昨日(19日)は丸一日、『NPO協働推進フォーラムinしずおか』のMCと取材で、あざれあ(静岡市葵区)に缶詰でした。MCといっても進行台本はなく、時間割と講師・発表者のプロフィールを頭に入れただけの、ぶっつけ司会で、コーディネーターを務めた田中尚輝さんや、事務局の杉本昭夫さん(NPO法人活き生きネットワーク事務局長)に頼りっぱなしの2時間半でした。
田中さんはNPOの起業支援やネットワークづくりの牽引役として全国を飛び回るこの分野の第一人者。日本最大のシニアネットワーク「地域創造ネットワークジャパン」を立ち上げ、精力的に活動しています。打ち上げの食事会では、私が勧めた地酒『開運』を何杯も空け、リンゴのように赤々ツヤツヤの顔で「静岡のNPOはレベルが高いねえ~、今日のディスカッションはレベルが高すぎたかなあ」と反省の弁。確かにフォーラムに登場したのは静岡県のNPOではトップランナーの方々ですが、まだそれが一部の突出した存在に過ぎないのも確か。NPOが行政や企業と対等に渉りあって、社会をグイグイ動かす存在となるには、まだ少し時間がかかりそうだな、と思いました。
まもなく発売になる新刊本『悪党的思考のすすめ~逆説のニューリーダー論』(中央アート出版社/1300円+税)で、田中さんは、ボランティアや利他主義の精神でスタートした人も、組織を運営し、肩書きが増え、権力者に近いポジションに置かれると変貌してしまう例を紹介し、資本主義の社会は性悪説をベースに動いていることを自覚し、“NPOリーダーは悪党になれ”と説いています。
悪党というのは鎌倉~南北朝時代、権力に対抗した自主自律の武士集団で、当時の『悪』は、精悍さや力強さを表す意味にも使われていました。
幕府から見ると、社会秩序から外れる集団は、武士、僧侶、芸人、海民・海賊などもみ~んなひっくるめて“悪党”。でも見方によっては、彼らは専門テクニックと独自の情報網を持った、当時の最先端の新興社会集団。自らの経営基盤を重視し、既得権益をしっかり守り、既存の権力と堂々と渡り合うパワーも蓄えていました。その中から、楠木正成のように、権力の一部と連携し、幕府をひっくり返そうとするなど大胆な発想と行動力を持つ悪党も出現したのです。
田中さんは「悪党の持つ精力的かつ機敏な動きを、NPOリーダーは学び、利他主義に機軸を置きながらも、人々の利己主義を理解し、それを自由に活用する能力を持て」と説きます。
また、ピーター・ドラッカー説の、「日本はNPOシステムを持った最も古い国であり、江戸時代、100万人都市の江戸を、南北奉行所併せてたった500人で治安維持が出来たのは、町火消し(消防団)や寺子屋(私立学校)といったNPO的な自治・教育組織が整っていたから」と、利他の精神が社会で機能する例を紹介しています。
NPOを専門に学んだ経験がない私には、NPOを論理的に理解・解釈することは出来ませんが、歴史を通して見ると、とても身近で楽しく入っていけるようです。昔の日本人も、同じように利己・利他の狭間で悩み、闘い、生きてきた、その延長線上に今の我々の暮らしがあるということを、改めて実感します。
フォーラムの内容は盛りだくさんで充実していましたが、私にとっては、打ち上げの飲み会で田中さんのこの本をゲットできたことが一番の収穫でした。