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翔猿は、猿の如く機敏に

2020-10-14 07:00:00 | 編集手帳

9月25日 読売新聞「編集手帳」


大相撲は昔、
仕切りに制限時間がなく、
いくらでも「待った」ができた。
記録に残る最多の数は、
慶応元年(1865年)11月の本場所、
鬼面山対両国の一番が残した。

じつに95回も「待った」を掛け合ったという。
ホントかと耳を疑う珍事だが、
角界では、
ある人が隣町の人形町に用事があって席を離れ、
戻ったらまだ立っていなかったというエピソードまで語り継がれている。

幕末の騒然としていた時期にあたり、
半藤一利さんが著書で述べている。
<時代が大転換しようとしているとき、
 両国ではのんびりやっている。
 いつの世も庶民の営みとはざっとそんなもの>ではないかと
(『名言で楽しむ日本史』平凡社)

きのうの大相撲の一番に、
今来ているらしい時代の転換点とやらをふと忘れた。
新入幕の翔猿(前頭14枚目)が10勝目をあげ、
優勝争いに残った。
2敗で先頭集団を並走し、
千秋楽まであと3番というところまで来た。
新入幕で優勝すれば106年ぶりの快挙だという。

ユニークなしこ名の力士がその名の通り、
猿のような機敏な動きで番付上位を倒していく。
令和の土俵のこれもホントの話である。

 

 

 

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