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10月3日 編集手帳
人が亡くなったという知らせを「訃(ふ)」という。
訃報の訃である。
前衛俳句の旗手と呼ばれた高柳重信さんに、
その文字を含んだ一句がある。
〈きみ嫁(ゆ)けり遠き一つの訃に似たり〉
かつて思慕した女性が結婚した。
その知らせを訃報のように聞く作者の胸には、
青春の傷痕がうずいたことだろう。
「きみ嫁けり」を「きみ娶(めと)れ り」に置き換えるならば、
世の女性ファンの偽らざる心境かも知れない。
芸能界の人気者同士、
福山雅治さん(46)と吹石一恵さん(33)の結婚で生じた世間の波立ちはなかなか終わらないようである。
ヨミウリ・オンラインの掲示板「発言小町」で、
“ましゃロス”なる言葉を知った。
「ましゃ」(福山さんの愛称)をなくした喪失感のことだという。
いやな事件のつづく昨今、
何であれ茶の間をなごませるおめでたい話題はそれだけでありがたい。
男であるのに変わりはなし、
いつかその人の百万分の一ぐらいはモテてみたいものだと、
ため息をついたご同輩も世に多かろう。
♪ 目方で男が売れるなら…(星野哲郎作詞、山本直 純作曲『男はつらいよ』)。
寅さんはこういう時のためにいる。