最近、我が家の昼メシは、ほとんど焼きそばである。
子どもたちの在宅ワークが始まるまでは、夫婦2人の昼メシだから、適当な残りものを食っていた。
しかし、4人分となると適当であったとしても、ボリューム感が欲しい。そこで、焼きそばを出したら、「美味美味美味」と絶賛された。
それから、ほぼ毎日昼は焼きそばだ。
麺は太麺オンリー。私はむかしからラーメンも太麺派だ。焼きそばには、肉は入れない。だって、肉を入れたら、肉焼きそばになってしまうから。主役が焼きそばではなくなってしまう。
具材は、モヤシとキャベツとニラ。この3つは、決して主役になろうとしない。脇役に徹している。偉い子たちだ。
毎日、ソース焼きそばでは飽きるので、ソースは変える。焼きそばソース以外では、オイスターを使ったり、お好みソース、中濃ソースプラスオイスターソース、鶏ガラと塩、トマトソース、煮干しを煮込んだ出汁、キムチ納豆などで焼き焼きすると味が変わって大変美味。それぞれ、好みでカツオ粉をかけたり、マヨネーズ、青のり、卵黄をかけると、さらに美味。
食材にお金がかかっていないから、コストパフォーマンスはコストコ。
焼きそばは、我が家のソウルフードだ。
ソウルフードで思い出したが、何年か前のツィッターで、「ラーメン二郎のラーメンは、やっぱりうまいな。ラーメンは俺のソウルフードだ」というツィートがあった。
それにたいして、「バカヤロー、ラーメンはソウルの食べ物じゃない。立派な日本食だ」というコメントが何件も寄せられたという。
ソウル違い。
たとえ冗談だとしても程度が低い。
以前、テクニカルイラストの達人・アホのイナバ君に、君のソウルフードは何? と聞いたことがあった。
「ああ、サムギョプサルですね。あれなら毎日でも食べられます。いや、毎日は無理かな。1ヶ月に2回は食べてもオーケーですね。オーケー牧場。韓国料理は本当にうまい」
同じソウル違いでも、イナバ君の場合は、ホンワカしている。
ソウルと言えば「ソウルから来た娘」。
2年前に、ソウルから来た娘がいた。その当時29歳だった。
名前を「ユナ」と言った。娘の大親友だ。7歳年上。
ユナちゃんは、子どもの頃から日本が大好きで、韓国ドラマやKPOPには見向きもせず、日本文化に傾倒した。
ユナちゃんは、アイドルグループの嵐が特に大好きで、嵐の歌の歌詞を理解したいために、日本語を独学で習得し始めた。
11歳のときだ。
インターネットで日本のサイトを開き、読み書きを勉強した。会話に関してはYouTubeで勉強した。
高校3年で、会話読み書きは通用するレベルになった。
そのとき、ツィッターの世界で我が娘と出会った。娘は、KPOPにハマりかけていた頃だった。KPOPの情報を少しでも取り入れたいと思って、日本語を自在に操るユナちゃんにアピールした。
「私、KPOP嫌いなんだよね」と最初は拒否されたが、娘が12歳のときから、メール付き合いが始まった。基本、会話は日本語だが、娘が勉強中に難しいハングルの表現に出くわしたときは、ユナちゃんが丁寧に教えてくれた。
優秀な人が教えると習得も早い。娘は大学1年ごろになると、ハングルが、そこそこ操れるようになった。
そこで、娘はソウル留学計画を立てた。
大学3年の後期だ。
留学する前に、娘はユナちゃんに頼まれた。
「うちの両親は、筋金入りの反日なの。日本のことを話すとすぐに機嫌が悪くなるの。でも、夏帆みたいないい子が日本にたくさんいるってわかったら、少しは心を開くかもしれない。お願い協力して」
ユナちゃんの夢は、日本で働くことだった。それを知っていた娘は「わかったぞなもし」と快く快諾して諾諾した。
ユナちゃんの家に行っても、最初は、ご両親からまったく無視された。しかし、人間には根気と婚期が必要だ。婚期を逃しても人生の流れが少し変わるだけだが、根気がなくなると「あー、俺の人生なんか、どうでもいい!」と自暴自棄になる。それは、よくない。
娘は婚期根気よくユナちゃんのご両親にハングル語で話しかけた。
すると、ご両親の反日は直らなかったが、留学が終わるころには「夏帆はいい子だよ。この子は信用できる」と言ってくれるまでになった。
そのあと、ユナちゃんはジワジワとご両親を懐柔し、2年前に日本で働くことを許してもらった。
そのユナちゃんが、日曜日の夕方、我が家にやってきた。
ただ、いつもと景色が違った。隣に未確認生物がいたのだ。その生物は、ネクタイを締めてお土産らしきものを持っていたのだ。
生物学的には、人間に近い。もしかしたら、男かもしれない。
ユナちゃんが言った。
「ねえ、お父さん、この人が前から言っていた彼氏だよ。連れてきたよー」
ユナちゃん、嬉しそうだね。
「お父さんお母さんご家族の皆様、はじめまして」未確認生物が日本語を喋った。
なんか、固そうなやつだな。つまんねえな。でも、顔はいい。「男梅」のような顔をしていたのだ。これが「カールおじさん」だったら、袋ごと潰してやったのに。
年齢は、ユナちゃんより2歳下。30歳だという。老けてますねえ。
馴れ初めは、とっくに聞いていたので、その話はパス。
ちょうど晩メシの時間だった。普段なら、私の手料理を振る舞うのだが、振るのも舞うのも面倒くさかったので、出来合いの弁当を食うことにした。オープンな食事は危険だと判断。
ガスト弁当だ。娘とユナちゃんと男梅に買ってきてもらうことにした。
私だけが、マヨコーンピザ。他の5人はハンバーグ系の弁当だった。
食っている間の話題は、ユナちゃんと男梅が勤めている病院のことだった。シビアな話を聞かされたので、生々しくて割愛。
最後に、みんなのソウルフードは何? という話が出た。
私は焼きそば。娘はラーメン。息子は唐揚げ。ヨメは、ケンタッキーフライドチキン、ユナちゃんはおでん。
そして、男梅は「辛ラーメン」と答えた
それって、ボケたの? 狙っているの?