リスタートのブログ

住宅関連の文章を載せていましたが、メーカーとの付き合いがなくなったのでオヤジのひとり言に内容を変えました。

やらかしてないですよ

2020-07-08 05:40:01 | オヤジの日記

日曜日、友人の極道コピーライター・ススキダとパソコンで会話した。

モニターで見ると一層怖い顔だな。年に1から6回、職務質問されるのもわかる気がする。

 

「麗子(ススキダの奥さん)の友だちから話があってな。誰か小猫を貰ってくれないかって言うんだ。白黒のブチで、ハチワレだ。生後3ヶ月。セキトリに似ているんだ。画像を送ろうか」

いや、いい。見たら飼いたくなる。

「飼いたくないってことか」

飼いたくないというわけではない。ただ、いま俺の頭の中では「猫の思い出箱」にセキトリが充満しているんだ。

ノラ猫時代が7年、家猫になってから3年2ヶ月。セキトリは、俺にたくさんの幸せをくれた。

あんなでかい体なのに、とても穏やかで、俺はセキトリが他の猫と喧嘩したところを見たことがない。怪我をしたこともない。悠々と道や塀の上を歩いている姿は、神々しささえ感じたな。

家に来てからも穏やかで優しくて賢かった。シャーは言わない。猫パンチもない。爪も出さない。

猫に不慣れな息子も娘もすぐに、セキトリのことを好きになった。

娘のお友だちも毎週のようにやってきて、セキトリと遊んだ。抱き上げて、「セキトリ、重いなあ。普通の猫の倍だね。モフモフだね」と言って喜んだ。ただ、ひとつだけ欠点があるとしたら、顔がブッサイクだったことだ。

「確かに、セキトリは穏やかで人懐っこかったな。おまえの武蔵野のアパートの庭の段ボール箱に住み着いていたとき、俺が顔を出してもセキトリは、怖がりもせず俺に抱かれていたもんな。そして初めて国立のお前の仕事部屋に行ったときも、3分もたたないうちに俺の膝に乗ってきたからな」

セキトリには、お前が鉄砲玉だってことを教えていなかったからな。

 

「じゃあ、今回はパスか」

悪いな、気を使わせてしまって。

もし、次に猫を飼うとしたら、俺は自分の目で、生まれ変わったセキトリを見つけたいんだ。それはきっと、俺にしかできないことだと思う。

ところで、チャールズ(ススキダが引き受けた保護猫)は、元気か。

「ああ、ありがたいことに元気だ。おまえに色々と教えてもらったからな。もはや、完全な家猫だよ。セキトリほどではないが、物怖じしないいい子だ」

定期検査を忘れるなよ。

「もちろんだ。ところで、今週の9日で、2ヶ月だな。49日を忘れちまったから、その穴埋めに、ブリザーブドフラワーを送った。ついでにクリアアサヒを1ケース送った。セキトリの祭壇の前で語り合ってくれ」

おまえ、完全に俺を泣かしたな。

「セキトリを亡くしたあとのおまえは、尋常じゃない落ち込みようだった。いつもはバカばかり言っていたからな。戸惑ったぜ。今はマシになった。回復しているってことだ。新しいセキトリをゆっくり見つけてくれ。俺も麗子も、ずっと待ってる」

 

また、泣かしたあ。

 

 

得意先の中村獅童氏似の会社が、6月半ばから動き始めた。イベント会社だ。

このご時世、イベントはかなりハードルが高い。だから、最大限の注意を払って、少しも漏らさぬように対策を練っている。

獅童氏似の会社は池袋にあるのだが、いま事務所はほぼ機能していない。なぜなら、全員がテレワークだからだ。

「誰もが危険な池袋になんか行きたいと思いませんよ。夜の街には行きませんけど、ほぼ隣接していますからね。近づくのは、『バカの極み』でしょう」

ということで、獅童氏似との打ち合わせは、パソコン内で、ということになった。往復2時間半の電車移動がなくなった。楽ですわ。今どき、中央線と山手線には乗りたくないからなあ(乗っている人、申し訳ない。通勤電車、過酷ですよね)。

そういえば、4月初めに、獅童氏似に2人目のお子さんが生まれた。つまり、いま3ヶ月になる。ちょうど首が座ったころだという。画像を見せてもらったが、可愛いね、天使だね。

「あー、もう、こんなときに申し訳ないけど、幸せすぎて幸せすぎますよ。毎日が楽しいです」

獅童氏似は、生まれた直後から、週に一回数回頼みもしないのに、LINEでお子さんの画像を送ってくるのだ。まあ、人の幸せにお付き合いしたとき、こちらも幸せになりますからね。

 

打ち合わせが終わったあと、獅童氏似が突然言った。

「そういえば、Mさん、Mさんちにはでかい猫がいたんですよね。いま画面の近くにいますか。いたら見せてくださいよ」

いや、いや・・・・・こここここにはいないないんですよね(半分涙声)。

勘の鋭い獅童氏似は、即座に反応した。

「ああ、俺、やらかしちゃいました? やらかしましたか?」

いや、別に、やらかしてはいないけど。

「最近ですか」

5月9日ですね。

「ああ、やっぱり、やらかした。Mさんが最低気分のときに、俺、毎週得意げに娘の写真を送っていましたよね。ごめんなさい、本当にごめんなさい。Mさんの気も知らずに」

だって、こちらが教えなかったんだから、仕方がないよね。

「いや、ダメですよ。これはダメなやつです。本当にやらかしちまった」

頭をかきむしっていた。

 

いえいえ、本当に、やらかしていませんから。

赤ちゃんの写真を見て、俺はとても癒されたんですよ。命っていいなって思ってました。

「ああ、でもMさんの猫ちゃんも同じ命なんですよね。やっぱり、おれ、やらかしちまったんじゃないですか。ごめんなさい。俺、頭を冷やします。またあとで、連絡します」

 

その日、獅童氏似からの連絡は来なかった。

来たのは、すぐあとに、LINEで自分の頭を叩くゴリラのスタンプだった。

 

獅童氏似さん、何度も言うけど、やらかしてないですよ。

 

 

話は変わるが、大きな災害が起きたとき、いつも思うのは、自衛隊、消防、警察の方々のありがたさ。

頭が下がります。

 

いま人命の重さを一番知っているのは、この方々かもしれない。