評価点:78点/2014年/アメリカ/107分
監督:ジャウマ・コレット=セラ
案外おもしろい。
ロンドン行きの飛行機に、航空保安官のビル・マークス(リーアム・ニーソン)は乗り込み、いつも通りの任務に就いた。
離陸してしばらくした時、専用回線に「2〇分後に乗客を一人殺す」という警告のメッセージが入る。
脅迫だと察した彼は、機長に話すが機長はそれだけではフライトプランを変更することはできないと拒否する。
そして20分後、不意に立ち上がった同僚のジャック・ハモンドを問い詰めると銃を抜き、襲ってくる。
やむなく殺してしまったとき、セットしていたアラームが鳴り、メッセージが届く。
「20分以内に150万ドル用意しろ。でなければさらに被害者が出る。」
リーアム・ニーソン主演の閉鎖的サスペンスアクション。
ジュリアン・ムーアがキャスティングされていたこと、タイトルが「フライト・プラン」という映画に似ていたことなどから、「駄作」と判断した私は見にいかなかった。
ジュリアン・ムーアが出ていると、ラストでエイリアンものになって解決しそうだし、「フライト・ゲーム」なんていう凡庸なタイトルだから、どうせラストは「実は主人公の妄想でした」的な落ちになるだろうと読めたからだ。
だからというわけではないが、この映画はかなりプロモーションに失敗していると私は思う。
中身はおもしろい。
原題通り、「ノン・ストップ」で映画が進行する。
惜しい点もいくつかあるが、十分及第点だろう。
▼以下はネタバレあり▼
閉鎖系のサスペンスとしてはかなり完成度が高いと思う。
二転三転する物語の進行と、観客と主人公を焦らせるファクターを巧みに使い分けている。
狭い中でも集中力を切らさずに、緊迫感を維持させることに成功している例だろう。
閉鎖的な環境で、しかも説明をできるかぎり省いた状態で物語は進行していく。
アルコール中毒である主人公の人生もすぐには明かされないため、事件が「事件」なのか「妄想」なのかわからないサスペンテッドな状態に観客を追いやる。
20分後に殺される。
そのわかりやすいルールのもと、保安官の同僚が殺され、機長が殺される。
航空機は非常に精密な技術と、専門的で高度な知識が要求される。
だからこそ、内部はみな「顔見知り」という狭い世界でもある。
そうなると、犯人が内部なのか外部なのかわからない。
副機長と付き合っているキャビンアテンダントもあやしいし、仕事を語ろうとしない隣席の女(ジュリアン・ムーア)もかなりあやしい。
そして、ビルもアル中。
誰も信用できない中、事態はある観客がいうように、完全に「9.11」と同じ様相を呈していく。
疑わしく、だれもが犯人のような顔をしている。
この映画がおもしろいのは、実はこれだけ危機に瀕しているにもかかわらず、「相手を信じること」からスタートしているという極めて心優しい行動原理に基づいて人々が行動するということだ。
ビルも専用回線に侵入された段階で、脅迫を鵜呑みにし、隣席のジュリアンについても疑うどころか捜査に協力させる。
医者もコンピューター・エンジニアも敵か味方かもわからない状況で、とりあえず「信じる」ことをスタンスとして動く。
副操縦士も、隣で機長が死んでいても、明らかにビルがテロリストにしか思えない状況で、「わかった後○分だけだぞ」と説得に応じてしまう。
追撃されそうになっても、ビルを信じて下降してしまう。
お金の送金も、簡単に要求を呑んでしまう。
(追撃するつもりなら、なぜ送金する? 飛行機の外側の人々のスタンスがいまいちわからない)
この犯人の計画も、彼がそのように動くだろうと見越しているかのように周到だ。
いや、周到すぎる。
だから、冷静に考えれば、「そんなことする?」というような行動をとりがちだ。
(送金はまさにその具体例。送金されなければあのコンピューターエンジニアは計画にのらなかったはずだし)
だが、私たちはミスリードされ続ける。
すなわち、ビルが犯人で思い込みかもしれない、あるいはこのあとエイリアンが登場して、「がらがらぽん」してしまうかもしれない(ジュリアン・ムーア疑い)というミスリードが常にあり、こちらが思考停止になるように仕向けられる。
残念なのは、そこまでミスリードしたにもかかわらず、犯人が読めない(だれでもいい)という点だ。
あいつのあの言動は、このためにあったのか、というような膝を打つような犯人になっていない。
だから犯人がわかったときのカタルシスは小さい。
べらべらと自分の生い立ちを喋り、動機を洗いざらいぶちまけてくれるが、「え。そんなんわかるわけないやん」というものだ。
これがきちんと複線の上の落ちならば、おもしろかったのだが。
最初にも書いたが、やはりキャスティングとタイトルが悪い。
もっと違うタイトルにはならなかったのか。
ジュリアン・ムーアが出てくるだけで、見る気がしないのはダメなのはわかっているが…。
プロモーションは大事ですね。
監督:ジャウマ・コレット=セラ
案外おもしろい。
ロンドン行きの飛行機に、航空保安官のビル・マークス(リーアム・ニーソン)は乗り込み、いつも通りの任務に就いた。
離陸してしばらくした時、専用回線に「2〇分後に乗客を一人殺す」という警告のメッセージが入る。
脅迫だと察した彼は、機長に話すが機長はそれだけではフライトプランを変更することはできないと拒否する。
そして20分後、不意に立ち上がった同僚のジャック・ハモンドを問い詰めると銃を抜き、襲ってくる。
やむなく殺してしまったとき、セットしていたアラームが鳴り、メッセージが届く。
「20分以内に150万ドル用意しろ。でなければさらに被害者が出る。」
リーアム・ニーソン主演の閉鎖的サスペンスアクション。
ジュリアン・ムーアがキャスティングされていたこと、タイトルが「フライト・プラン」という映画に似ていたことなどから、「駄作」と判断した私は見にいかなかった。
ジュリアン・ムーアが出ていると、ラストでエイリアンものになって解決しそうだし、「フライト・ゲーム」なんていう凡庸なタイトルだから、どうせラストは「実は主人公の妄想でした」的な落ちになるだろうと読めたからだ。
だからというわけではないが、この映画はかなりプロモーションに失敗していると私は思う。
中身はおもしろい。
原題通り、「ノン・ストップ」で映画が進行する。
惜しい点もいくつかあるが、十分及第点だろう。
▼以下はネタバレあり▼
閉鎖系のサスペンスとしてはかなり完成度が高いと思う。
二転三転する物語の進行と、観客と主人公を焦らせるファクターを巧みに使い分けている。
狭い中でも集中力を切らさずに、緊迫感を維持させることに成功している例だろう。
閉鎖的な環境で、しかも説明をできるかぎり省いた状態で物語は進行していく。
アルコール中毒である主人公の人生もすぐには明かされないため、事件が「事件」なのか「妄想」なのかわからないサスペンテッドな状態に観客を追いやる。
20分後に殺される。
そのわかりやすいルールのもと、保安官の同僚が殺され、機長が殺される。
航空機は非常に精密な技術と、専門的で高度な知識が要求される。
だからこそ、内部はみな「顔見知り」という狭い世界でもある。
そうなると、犯人が内部なのか外部なのかわからない。
副機長と付き合っているキャビンアテンダントもあやしいし、仕事を語ろうとしない隣席の女(ジュリアン・ムーア)もかなりあやしい。
そして、ビルもアル中。
誰も信用できない中、事態はある観客がいうように、完全に「9.11」と同じ様相を呈していく。
疑わしく、だれもが犯人のような顔をしている。
この映画がおもしろいのは、実はこれだけ危機に瀕しているにもかかわらず、「相手を信じること」からスタートしているという極めて心優しい行動原理に基づいて人々が行動するということだ。
ビルも専用回線に侵入された段階で、脅迫を鵜呑みにし、隣席のジュリアンについても疑うどころか捜査に協力させる。
医者もコンピューター・エンジニアも敵か味方かもわからない状況で、とりあえず「信じる」ことをスタンスとして動く。
副操縦士も、隣で機長が死んでいても、明らかにビルがテロリストにしか思えない状況で、「わかった後○分だけだぞ」と説得に応じてしまう。
追撃されそうになっても、ビルを信じて下降してしまう。
お金の送金も、簡単に要求を呑んでしまう。
(追撃するつもりなら、なぜ送金する? 飛行機の外側の人々のスタンスがいまいちわからない)
この犯人の計画も、彼がそのように動くだろうと見越しているかのように周到だ。
いや、周到すぎる。
だから、冷静に考えれば、「そんなことする?」というような行動をとりがちだ。
(送金はまさにその具体例。送金されなければあのコンピューターエンジニアは計画にのらなかったはずだし)
だが、私たちはミスリードされ続ける。
すなわち、ビルが犯人で思い込みかもしれない、あるいはこのあとエイリアンが登場して、「がらがらぽん」してしまうかもしれない(ジュリアン・ムーア疑い)というミスリードが常にあり、こちらが思考停止になるように仕向けられる。
残念なのは、そこまでミスリードしたにもかかわらず、犯人が読めない(だれでもいい)という点だ。
あいつのあの言動は、このためにあったのか、というような膝を打つような犯人になっていない。
だから犯人がわかったときのカタルシスは小さい。
べらべらと自分の生い立ちを喋り、動機を洗いざらいぶちまけてくれるが、「え。そんなんわかるわけないやん」というものだ。
これがきちんと複線の上の落ちならば、おもしろかったのだが。
最初にも書いたが、やはりキャスティングとタイトルが悪い。
もっと違うタイトルにはならなかったのか。
ジュリアン・ムーアが出てくるだけで、見る気がしないのはダメなのはわかっているが…。
プロモーションは大事ですね。
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