10月3日 軽罪フロントライン
ファインバブル。
直径わずか10分の1ミリにも満たない極めて小さな泡。
水槽で使う通常の泡と比べ大きさは30分の1以下。
カンパチやブリの養殖を営む弘瀬裕一さん。
2年前からファインバブルを使い始めた。
(養殖業者 弘瀬裕一さん)
「正直言うとびっくりした。
こんなに効果があるんだなって。」
養殖では魚に寄生虫が付くのを防ぐために定期的に生簀に薬をまく。
しかし狭い生簀に数万匹の魚を集めるため水中の酸素が足りなくなり多くの魚が酸欠で死んでいた。
そこで弘瀬さんは生簀にファインバブルを活用。
すると魚がほとんど死ななくなった。
通常の泡は浮力を受けて水面に上がり消えてしまう。
一方ファインバブルは極めて小さいため浮力がほとんど無く水中に長くとどまることができる。
泡の中の酸素が時間をかけて水に溶け
水中の酸素量が大幅に増える。
その結果 生簀の魚が酸欠で死ぬことが劇的に少なくなった。
(養殖業者 弘瀬裕一さん)
「おかげで作業がすごく安心して行えるようになった。
本当に感謝している。」
このファインバブルの装置を開発したのは高知工業高等専門学校の秦隆志准教授。
側面の穴から空気を注入し中に水を流す。
内部にはらせん状の水が入っている。
中を通る水を高速で回転させることで注入された空気が細かく切り刻まれ小さな泡ができる。
(高知工業高等専門学校 秦隆志准教授)
「ファインバブルは水と空気でできる。
それを使うだけで効果が生まれてくる。
ある種の革命的な材料として期待することができる。」
ファインバブルは農業の分野でも活用が始まっている。
しょうがを栽培するハウス。
しょうがに与える水にファインバブルを入れてみた。
すると生育に大きな変化が現れた。
ファインバブルの水を与えたしょうがは普通の水を与えたしょうがに比べ太く丈夫に育っている。
水の酸素濃度が4倍以上に増えた効果と見られている。
(農家 柳村節男さん)
「始めて良かった。
増収につながってくるしいいものがとれるのではないか。」
いまファインバブルはあらゆる分野でビジネスを変えると期待されている。
業務用のマヨネーズ。
ファインバブルを入れたところ泡の効果で口当たりが滑らかになったという。
極めて小さな泡は汚れを落としやすいため半導体などの洗浄にも使われている。
さらにがん治療など医療分野でも応用できないか研究が進んでいる。
大きな可能性を秘めた日本のファインバブルの技術。
世界市場を見据えた動きが加速している。
今年6月 企業などが参加した戦略会議。
集ったのは大手電機メーカーや食品メーカーなど33社。
目指すのはファインバブルの国際標準作りである。
「国際標準の提案をしました。
現在 提案という形で受け入れられ詳細な審議が続けられているところです。」
いまファインバブルの研究はイギリスや韓国など世界各国で始まっている。
日本が世界をリードする形で泡の大きさや密度など基準作りを行えばビジネスでも先行できるという。
(ファインバブル産業会 藤田俊弘副会長)
「日本から提案することが日本の産業創生
世界における日本の位置づけをグッと前倒しできるし
いち早く産業創生のリーダーシップをとれる。
技術を持っていて提案する国が有利であることは間違いない。」
会議に参加した大手精密機器メーカーの担当者。
このメーカーはファインバブルの大きさや個数を正確に測れる計測器を独自の技術で開発した。
今後 国際標準で泡の基準が決まれば計測器の需要が一気に高まると期待している。
(島津製作所 山田洋一製造部長)
「この市場は潜在的なところも含めかなり大きくなると想定している。
市場の拡大と合わせて勝算はある。」