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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

経済と法は、現代の呪術である。

2023-11-15 21:36:22 | 毎日コラム
何か問題が起こったり、新しいことを考えたりするとき、私たちの観点は大きく二つある。
それはコストやリターンの上で最適かどうか。
あるいは、法律に抵触しないかどうか。
どんなことでも、お金に換算して、時間に換算して是非を問おうとする。
ルール違反は、ルールやマナーというよりも、法律がよりどころとなる。
私たちは、とくに情報化社会に本格的にどっぷりつかっている現代は、この二点が物事を議論するときの重要な観点になっている。

いや、この観点しかない、といったほうが適切だろう。
私たちは金に換算できる方法でしか利を考えることができず、法律に抵触しないかぎり何をやっても【一応は】良いと思っている。

しかし、この二つは社会という基盤がしっかりしているからこそ成り立つ観点であり、決してそれ以前にあったものではない。
その意味で、平安時代、光源氏が体調を崩したとき祈祷をしてもらったのとほとんど同じ程度の確かさしかない。
経済も法律も、現代のいわば呪術なのである。
これだけ「大きな物語」が喪失したといわれる昨今において、そういう脆弱なものを唯一のよりどころにしているところが、非常にアイロニカルである。
いつそれらが崩れるかわからない時代に突入しているのに、いや、だからこそ、その脆弱な経済と法律を私たちの行動規範や判断のよりどころになっているのだから。

この呪いはしかし、容易に解けない。
それは人々がより強固に信用しているからこそ、確固たるものに見えてくる。
だが、ここで、立ち止まってみる必要があるだろう。
この呪術を用いることで、より本質的なものが見落とされているということはないか、ということを。
ちょうど信号しか見ずに現実の交通状況を無視して交差点に侵入する自動車と同じように。

わかりやすいものほど、厄介である、ということかもしれない。

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