杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

酔読ノススメ追補

2013-04-27 00:11:06 | 本と雑誌

 eしずおかのコラムサイト『日刊いーしず』で隔週連載中の地酒コラム「杯は眠らない」第7回Photo
を26日、更新しました。松下明弘さんの【ロジカルな田んぼ】の発行を記念し、私の書棚の“熟成本”をいくつか紹介しています。

 

 

 このコラムで紹介した、フリーアナウンサー國本良博さんに日本酒の本を朗読してもらった『酒と匠の文化祭』でのエピソード、事後報告になっちゃいましたが國本さんに「載せました」と報告したところ、思いがけず、國本さんも今月、自伝本を出版されたことを知って、あわてて書店に走りました。

 

 

 

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 タイトルは【くんちゃんのはなしのはなし】(マイルスタッフ刊・1785円)。國本さんが1973年から2009年まで勤め上げたSBS静岡放送時代のアナウンサーキャリアをまとめたもので、なんと、伝説のバンド・ケッタウェイズの未公開ライブをおさめたDVD付きです。

 

 

 「杯は眠らない」でも書いたように、國本さんとは1995年の静岡市南部図書館地酒講座からのお付き合いで、それ以前の國本さんは、まさに、中学~高校生時代にハマっていたSBSラジオのパーソナリティくんちゃん、でした。ページを読み進むうちに、『1400デンリクアワー』『ぶっちゃけスタジオCut in ! 』『夜をぶっとばせ』等など、懐かしいタイトルが次から次に登場し、一気に10代の頃にタイムスリップしちゃいました。

 

 まずビックリしたのは、國本さんが入社2年目にジョン・ウェインに突撃インタビューして、ちゃっかりサインをもらったというお宝エピソード。若者の、コワいもの知らずの突破力って貴重だなあ~としみじみ思います。私も20代の頃は・・・まぁいろいろやらかしたもんなあ(苦笑)。

 AMラジオの深夜放送を聴かなくなって久しくなり、最近はどんなプログラムがあるのか、とんと分からないのですが、少なくとも國本さんがバリバリ現役の頃のSBSラジオって本当に面白かったと記憶しています。本を読んでみて、なるほど、番組の裏方さんたちも、本当に面白がってずいぶん大胆なことをやっていたんだなあとナットクできました。

 

 

 

 

 今、國本さんは静岡第一テレビの夕方の情報番組にレギュラー出演されていますが、第一テレビとは浅からぬ縁があったことも本書で知りました。もちろん、局をまたぎ、競合同士の壁を越えてまで、この人を使いたい、と思わせる國本さんの実力があってのことですが、番組制作者の中に、情熱や志のある人がいなければ、またそういう人との出会いがなければ実現できないでしょう。

 

 出版の世界でも同じです。松下さんが日経新聞から本を出せたのも、松下さんの実力もさることながら、よき編集者や協力者との出会いがあってのこと。・・・私も、【地酒をもう一杯】を出せたのは、当時の静岡新聞出版局に平野斗紀子さんという編集者がいたからでした。鈴木真弓の著作本として出せなかったことを残念がってくれた酒友もいましたが、それが、私の当時の実力。未だに自分の名前が表に出た著書がないのも、私にそれだけの力がないのと、今、身近に「本を作ろう」と言ってくれる編集者がいないから。よき編集者との縁も、実力のうちなんですね・・・。

 

 

 なんだか自虐的な気分に陥っちゃいそうで、やめときましょう(苦笑)。とにかく、國本さんが局アナの枠を越えた行動力と人脈を持つ、真に実力のあるアナウンサーだということが、今まで知らなかった数多くのエピソードから伝わってきました。

 

 

 そんなこんなで、読み進めていったら、静岡の地酒との出会いもちゃんと書いてくれていました。私の名前や、静岡市南部図書館地酒講座のこともしっかり。・・なんだかジーンとしちゃいました。大切な大切な、36年9ヶ月のアナウンサー人生の中のエピソードに加えてもらえたなんて、スゴイことです。

 以前、ご本人から、当時の資料が欲しいといわれて提供したことがあったのですが、こういう形で世に発信し、記録してくれるとは・・・。私の活動を、自分の本で紹介してくれたのは、松崎晴雄さんに次いで2人目です。やっぱり、しずおか地酒研究会の草創期から支えてくれたこのお2人なんだなあと、心底手を合わせたくなりました。

 

 

 70年代から2010年代にかけての、静岡のテレビラジオ放送の歴史を総覧できる貴重な史料ともいえる【くんちゃんのはなしのはなし】、谷島屋、吉見書店、江崎書店はじめ、ネットでも入手できます。國本さんファンはもちろんのこと、ケッタウェイズやデンリクアワーを懐かしいと思える世代は必読ですよ♪

 

 

 

 『日刊いーしず』地酒コラム「杯は眠らない」第7回で紹介したのは古い本ばかりですが、今ではネットでカンタンに入手できますので、連休中の寝酒・昼酒のお伴にしていただければ幸いです。