12月9日 おはよう日本
ゲームアプリ ひなだん。
「ようこそおこしたもれました」
画面下のひな人形の中から
お内裏様や三人官女などを選んで正しい位置に並べていくというゲームである。
完成すると
「お見事であらしゃいますな~」
今年2月に配信を始めたところ
ダウンロード数は6万件近くにのぼった。
「シンプルで面白いですよ。」
「ひな人形が題材だととてもしっくりくる。
最初のハードルが下がる。」
このゲームを開発したのが若宮正子さん(82)。
れっきとした現役プログラマーである。
(プログラマー 若宮正子さん)
「お年寄りの人が楽しめるゲームアプリってないでしょ。
だからお年寄りが楽しめるものを作ろうと思った。」
若宮さんがパソコンを始めたのは60歳のとき。
勤めていた銀行を定年退職。
90歳の母の介護に専念することになったのがきっかけだった。
(プログラマー 若宮正子さん)
「あまり外を出歩くわけにもいかないでしょ。
だけどおしゃべりはしたい。
それでパソコンを買っちゃった。」
貪欲に知識を吸収していった若宮さん。
旅行先での写真や動画を自ら編集して発信を始めた。
すると世界中の人たちとの交流が広がり
ネットを通じて800人以上の友人ができたという。
(若宮正子さん)
「人生が楽しくなりました。
年齢が若い人もたくさんいますから
大国の方もいる。
何か書くと
“へぇ~ そんなふうに感じる人もいるんだ”って
おもしろいです。」
自宅で初心者向けのパソコン教室を開くまでになった若宮さん。
そんなおり1人の友人からある願いが寄せられた。
“お年寄りでも楽しめるゲームが欲しい”
そこで若いプログラマーに相談したところ
(若宮正子さん)
「『シニアの喜びそうなゲームを作って』と言ったら
『僕たちそんなものわかりませんよ』みたいなことを言われちゃったんです。」
“ないなら自分で作ればいい”と開き直った若宮さん。
80歳を超えて
ゲームを作るという新たな挑戦が始まった。
まずはゲームの題材探し。
お年寄りが親しみやすいものは何だろう。
そこで思いついたのが「ひな人形」だった。
(若宮正子さん)
「日本の伝統文化“ひな祭り”を題材にするのがいいかなと思って。」
次に取りかかったのがゲームの操作性。
お年寄りが画面上でのスライド操作や速い動きが苦手なことをよく知っている若宮さん。
操作は画面をタッチするだけで済むようにした。
さらに普通なら設ける時間制限をなくした。
こうしてお年寄りのためのゲーム「ひなだん」が完成した。
(若宮正子さん)
「ゲームは“速さ”を競うものでしょ。
ひなだんアプリにはそれがないんです。
できるかできないかもない。
全員出来るんです。
“今までにないものを作ったっていい”。」
ゲームを発表すると
日本はもちろん
イギリスやフランスなど40カ国以上のメディアで報道された。
そしてあのアメリカのIT企業からも・・・。
(若宮正子さん)
「アップルから“こんにちは”とメールが届いた。
それまでアップルからは英語のメールしか届かなかったのに日本語で届いたから
何をしたかというと
丹念にウイルスチェックをした。
“若宮さん一緒にアメリカに行きましょう”。」
アップル本社で開かれるアプリ開発者の会議に招かれた若宮さん。
ティム・クックCEOと会い
今までの苦労や工夫を語った。
(若宮正子さん)
「最後に“あなたは私に勇気を与えてくれた”
ハグしてくださって。」
世界に羽ばたいた若宮さん。
ひなだんをより多くの人に楽しんでもらおうと英語版を制作している。
この日はゲームで使用する音声の収録。
シンガポールの放送局も取材に訪れた。
声は 俳優の服部真湖さん。
若宮さんも積極的に意見を出す。
「後半の方が感情がこもっていいみたいな気がします。」
「よかったです。」
82歳になっても新しい事を。
若宮さんの好奇心はとどまることを知らない。
(プログラマー 若宮正子さん)
「80っていうのは何か始めるのに遅すぎる年齢ではない。
シニアに役に立つもの
日本の伝統文化を後世に伝えていけるものを
いろいろな面で開発していきたい。」