2月5日 国際報道2019
モスクワにあるボリショイ劇場。
世界トップレベルのバレエやオペラが上演され
“ロシア舞台芸術の最高峰”とも言われている。
このボリショイ劇場の魅力を紹介するツアーのガイドをしている女性がいる。
モスクワのボリショイ劇場は
250年近くの歴史があるバレエとオペラの殿堂である。
世界トップクラスの舞台を見ようと大勢の観客が訪れる。
劇場では建物や舞台の仕組みを案内するバックステージ・ツアーを行っている。
日本語のガイドを務めている山本萌生さん。
「ボックス席に金色の小食がありますが
装飾の部分 実は全部紙でできています。
この内装はずべて紙と木でできていて
すごく音が響くように作られています。」
(山本萌生さん)
「いろんな人の支えがあって舞台は作られているので
そういう多面的な劇場の要素
舞台芸術の多面性を知ってもらえればいい。」
プロのバレエダンサーを目指していた山本さん。
中学卒業後 ボリショイ・バレエ学校に留学した。
しかし17歳のとき左足のじん帯を切る大けがでリハビリのため帰国。
その後もバレエダンサーを続けたが
限界を感じ
23歳で引退した。
山本さんに転機が訪れたのはそのあとのことだった。
ボリショイ劇場の関係者から「ガイドをやってみないか」と声をかけられたのである。
(山本萌生さん)
「チャンスだなとしか思わなかったというか
今度はバレエを踊るという立場ではなく
離れた立場でロシアバレエに出会えた。」
山本さんのガイドの魅力は元ダンサーとしての知識や経験を交えた解説である。
「オペラを助演するときは全くフラット(平ら)な中で上演されます。
ただバレエを上演するときは実は舞台に3%の傾斜をつけます。
フォーメーションを美しく見せたり
舞台の奥行きをより広く見せて
まず外国人の子どもたちが初めに戸惑うのが傾斜なんですね。」
山本さんのガイドぶりは
劇場の学芸員や現地で活躍する日本人のバレエダンサーにも評価されている。
(ボリショイ劇場 学芸員)
「山本さんのツアーはとても素晴らしい。
彼女はバレエや劇場のことを聞きかじりではなく熟知しています。」
(バレエダンサー 吉田むつきさん)
「バレエは単なるダンスじゃないっていうことを山本さんは大事にして
伝えようとしてくれているので
頑張れって 感じですね。」
山本さんはバレエを学ぶため短期間モスクワを訪れている日本の子どもたちを案内した。
「今日はこの劇場の歴史はもちろん
私なりにバレエ学校の話やダンサーの話など織り交ぜながら
案内したいと思います。」
山本さんは子どもたちを普段はなかなか入ることのできない場所に案内した。
衣装の制作部屋。
ボリショイ劇場では
ダンサーひとりひとりの体形に合わせてデザイナーや職人が衣装を作っている。
「皆さんもご存知のバジルですね。
ドン・キホーテの衣装です。
この刺繍の部分もすごく凝っているのがわかると思います。
よく見るとこれ全部手縫いです。
手で作業しています。」
舞台を支える人たちの仕事を間近で見てもらえることで
何かを感じ取ってほしいと考えたのである。
(山本萌生さん)
「自分がやっているバレエっていうのがほんとにいろんな側面がある。
音楽があって
舞台美術があって
衣装があって
デザインがあって
それを知ったうえで踊るのと知らずに踊るのとでは
踊りのふくらみが違うと思う。」
(参加者)
「ダンサーだけじゃなくて裏方の人がいて成り立っているってことを
改めて実感したし
自分が舞台に立つときには
色んな人への感謝の気持ちを大切にして踊りたいです。」
山本さんはバレエダンサーを目指す人たちにも
ロシアバレエの一流の世界を伝え続けていきたいと考えている。
(山本萌生さん)
「いつかこの舞台に立ってみたいと思った子は何人かいると思うので
目標高く頑張ってもらうモチベーションになったらいいなと思っています。」