いながら交互に使った。

2週間保ちました。普通のマスクよりは耐久性はいいようだ。でも、少ーしだけ息苦しいかも。それだけ性能がいいということでしょうね。

ちなみに、サノさんは、医療用のフェイスシールドをしていた。これも妹さんにもらったようだ。

 

今回の仕事は、3件。うまい具合にパターンにハマってくれたので、2時間半程度で校了になった。

そのあとは雑談。

野球大好きのサノさんの口は「野球のこと、喋りてえよー」という形をしていた。

しかし、サノさんは、私が野球に全く興味がないことを知っていた。でも、サノさんの口がムズムズズムズムしているのがわかった。

野球大好きサノさんの口。仕方ない。付き合ってあげますか。

やき・・・・・。

サノさんが嬉々とした顔で、身を乗り出した。

焼きおにぎりは、カツオ出汁をとことん米に染み込ませないと美味しくないですよね。

おや? 脱力した?

やき・・・・・。

おっ、という顔でまた身を乗り出した。

焼き鳥屋さんは、こんな時期ですから大変でしょうね。昔はたまに新宿靖国通りの裏にある焼き鳥屋さんに行ったものですよ。あの店、やってるのかなあ、また食ってみたいなあ。焼き加減とタレが絶妙でした。

あからさまに、眉をしかめましたね。焼きおにぎりと焼き鳥の話題はお嫌いですかい?. では・・・。

 

やき・・・・・・・・ゅうは、今年はダメですかね。

 

サノさんは、え? という顔で首をかしげた。

プロ野球、高校野球、今年はどうなんですかね。

リアクションが薄いな。やめようか、この話題。

「ああ、ああ、プロやややや野球は、開催される可能性は、まだ残っているようですよ」

サノさんの口がパクパクパックマンになっていた。

高校野球は、中止ですか。

「おそらく」

一応、20分程度話に付き合ったが、私には理解不能の話でした。高校野球の有力校を並べられても、それはどこかの方言ですかとしか言えない。

プロ野球に、セリーグとパリーグがあるのは知っているけど、ソフトバンクがどこにあるか知らないし、楽天がどこにあるかも知らないのですよ。

広島や中日、阪神は地名が入っているから、わかりやすい。地名が入っているって、いいですよね。プロスポーツの基本じゃないですか。

私がそういうと、サノさんが「いやいや、Mさん、ほとんどの球団名には地名が入っているんですよ」と言った。

知らんがな。

 

こういうどうでもいい会話は疲れるので、さっさと帰ろうと思った。

立ち上がったとき、サノさんの後ろからヌッと女性が現れた。

その女性がフェイスシールドの中で言った。「いつも彼がお世話になっています。わたし、トマトの栽培が趣味なんです。もしよかったら、お持ち帰りいただけませんか」

色とりどり、大きさも様々なトマトが大きめのエコバッグに詰められていた。

それは、ありがたくいただきますが、私が驚いたのが、その見た目のルックスの容姿だった。

モデルのSIHOさんをまるでフィギュアにしたような非現実的な健康美人。

奥様ですか。奥様ですよねえ。

「いや、藉は入れていないんですよ。同居もしていないし」とサノさんが、頭をかきながら照れた。

「私は山梨に住んでいて、トマトの栽培をしているんです」とSIHO人形さん。

美人だなあ。羨ましいなあ。山梨の畑を掘り返したら、こんな美人が採れるのだろうか。1度スコップ握って山梨に行ってみようかな。抱きしめたいなあ(変態だね)。

 

SIHO人形さんに玄関で見送られた。

サノさんは、私が自転車を停めた場所までついてきた。

フェイスシールドで、でかい顔を覆ったサノさんが、1.5メートル離れた位置で言った。

「彼女、何歳だと思いますか」

(雨合羽を着ながら)クイズですか。まあ、普通に見たら、20代後半から30代前半ですよね。でも、ここは意表をついて45歳というヤケクソの見方もできますね。

私がそう言ったら、サノさんが大きな仕草で、両手を叩いた。

「さすがMさん、大正解です。今年、45になるんですよ、彼女」

 

ヤケクソで、ビックリ!

 

そのとき、ツピーツピーと控え目に鳴きながら自転車の周りをテケテケと回っている謎の小鳥を見た。

つるとんたん。

本当に君は、つるとんたんか。ついてきたんか。

 

 

SIHO人形さんとつるとんたんは、私にとって、いま最大の謎だ。