今年も染色画家松井妙子先生の展覧会が、5月13日から19日まで、松坂屋静岡店美術画廊で開催されます。この時期になると当ブログに先生のお名前で検索訪問される方が増えるので、ああ、また“先生の季節がやってきた”と実感します。毎年コンスタントに37年も個展を続け、松坂屋でも20年連続の開催。並大抵の作家では出来ない息の長さだとつくづく感服・・・!
松井先生の染色画は、桃山時代に生まれた古典的染技法・一珍染め。一珍とは防染糊のことで、主原料は小麦粉と石灰。ちなみにもち米を主体にしたのが友禅染めだそうです。
小麦粉と石灰を糊状にした一珍糊を先金を付けた筒紙に詰め、そのまま生地に筒描きし、乾いたら生地を斜めに引っ張って糊を浮かせてはがす。表面にひび割れのような文様が浮かび上がり、そこに染料が入り込んで独特の味わいを醸し出します。着物なんかでは友禅染のほうがポピュラーですが、愛らしいふくろうやかわせみをキャラクターにした先生の作風には、一珍糊を使った更紗風の染め方が合うようです。
今年のポストカードに選ばれた「輝いて」、光背をまとった菩薩さまのようにもみえます。
過去3年のポストカードに選ばれたのはこちら。絵の具を塗り重ねるだけの絵画よりもはるかに手間のかかる手法だけに、制作中の松井先生は求道者のようなお姿なんじゃないか、なんて想像します。ふくろうは「幸運の使者」であり、「知恵の神様」であり、「森の哲学者」だと言われますが、毎年、どんな構図と色彩で描くのか、ポストカードに採用する代表作をどんな思いで選ばれるのか、会場に並ぶ作品群を順に眺めると、先生の心の軌跡が覗えるよう。
先生は全日、会場にいらっしゃいますので、ぜひお声かけなさってみてくださいね!