評価点:73点/2010年/アメリカ
監督:フィリップ・ノイス
イヴリン・ソルトはジェイソン・ボーンなのか。
二年前、北朝鮮に拘束されたCIA工作員のイヴリン・ソルト(アンジェリーナ・ジョリー)は、恋人の訴えにより何とか救出された。
表向き石油会社で働いている彼女の元へ、1人の亡命者が訪れる。
ロシアから来たという男は、アメリカ副大統領の葬儀に出席するロシア大統領を、ロシアの工作員が殺しに来るということだった。
誰も信じない話だったが、その工作員の名前がイヴリン・ソルトであることが明かされ、CIAは騒然となる。
無実を訴えるソルトだったが、包囲され、仕方がなく逃げるしかなくなる。
出産後、ますます勢いを増すアンジーが主演するアクション映画。
この夏の一つの話題作である。
半年前からずっと予告編が流されていたこともあって、注目度も高くなっているようだ。
予告編があまりにも挑戦的なので、ハードルが高くなっている気がするが、最近の映画はそうでもしないと売れないようだ。
スパイ・アクションであることは変わりないので、そういう雰囲気の映画が好きな人にはお勧めだ。
もっと言えば、ジェイソン・ボーン・シリーズが好きな人にはたまらないだろう。
サスペンス的な要素も確かにあるものの、やはりそこに期待をしてしまうと肩すかしを食らうかも知れない。
まだ先の話だが、アクション作品の対抗馬が「エクスペンダブルス」くらいしかない(?)ので、観に行く候補に入れていてもいいだろう。
▼以下はネタバレあり▼
1人の優秀なスパイが集団に追跡される。
この手のシチュエーションはもはや典型とも言える。
「ミッションインポッシブル」にしても、「ボーン」シリーズにしても、なぜかどきどきする。
少なくともスパイ全盛期はとうの昔に過ぎてしまったはずだ。
それでもスパイの手際の良さを見ているとほれぼれしてしまうのは、一種の幻想なのかもしれない。
ほとんどボーン・シリーズと同工異曲と言ってもいいだろう。
誰かからはめられるという展開も、過去にスパイの訓練を受けている、その過去にキーが隠されているという設定も、殆ど同じだ。
アンジーという魅力ある女優が主人公なのか、一見すると優しそうな草食系男子が主人公なのかという違いだけだろう。
その意味ではどうしても二番煎じという印象を拭うことは出来ない。
ただ、それでも展開はおもしろかった。
記憶というブラックボックスに全てを押し込めてしまって謎解きの余地がないボーンに対して、行動から心理を読み解くソルトのほうが、観客は楽しめる。
そのあたりを一応整理しておこう。
ソルトはやはりロシアの工作員として育てられ、アメリカ大使館に引き取られ、CIAにエージェントとして任務に従事していた。
彼女に与えられた任務は、CIAからはロシアの動向を探ることであり、ロシア(旧ソ連)からは計画の実行だった。
その計画とは、弱体化したロシアの大統領暗殺だったわけだ。
そのトリガーが、オルコフ(ダニエル・オルブリフスキー)の来局であり、それをきっかけにして実行に移された。
だが、実際にはソルトは寝返っていた。
ロシア大統領を暗殺するためにニューヨークに向かい、計画通り大統領に引き金を引く。
彼女はクモの毒を用いて、ロシア大統領を半死状態にして、殺さなかった。
その後もロシアスパイのふりをしていたのは、計画の全貌を知るためだった。
仲間が誰なのかもわからない彼女にとって、計画が何処まで進められているのか見えていなかった。
1人だけが寝返ったとしても、スパイたちの計画を止めることは出来ない。
そのため、オルコフたちに自分はスパイの一員であるかのように装い、ホワイトハウスまで乗り込むことにしたのだ。
そして真の黒幕はCIAの上司ウィンター(リーヴ・シュレイバー)であることを知ったため、自分の立場を明らかにした、ということだ。
ソルトの立ち位置が最後までわかりにくくなっているため、彼女が裏切ったのか、ほんとうにロシアスパイなのか見えにくくなっている。
僕は終盤までずっとソルトは2人いるとか、ソルトは北朝鮮に拘束されたときに、入れ替わったのだとか考えていた。
僕はゆがんだ見方が好きなので、どんどん深読みしてみたが、多くの人はそれほど変な見方をしなくても、オチは読めただろう。
また、ソルトの行動が「ロシアスパイ」としてのものが多いこともあって、オチは逆になるだろうと読むことも出来たはずだ。
僕は上司のウィンターが悪役ばかりしている印象だったこともあり、彼がラストで裏切るだろうと言うことは読め読めだった。
もうどんな映画を観てもリーヴ・シュレイバーが出ていると黒幕だと思ってしまうかも知れない…。
それはともかく、僕が終盤までソルトの考えが読み切れなかった理由を言い訳しておこう。
ソルトの心理が描けていなかったからだ。
確かにしまった映画だったので、そこまで丁寧に描くことが出来なかったのかも知れない。
だが、ソルトがスパイとして何十年も潜伏していたのにもかかわらず、恋人とのやりとりで心変わりしてしまったというのはいかにもアマチュアだ。
その強い愛はどのようなものだったのか、なぜそこまで彼に焦がれてしまったのか、そのあたりをきちんと描かなければ、カタルシスは低い。
その点は映画としてポイントになる部分だけに、きちんと描くべきだったと思う。
また、この映画は進めば進むほどスケールが小さくなっていく。
派手なカーアクションから、大統領暗殺、そこまではよかったが、ホワイトハウスに潜入してからはどうしても密室で世界を揺るがしかねない事態ということを視覚的に捉えにくい。
そのため、ラストのウィンターとの対峙は、もはや内輪のもめ事のようにさえ映ってしまう。
もう少し展開を考えれば、もっと大きなカタルシスを得ることも出来ただろうに、残念だ。
この映画もシリーズ化しそうな展開だ。
それはかまわないにしても、次回作の展開次第では駄作に成り下がるだろう。
頼むから安易に犯人を仕立て上げたり、テープレコーダーが送られてきて自動的に消滅したりしないでほしい。
監督:フィリップ・ノイス
イヴリン・ソルトはジェイソン・ボーンなのか。
二年前、北朝鮮に拘束されたCIA工作員のイヴリン・ソルト(アンジェリーナ・ジョリー)は、恋人の訴えにより何とか救出された。
表向き石油会社で働いている彼女の元へ、1人の亡命者が訪れる。
ロシアから来たという男は、アメリカ副大統領の葬儀に出席するロシア大統領を、ロシアの工作員が殺しに来るということだった。
誰も信じない話だったが、その工作員の名前がイヴリン・ソルトであることが明かされ、CIAは騒然となる。
無実を訴えるソルトだったが、包囲され、仕方がなく逃げるしかなくなる。
出産後、ますます勢いを増すアンジーが主演するアクション映画。
この夏の一つの話題作である。
半年前からずっと予告編が流されていたこともあって、注目度も高くなっているようだ。
予告編があまりにも挑戦的なので、ハードルが高くなっている気がするが、最近の映画はそうでもしないと売れないようだ。
スパイ・アクションであることは変わりないので、そういう雰囲気の映画が好きな人にはお勧めだ。
もっと言えば、ジェイソン・ボーン・シリーズが好きな人にはたまらないだろう。
サスペンス的な要素も確かにあるものの、やはりそこに期待をしてしまうと肩すかしを食らうかも知れない。
まだ先の話だが、アクション作品の対抗馬が「エクスペンダブルス」くらいしかない(?)ので、観に行く候補に入れていてもいいだろう。
▼以下はネタバレあり▼
1人の優秀なスパイが集団に追跡される。
この手のシチュエーションはもはや典型とも言える。
「ミッションインポッシブル」にしても、「ボーン」シリーズにしても、なぜかどきどきする。
少なくともスパイ全盛期はとうの昔に過ぎてしまったはずだ。
それでもスパイの手際の良さを見ているとほれぼれしてしまうのは、一種の幻想なのかもしれない。
ほとんどボーン・シリーズと同工異曲と言ってもいいだろう。
誰かからはめられるという展開も、過去にスパイの訓練を受けている、その過去にキーが隠されているという設定も、殆ど同じだ。
アンジーという魅力ある女優が主人公なのか、一見すると優しそうな草食系男子が主人公なのかという違いだけだろう。
その意味ではどうしても二番煎じという印象を拭うことは出来ない。
ただ、それでも展開はおもしろかった。
記憶というブラックボックスに全てを押し込めてしまって謎解きの余地がないボーンに対して、行動から心理を読み解くソルトのほうが、観客は楽しめる。
そのあたりを一応整理しておこう。
ソルトはやはりロシアの工作員として育てられ、アメリカ大使館に引き取られ、CIAにエージェントとして任務に従事していた。
彼女に与えられた任務は、CIAからはロシアの動向を探ることであり、ロシア(旧ソ連)からは計画の実行だった。
その計画とは、弱体化したロシアの大統領暗殺だったわけだ。
そのトリガーが、オルコフ(ダニエル・オルブリフスキー)の来局であり、それをきっかけにして実行に移された。
だが、実際にはソルトは寝返っていた。
ロシア大統領を暗殺するためにニューヨークに向かい、計画通り大統領に引き金を引く。
彼女はクモの毒を用いて、ロシア大統領を半死状態にして、殺さなかった。
その後もロシアスパイのふりをしていたのは、計画の全貌を知るためだった。
仲間が誰なのかもわからない彼女にとって、計画が何処まで進められているのか見えていなかった。
1人だけが寝返ったとしても、スパイたちの計画を止めることは出来ない。
そのため、オルコフたちに自分はスパイの一員であるかのように装い、ホワイトハウスまで乗り込むことにしたのだ。
そして真の黒幕はCIAの上司ウィンター(リーヴ・シュレイバー)であることを知ったため、自分の立場を明らかにした、ということだ。
ソルトの立ち位置が最後までわかりにくくなっているため、彼女が裏切ったのか、ほんとうにロシアスパイなのか見えにくくなっている。
僕は終盤までずっとソルトは2人いるとか、ソルトは北朝鮮に拘束されたときに、入れ替わったのだとか考えていた。
僕はゆがんだ見方が好きなので、どんどん深読みしてみたが、多くの人はそれほど変な見方をしなくても、オチは読めただろう。
また、ソルトの行動が「ロシアスパイ」としてのものが多いこともあって、オチは逆になるだろうと読むことも出来たはずだ。
僕は上司のウィンターが悪役ばかりしている印象だったこともあり、彼がラストで裏切るだろうと言うことは読め読めだった。
もうどんな映画を観てもリーヴ・シュレイバーが出ていると黒幕だと思ってしまうかも知れない…。
それはともかく、僕が終盤までソルトの考えが読み切れなかった理由を言い訳しておこう。
ソルトの心理が描けていなかったからだ。
確かにしまった映画だったので、そこまで丁寧に描くことが出来なかったのかも知れない。
だが、ソルトがスパイとして何十年も潜伏していたのにもかかわらず、恋人とのやりとりで心変わりしてしまったというのはいかにもアマチュアだ。
その強い愛はどのようなものだったのか、なぜそこまで彼に焦がれてしまったのか、そのあたりをきちんと描かなければ、カタルシスは低い。
その点は映画としてポイントになる部分だけに、きちんと描くべきだったと思う。
また、この映画は進めば進むほどスケールが小さくなっていく。
派手なカーアクションから、大統領暗殺、そこまではよかったが、ホワイトハウスに潜入してからはどうしても密室で世界を揺るがしかねない事態ということを視覚的に捉えにくい。
そのため、ラストのウィンターとの対峙は、もはや内輪のもめ事のようにさえ映ってしまう。
もう少し展開を考えれば、もっと大きなカタルシスを得ることも出来ただろうに、残念だ。
この映画もシリーズ化しそうな展開だ。
それはかまわないにしても、次回作の展開次第では駄作に成り下がるだろう。
頼むから安易に犯人を仕立て上げたり、テープレコーダーが送られてきて自動的に消滅したりしないでほしい。
>通りすがりさん
訂正しました。ありがとうございました。
見終わった後のモヤモヤ感が整理できました。
ありがとうございました。
本業の方で問題勃発中です。
まさかの同時多発テロで、自分の能力のなさを痛感する日々です。
マラソンは終わりましたので、若干落ち着くかも知れません。
次は2月にハーフに出るつもりです。
練習しなければ…。
>HRTさん
コメントありがとうございます。
今後もよろしくお願いします。