1月7日 編集手帳
正月の縁起物に、
「喜ぶ」に通じる昆布がある。
おせち料理の昆布巻きに舌鼓を打った人は多いだろう。
北海道・襟裳岬産の日高昆布は人気の銘柄である。
かの地の昆布漁は苦難の歴史を持つ。
明治以降、
岬一帯は木々の乱伐で地表がむき出しになり、
「えりも砂漠」と呼ばれるようになった。
土砂が海に流出し、
それまで採れていた上質の昆布が育たない。
戦後、
昆布の再生を懸けて漁業者らがクロマツを植え始める。
生え揃(そろ)ってきたのは1980年代頃からだ。
すると、
腐葉土の栄養素が海に溶け出し、
豊富なミネラルを吸収した昆布が復活した。
濃厚な味わいは森の恵みでもある。
手入れの行き届かぬ森林は、
今や全国に広がる。
政府は整備費に充てる森林環境税を2024年度に創設する方針だ。
全ての住民税納税者から年1000円を集める。
森林面積に応じて自治体に配り、
間伐や植栽を行う。
山間部から離れた都市部の住民にとっては、
無駄遣いだけは避けてほしいところだ。
襟裳の人々は「山が荒れれば海が荒れる」との思いで植林に励んだという。
森林が社会にもたらす恩恵は何か。
改めて考えたい。