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人間が“生きた本”に ヒューマンライブラリー

2018-01-12 07:00:00 | 報道/ニュース

12月6日 おはよう日本


私たちの好奇心や知識の欲求に応えてくれる図書館の本。
いま人間そのものが本となって
自身の人生や経験を語る“ヒューマンライブラリー”というイベントが注目されている。
「障害者プロレスの鶴園誠です。」
「ホームレスで路上で雑誌販売を行っている上野誠です。」
「ステージ4のがんを患っている西口洋平と申します。」
ここでは障碍者やLGBD性的マイノリティーなど
ふだんなかなか話が聞けない人たちと自由に会話ができるのである。
(レズビアン)
Q.彼氏と彼女ってあるんですか?
  それともどっちも彼女って意識なんですか?
「そうです そうです。」
Q.どっちが男役みたいなのはないんですか?
「全然ないですね。」
一体どんな魅力に満ちた図書館なのか。

15年ほど前にデンマークで始まった“ヒューマンライブラリー”。
日本語で「人を貸し出す図書館」と言われている。
社会的マイノリティーへの差別や偏見を乗り越える手法として注目され
いまではヨーロッパやアフリカ アジアなど世界70カ国以上に広がっている。
日本でもここ数年
大学や公共図書館などが主催して開催されるようになった。

会場にやって来た人がまず目にするのは本のリストである。
そこには語り手の顔とともにタイトルやあらすじが付けられ
興味のある本を探せるようになっている。
「心に性別なんてありません!」
「うつで悪いか」
この日会場を訪れたのは300人以上。
決められた30分の貸し出し時間はあっという間に予約でいっぱいになった。
読者は
本となる人に対し相手を傷つけないというルールのもと
原則1対1で自由に質問できる。
(レズビアン)
Q.いじめとかってあるんですか?
「いじめまで深刻なのはなかったけど
 ちょっと噂になって
 “レズって噂になってるよ”みたいな感じで友だちから言われた。」
(高次脳機能障害)
「“もう目が見えることは一生ありません”と言われたんですね。
 退院して帰ってくると
 視野が狭まり人によくぶつかる。
 見えてる範囲のバランスからすると体感と一致しない。」
(性同一性障害)
Q.日常のトイレとかそういう話から聞きたい。
「トイレはいますごく苦労してます。
 この格好で女子トイレに入ったとしても理解してくれる人はそんなに多くない。
 我慢するか障害者用トイレとか多目的トイレがあればそっちを使う。」
(読者)
「楽しかった。
 知らない知識が増えたというのもそうだけれど
 自分の世界が広がった。」
「理解が及ばなそうなジャンルでも
 話を聞くことで自分も意見が生まれるし
 よかった。」
この日障害がある子を持つ父親の本を借りた人がいる。
片桐しなのさんである。
ふだん病院にある店舗でパートをしている。
仕事中よく見かける障害児を持つ家族の気持ちに触れてみたかったのである。
(片桐しなのさん)
「どういう形でお子さんといつも生活されているのか
 聞きたいなと思いました。」
玉村公樹さん。
1歳の息子に重度の脳性麻痺がある。
(片桐氏しなのさん)
「私自身も大変だなっていうイメージが強い。
 本とか読んですごいなって感動はするけれど
 いざそうなったら大変だろうなって。」
(玉村公樹さん)
「でもやっぱり僕も同じでしたよ。
 今でこそ隠すことなく話すことができるけれど
 やっぱり出産直後はいろいろな葛藤があった。」
仮死状態で生まれてきた修司くん。
一命はとりとめたが脳に障害が残った。
痰が詰まると呼吸ができなくなるため24時間の医療的なケアが欠かせない。
それでも玉村さんは
苦労もある反面
修司くんが日々成長していくことに喜びを感じている。
(玉村公樹さん) 
「周りの人の印象と
 僕が修司と生活しているうえで感じている感覚と
 すごく違いがあるんじゃないかなというふうに感じた。
 同じような気持ち
 接点みたいなのがあるんだと気づいてもらいたい。」
片桐さんはずっと気になっていた障害がある子どもとの意思疎通について聞いた。
(片桐しなのさん)
「まだお子さん小さいと思うんですけれども
 コミュニケーションとれますか?」
(玉村公樹さん)
「こういう子って
 感情とかどこまで感じてるか起きてるかわからないなんて言われるが
 よくわかってて実は
 例えば呼吸が苦しくなると
 要は緊張すると分泌物が多くなる。
 それが親が抱っこしてあげると落ち着いてくる。
 そのへんの感覚って普通の赤ちゃんと一緒。
 泣いたらあやしてあげると落ち着いて眠ったりするじゃないですか。
 そのへんはこの子も一緒です。」
「修司のちょうど1歳の誕生日で。
 チョコレートです。
 なめさせるとすごい勢いで“んんん”ってやったり
 やっぱりおいしいってあるんじゃないかな。」
(片桐しなのさん)
「ふつうと変わらないってことですよね。
 普通のお子さんとね。」
玉村さん家族の何気ない日常について
片桐さんは30分間じっくり耳を傾けた。
最後に玉村さんは
自分たちのような家族を見かけたとき気軽に声をかけてほしいと伝えた。
(玉村公樹さん)
「障害のある子に病院とかで今後会う機会があると思う。
 意外に普通に声をかけて“赤ちゃんかわいいですね”とかって
 めちゃくちゃご家族喜ぶと思いますよ。
 機会があれば声をかけて。」
(片桐しなのさん)
「障害のあるお子さんの親御さんも
 本当に普通の家族と変わらない。
 納得というか
 すごく自分の中で変わりました。」
(玉村公樹さん)
「本になることは社会と自分との接点を探る行為だったんじゃないかなと思う。
 息子の人生
 家族の物語みたいなものに熱心に耳を傾けてくれる。
 ただそれだけで僕らの人生が肯定されていく感じがしていました。」

ヒューマンライブラリーはいま全国的な学会もできていて
そのホームページでも開催情報について知らせていくという。



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