杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

波瀬さんへの誓い

2009-07-19 09:44:19 | 吟醸王国しずおか

 『開運』の杜氏・波瀬正吉さんの訃報に接した『吟醸王国しずおか』カメラマンの成岡正之さんからメールが届きました。

 波瀬さんにお会いするのは、昨年夏の能登ロケが初めてで、酒が一滴も飲めず、もちろん『開運』も呑んだことのない成岡さんですが、プロの職人同士が対峙すると、時間や経験を超越し、通じ合うものがあDsc_0025るんだ…と改めて思いました。

 成岡さんがとらえた波瀬さんの貴重なショットは、『吟醸王国しずおか』本編で活かしていきたいと思っていますので、天国の波瀬さん、どうか無事完成できますよう、見守ってください。吟醸王国しずおか映像製作委員会のみなさまも、ぜひさらなる後押しをお願いいたします。

 

 

 

 『人間の一生とは、いなくなって、本当のその人の存在や意味や価値が良くわかるんですね。
 生涯を酒造りに捧げた、あの能登のご自宅で聞いた言葉と、あの目の輝きは私は一生忘れません。

 

 年を重ね、経験を重ね、苦労を重ねた波瀬さんの日々を想像し、しかも、いまだに希望Dsc_0029を抱く二十代の青年のような瞳が輝いていたことを、ビューファーを通し、自分の目にアスリートの様に飛び込んで来た事を忘れません。
  

 全てを受け止め、言葉をしゃべれない麹や酵母を理解し、育てる。それらを見続けてきた瞳だと、あの時、一瞬にして気づかされました。
 「俺も仕事するとき、こんな目を瞳をちゃんとしているんだろうか?」と、波瀬さんの目に無意識にズームしていました。
 波瀬さんの蔵での仕事は見ることができなくなりましたが、勝手だけど、今までお邪魔した蔵すべてに、波瀬さんの仕事の姿が私には重なって見えています。

 

 静岡の蔵人も含め、静岡の酒を愛する人々は、波瀬さんの遺志を継ぎ、日々努力されることがなによりの供養だと思います。私は(カメラマンとして)、あの目の輝きを伝えて行きたいと思います。』(「吟醸王国しずおか」カメラマン 成岡正之)