評価点:54点/2014年/フランス/109分
監督:オリヴィエ・メガトン
「男の子だったら、ブライアンていう名前だけはやめるわ」「そうだね、母さんも喜んでいると思うよ。」
レニーと離婚してずいぶん経ったブライアンだったが、二人の関係は悪いものではなかった。
レニーは再婚していたが再婚相手のスチュアート・セントジョンとの関係がうまくいっておらず、離婚を考えていた。
ブライアンは娘のキム・ミルズ(キム・ミルズ)の成長ぶりに驚きながらも、温かく見守る日々が続いていた。
そんなある日、レニーから連絡があり、自宅に戻ると、彼女が殺されていたのを発見する。
直後に警察に取り囲まれ、元妻殺しの容疑をかけられる。
なんらかの陰謀を直観したブライアンは、逃走を図る。
LAを舞台に警察に追われながら、真犯人を追う、ブライアンの闘いが始まった。
「96時間」シリーズの第三弾にして、最終章。
映画館にいくつもりだったが、第二弾の「リベンジ」を見て興味を失った私は、そのまま公開終了を迎えてしまった。
そこで、今回レンタルで借りたわけだ。
リーアム・ニーソンの過剰親父ぶりは今回も健在だが、私が期待していたものとは少し違う。
まあ、そこそこ楽しめることは間違いないので、暇なときにでも借りるのがいいのかもしれない。
▼以下はネタバレあり▼
原題は「TAKEN」である。
「誘拐」ということだろう。
今回は物語の中心は「誘拐」ではないが、異常な父親ぶりは同じだ。
ほとんど主要キャスティングは同じだが、とくに「96時間」という制限はない。
それが問題ではなかっただろう。
この映画の致命的な点は、緊迫感が決定的に足りないということだ。
その理由の一つは、LAというブライアンにとっての庭が舞台であるということだ。
パリ、イスタンブールと続いた「非日常」の舞台が、日常に戻ってくるしかなかったのは理解できる。
しかし、土地勘も、非常時の準備もできているであろう地元で、彼が警察に追われたところでそれほど観客にとって緊迫感は生まれない。
案の定、警察に捕まっても逃げ、取り囲まれても逃げ、挙げ句の果てには、フォレスト・ウィティカーはほとんど彼を追う気もない。
もう一つは、敵が怖くない、ということだ。
元妻が殺された。
それまでの登場人物で、疑わしいのは一人だけ。
現夫のスチュアート・セントジョンだけだ。
だから物語は驚きも少ないし、そして何より、これまでのシリーズに比べて怖くない。
彼がどんな狡猾で残忍な男なのか、わからないので、黒幕だったとしても怖くないのだ。
だって、ブライアンに勝てるほどの敵には見えないもの。
もう一人の敵、オレグ・マランコフに至っては、「これでは恐怖感は出ない」と思ったのか長ったらしいプロフィールまで紹介される。
しかし、いざ闘うことになったら、パンイチなのだ。
パンイチの特殊工作員なんて、まったく怖くない。
わらっちゃうくらいだ。
(私は「孔雀王」のラスボスを思い出した。
誰も共感してくれないだろうけれど。)
あんな長いプロフィールを入れるくらいなら、もっと残忍な様子を描ければよかった。
油断しているマランコフに、やる気満々のブライアンが挑めば、すぐにどうなるか予測が付いてしまう。
そして最後の理由は、ブライアンらしさがほとんど見られないということだ。
これ見よがしに隠れ家を見せたりするが、切迫感がない状態では何をやっても彼らしさは見えてこない。
だから普通の映画になってしまった。
GPSのデータを抜き取ったり、防犯カメラのデータを抜き取ったり、あまり元工作員のような工夫が見られない。
「96時間」のアイデンティティはここにはない。
これで終幕になるらしい。
娘の子どもの名前に、母の名前をつけるのはいいだろう。
でも決して父の名前をつけるのはやめておこう。
きっと思い込みの激しい、過剰反応してしまう強烈な子どもになるだろうから。
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