9月25日 NHKBS1「国際報道2020」
中国の山奥に真新しい団地が次々と出現している。
今年中を目標に農村の貧困脱却を実現するとした
習近平国家主席 肝いりのプロジェクトの一環で
山間部の粗末な住宅に住む人たちを
政府が用意した新しい住宅に移住させているのである。
その政策がいかに進んでいるかを国際社会にアピールしようと
中国政府は9月 外国メディアを招いたプレスツアーを実施した。
山道を進むと突如現れる団地。
標高2,000メートル余
少数民族のイ族やチベット族が暮らす四川省涼山イ族自治州の村。
200世帯余が村ごとこの団地に移転した。
(清水村 第一書記)
「この村の以前の状況です。
人と家畜が一緒に住んでいました。」
住民の多くが石や木でできた粗末な家に住んでいたという。
実際に住民が住んでいたという家は
穴の開いた屋根からわずかな日光がそそぐ薄暗い部屋。
厳しい居住環境がうかがえる。
以前は交通の環境も劣悪だった。
(清水村 幹部)
「以前 このあたりは全部泥道だった。
みんな喜んでいる。
共産党ありがとう。」
この団地では新たな雇用の場も提供している。
野菜畑で100人余の雇用につなげているという。
「収入は月2万円から3万円。
以前より良くなった。」
団地はこのあたりに次々に建設されていて
地元政府は
住民の多くが歓迎しているとしている。
65世帯が暮らす団地に去年入居した女性。
(イ族の女性)
「とてもいい住まいです。
以前は雨漏りがして夜もよく眠れなかったけれど
今は何も怖くない。」
台所に寝室 トイレなどが整備された新しい住宅。
部屋の中を見渡すと
壁には習近平国家主席のポスター。
同じ団地に住む若い夫婦の部屋にも同じポスターが貼ってあった。
1,400世帯余が暮らすこの地域最大の団地。
名前は城北感恩社区。
共産党への感謝を意味する。
少数民族の人たちが引っ越してきた団地のあちこちに共産党のスローガンが掲げられている。
党のいうことを聞き
党に従って前進
共産党の方針に従うよう求めるスローガン。
幼稚園も設置されている。
独自のことばを話す少数民族の子どもたちに
幼い頃から標準語である中国語を教え
小学校に入学する前には日常会話まで行なえるようにするのが狙いである。
(教員)
「年中組や年長組になると
日々上達していって
だいたいの会話を標準語でできるようになります。」
園内に設置された電光掲示板には
私は中国の子ども
標準語を話すのが好き
一方 住民の中には急激な生活の変化についていけないという人もいた。
(住民)
「朝 羊を放牧し
午後回収しに行くという以前の生活が懐かしい。
本当は引っ越したくなかった。」
ただ
貧困脱却を掲げ政府主導で進めるこうした取り組みに
最貧困地域を抱える四川省のトップは自信をあらわにする。
(四川省 書記)
「我々には最後の100mを乗り切る自信と気力がある。
習主席や共産党に対して
合格の答案を出そう!」
習主席が自ら推し進める“脱貧困”の政策。
便利な生活を提供する一方で
少数民族の人たちを中国に統合していきたいという
共産党指導部の意図も垣間見えた。