9月17日 読売新聞「編集手帳」
例えば落語の「芝浜」は大筋は同じでも、
流派によって細部がずいぶん異なる。
また一言一句が同じでも演者により味わいが変わり、
ちがった面白さに気づくことがある。
といった鑑賞の仕方は落語通の方にはおなじみだろう。
新政権への国民の関心に似ていなくもない。
喫緊の“演目”は新型コロナウイルスへの対策と社会経済活動の両立にほかならない。
前政権とどんなちがいを出せるのか。
国難のなかで、
菅内閣が発足した。
コロナ禍は春に始まって、
夏が過ぎ、
もう秋になった。
長く苦しみ、
痛めつけられた人々が新政権に求めるのは何らかの成果だろう。
「国民のために働く」。
菅首相は記者会見で口にしたこの言葉を大事にしてほしいものである。
本紙に働く者として日課を紹介する記事に少々驚いた。
毎朝欠かさず新聞各紙につぶさに目を通し、
たのしみにするのが読売くらし面の「人生案内」だという。
この春からは、
さるビジネス誌の人生相談コーナーで自ら回答者を務めている。
第99代の首相となったきのうから、
1億2000万の人生により重くかかわることは自覚されていよう。
よき回答を。