『開運』の杜氏・波瀬正吉さんの訃報に接した『吟醸王国しずおか』カメラマンの成岡正之さんからメールが届きました。
波瀬さんにお会いするのは、昨年夏の能登ロケが初めてで、酒が一滴も飲めず、もちろん『開運』も呑んだことのない成岡さんですが、プロの職人同士が対峙すると、時間や経験を超越し、通じ合うものがあるんだ…と改めて思いました。
成岡さんがとらえた波瀬さんの貴重なショットは、『吟醸王国しずおか』本編で活かしていきたいと思っていますので、天国の波瀬さん、どうか無事完成できますよう、見守ってください。吟醸王国しずおか映像製作委員会のみなさまも、ぜひさらなる後押しをお願いいたします。
『人間の一生とは、いなくなって、本当のその人の存在や意味や価値が良くわかるんですね。
生涯を酒造りに捧げた、あの能登のご自宅で聞いた言葉と、あの目の輝きは私は一生忘れません。
年を重ね、経験を重ね、苦労を重ねた波瀬さんの日々を想像し、しかも、いまだに希望を抱く二十代の青年のような瞳が輝いていたことを、ビューファーを通し、自分の目にアスリートの様に飛び込んで来た事を忘れません。
全てを受け止め、言葉をしゃべれない麹や酵母を理解し、育てる。それらを見続けてきた瞳だと、あの時、一瞬にして気づかされました。
「俺も仕事するとき、こんな目を瞳をちゃんとしているんだろうか?」と、波瀬さんの目に無意識にズームしていました。
波瀬さんの蔵での仕事は見ることができなくなりましたが、勝手だけど、今までお邪魔した蔵すべてに、波瀬さんの仕事の姿が私には重なって見えています。
静岡の蔵人も含め、静岡の酒を愛する人々は、波瀬さんの遺志を継ぎ、日々努力されることがなによりの供養だと思います。私は(カメラマンとして)、あの目の輝きを伝えて行きたいと思います。』(「吟醸王国しずおか」カメラマン 成岡正之)