9月28日 NHK「おはよう日本」
アサリの全国有数の産地
有明海ではいま漁獲量が減っている。
そこでヒヨコや鶏から出るあるモノを使って
海を豊かに再生する取り組みが始まっている。
漁師たちが干潟に並べているブロック。
海のための“肥料”である。
有明海の干潟ではいま深刻な問題を抱えている。
アサリが姿を消したのである。
平成17年度には400トンあった漁獲量は年々減少。
昨年度にはほぼゼロになった。
原因はアサリの餌となる植物性プランクトンの減少だと考えられている。
その植物性プランクトンを増やすための肥料がこのブロックなのである。
ひと役買っているのは鶏たちである。
鶏ふんからブロックをつくる。
開発したのは福岡市に本社がある養鶏会社。
年間に育てる鶏は600万羽。
そのふんは年間2万トンにものぼる。
量だけでなく臭いもあり
産業廃棄物として“やっかいもの”になっていた。
この鶏ふんをなんとか生かせないか。
肥料を開発した福岡さん。
鶏ふんにはリンや窒素など有機物が豊富に含まれる。
これが植物性プランクトンのエサになることに目をつけた。
まず完全に発酵させて大腸菌や臭いを取り除く。
含まれる窒素やリンは
大量に海に入れると赤潮の原因となってしまう。
このためゆっくり溶けだして悪影響を与えないようにと
ブロックに加工した。
窒素やリンは3~4か月かけて少しずつ海に溶けだす構造である。
(トリゼンオーシャンズ 福岡製造・開発部長)
「肥料化したときの品質
これはかなり高いものを要求されますので
完全に発酵・完熟したそういったものでないと
海へ肥料として施肥というのは非常に困難だと。
そこに逆に言うと
それができたことに確かな自信を持っています。」
海の肥料としての安全性と効果を検証するために
大学の専門家も協力した。
広島大学の山本名誉教授である。
(広島大学 山本名誉教授)
「完全に発酵させた完熟鶏ふんという
雑菌がまったくなくて
最終的に肥料に含まれる微生物は乳酸菌と酵母。
それはチェックして
それなら使いましょうと。」
ブロックを設置し始めて半年。
有明海の漁協では手ごたえを感じているという。
(大花漁業協同組合 組合長)
「小さいアサリから
ある程度大きいアサリまで入っている。
いままではこういう姿がほとんど見られなかった。
非常に期待をしています。」
“やっかいもの”の鶏ふんが海を救うかもしれない。
この養鶏会社にはいま各地の漁協から問い合わせが来ているという。
(トリゼンオーシャンズ 福岡製造・開発部長)
「いままでは邪魔者扱いさえていた鶏ふんですけどね。
大きなお役に立てる可能性を十分感じています。
人間が何らかの手で海を豊かにしていく。
そういう時代が来ているのではないかなと思います。」
環境省によると
有明海には有機肥料への規制はないということである。
ただ
大腸菌や大量の有機物で水質が悪化しないようにすることは簡単ではない。
そうしたハードルを乗り越え
この肥料が今後
より広く使われるようになるのかが注目されている。