リスタートのブログ

住宅関連の文章を載せていましたが、メーカーとの付き合いがなくなったのでオヤジのひとり言に内容を変えました。

常連客

2020-07-12 05:40:10 | オヤジの日記

国立駅前の「はなまるうどん」が閉店した。

 

国立駅前の店は、頻繁に利用したというわけではないが、娘とたまに行った。各地のはなまるうどんは、よく利用する。

なんと言っても安い。かけうどんとかき揚げで500円くらい、揚げ玉は無料。もう、大満足です。

なぜ国立駅前店が閉まるのかはわからない。売り上げが減ったというのが、常識的な考えでしょう。

コロナの影響もあるのだろうか。

いずれにしても、慣れ親しんだお店がなくなるのは、さびしい。

 

今週、たまに行く国立の花屋さんで花を買った。ミニひまわりとナンチャラいう花だ。

女店員さんに言われた。「十日くらい前も、同じ花を買われましたよね」

ああ、覚えられていたのか。

なんか、居心地が悪いな。

私は、日陰者なので極力なじみの店を作らない人生を歩んできた。

昔、虎ノ門の法律事務所に勤めていたとき、近所に安くてうまい定食屋さんがあった。500円で、うまい刺身定食やしょうが焼き、トンカツ、天丼が食えたのだ(消費税が適用される前だから正味500円だった)。

しかし、毎日は行かない。2週間に1度程度だ。そのほかは、自分で作った弁当を食う。まわりには、店員さんに「常連客風」を吹かせるサラリーマンが何人かいて、私はそれが嫌だった。所詮は常連客何百人のうちの1人なのに、「俺だけ特別感」をアピールする姿が鼻についたのだ。

その店は、ご飯も味噌汁もおかわり自由だった。それで500円って、今ではありえないでしょう。

その店で、その「常連客風」を吹かせるサラリーマンは、「俺、ご飯を3杯はお代わりするよ。味噌汁も3杯だ」と店員に得意げに言って、昼休みを店で過ごすのである。

「俺、1時まで食い続けるからね」

本当に、どうでもいいことだが、私には、そんなことはできない。私は、その店にせいぜい10分くらいしかいられなかった。

店の外で客が並んで待っているのに、店に1時間なんて、空気を読めなさすぎでしょう。しかも、内容のない会話を店員に押し付けるのだ。俺は特別、だって思っているんでしょうね。俺は常連客だから許されるんだ、という感じか。あるいは、井森美幸さんに似た店員さんに惚れているとか。

 

そういう姿を見たからというわけではないが、人嫌いの私は、常連客には絶対になるまいと思った。

武蔵野に住んでいたころ、お気に入りのラーメン屋があった。つけ麺がうまかった。毎日行ってもいいほどの美味じゃった。全体にさびれた感があって、それも私好みだった。

私は、ラーメン道を押し付けるこだわりの店が苦手だ。鉢巻きしめて「らっしゃい!」は、鳥肌が立ちます。

この店に行くのは、3から6ヶ月に1回にガガガ我慢した。

ひっそりと店に入り、カウンターの隅っこが空いていたら隅っこに座って、生ビールとつけ麺を注文する。

俺のことなんか、覚えてないよな、と確信しているから、居心地がいい。厨房の大将も絶対に話しかけてこない。安心する。

金曜日、武蔵野から国立に越してから3年4ヶ月ぶりに武蔵境に行った。昼メシどきだったから食い物屋を探した。あのラーメン屋さん、まだやっているかな、と足を伸ばしたら、店はやっていた。

前は、行列ができていたのに、行列はなかった。少し寂しさを感じた。

 

店に入った。

するといきなり、大将に言われたのだ。

「あらあ、お久しぶり、つけ麺ですか」

顔を覚えられていたのである。1年に3回程度しか行っていなかったのに。

プロって、すごいんだな。俺なんか、人の顔なんかすぐに忘れるのに。顔どころではなく、名前も年も猫アレルギーだとか星座なんかも忘れてしまうからね。

今日パンツ履いてきたかも忘れてますよ。

「武蔵境から引っ越したんですか」と大将が聞いてきた。客は、他に一人だけ。さびしいね。昔はギュウギュウだったのに。ソーシャルディスタンスを守るため、席が一個おきにバッテンをつけられていた。席の間には、アクリルボードがあった。コロナ対策は、怠っていないようだ。安心だね。

 

武蔵境から国立に越したんですよ。

46から51歳に見える大将は、「ああ、僕、国立の桜満開の頃は、毎年行ってますよ。今年もコロナはありましたけど、家族で行きました。最後に回転寿司で寿司を食べるのがルーティンなんですよ」とおでこをポリポリかきながら言った。

「あのお、いつもどおり、生ビールもですか。つけ麺は、少し遅らせたほうがいいんですよね」

そんなことまで、覚えていてくれたのか。

「先生、あまりもので申し訳ないですけど、牛タンがあるんですよ。お代はいりませんから、どうですか」

俺、先生じゃないけど、いただきましょうか。

うんめえな。生ビールに合うな。

 

でもね、これって、俺の嫌いな常連客の会話だよね。

3年4ヶ月行ってなくて、常連客ってありえないけど。

牛タンを食い終わったころ、大将が言った。「そろそろ、つけ麺茹でます」

ああ、お願いします。意外と居心地がいいものだな。

つけ麺が出てきた。

相変わらず、うまいね。

食事のレポートは、しません。

スープの味がナンチャラとか太麺がナンチャラとかチャーシューがナンチャラなどというのは、他の人がしてください。

 

星みっつです!

 

食い終わったあとで、大将が言った。

「いま正直苦しい時期ですけど、僕は店を閉めないって決めているんですよ。僕だけじゃなくて、みんなが苦しいんだから、ここは、我慢のしどころです。先生、もしまた気が向いたら来て下さい」

そうだね、リンゴやナシは剥かないけど、気が向いたら来るよ。

大将が昭和のズッコケをした。

 

大将、生ビールとチャーシュー、ザーサイ小皿、小ライスを追加。

 

 

なんか、俺、常連客風吹かせてないか。