7月27日 BIZ+SUNDAY
今年は原発ゼロの夏。
高止まりする電気料金は企業の生産活動の重しとなり
一段の節電はまるで乾いたぞうきんを絞るようだと揶揄される厳しい夏である。
そうした中で今注目を集めているのか“儲かる節電”デマンドレスポンス。
電力を供給側でなく需要側から調整する取り組みである。
電力の使用量が大きく増えそうなときに電力会社が企業や工場側に
一時的に電気の使用量を減らしてください
と要請し需要を抑えようというものだが
これはまとまった量の電力を減らせないと効果が出ない。
そのときに節電できる電気をまとめる aggregate(まとめる)しようというのがアグリゲーターの存在。
そしてアグリゲーターは電力会社から報酬を得て
節電に応じた企業側にも一定の報奨金が支払われる。
節電は我慢という考えすら変えるデマンドレスポンス。
埼玉県の製薬会社 武州製薬。
厳しい品質管理が求められる医薬品の製造には大量の電力が必要である。
(武州制約 岡田哲一工場長)
「この生産室 充填(じゅうてん)室の中は湿度と温度を厳しく管理をしなくてはならない。
この部分での省エネというのは非常に難しい。」
製造現場での節電は難しいため事務室などで徹底した省エネに取り組んでいた。
それでも1年間の電気代は震災前に比べて約5000万円増えた。
電気料金が大幅に上昇したためである。
そこで始めたのがデマンドレスポンス。
アグリゲーターのグローバルエンジニアリングを契約を結んだ。
(グローバルエンジニアリング 高橋宏忠取締役)
「我々としては安定的にデマンドレスポンスしていただいている。」
グローバルエンジニアリングがアグリゲーター事業に参入したのは3年前。
現在約150社を契約を結んでいる。
(グローバルエンジニアリング 高橋宏忠取締役)
「電気代 燃料代 エネルギーコストを下げたいという要望は非常に多く寄せられている。」
デマンドレスポンスの仕組みはー
電力会社が最も電力不足を新尾敗しているのは真夏の午後1時から夕方5時。
電力会社から委託されたアグリゲーターは契約した企業にメールなどで節電を要請。
複数の企業に応じてもらうことで不足しそうな分の電力を削減する。
アグリゲーターは電力会社から報酬を得てその中から報償金を企業に支払う。
電力の需要を抑えることが出来れば電力会社はコストをかけて発電をする必要が亡くなる。
武州製薬の場合
電子メールを受け取った担当者は東京電力から購入する電力を減らし緊急用の自家発電機を動かす。
発電機の燃料代はかかるがそれを大きく上回る報償金を受け取ることが出来る。
(武州製薬 岡田哲一工場長)
「デマンドレスポンスの発動回数が増えるごとに報償金が増えていく。
電力料金の低減という意味では非常に役に立つ。」
アグリゲータービジネスは今欧米で急成長している。
アメリカには15,000件もの契約を獲得し原発9基分の電力削減が出来るというアグリゲーターも現れている。
こうした海外勢が次に狙っているのが電力コストの高騰に悩む日本の企業である。
6月 日本で本格的に事業を始めたフランスの大手アグリゲーター シュナイダーエレクトリック。
日本の商社と組みユーザーの獲得を進めている。
強みは現場を徹底的に調べて儲かる節電の方法をアドバイスするコンサルティング力である。
埼玉県の鋳物工場 マスセイでは1500度もの熱で鉄を溶かす電炉を使っている。
アグリゲーターは電力需要が高まる昼間の作業を夜間にずらしその間電炉を止めるようアドバイスした。
社員に残業代を払っても報奨金を受け取れば逆に利益が増えると言うのである。
(マスセイ 増田清治社長)
「1時間止まった分1時間残業になる。
報償金でデメリットをある程度カバーするとともにコストダウンにつながれば。」
このアグリゲーターは専用の装置を設置して節電の要請を行う。
騒音が激しい製造現場でも確実に対応してもらえるよう音と光で通知する。
アグリゲーター側から新たな提案があった。
現在の契約では節電の要請から実施までの間に30分の猶予がある。
これを10分に短縮しようというのである。
節電要請に素早く応じることが出来れば発電所の急なトラブルにも対応できるようになり
報償金を増やすことが出来るようになると言う。
(アグリゲーター エナジープール ギオーネ・フェルネ マネージャー)
「フランスでは2~3分前の削減要請に対応できる工場もあります。
私たちは効率化の可能性を見つけ出し
工程を変えてもデマンドレスポンスで新たな価値を作り出せる。」