「街のあかり」は、「浮雲」、「過去のない男」に続く、敗者三部作の最終章です。「浮雲」では、“失業”を、「過去のない男」では、ホームレスを、そして今回のテーマは“孤独”です。
初めて観た、アキ・カウリスマキ監督作品「街のあかり」、舞台はフィンランド・ヘルシンキだ。一昨年訪れたところだけど、こんな場所あったかな?クラシックな趣きの風景だ。ちょっと私が見たヘルシンキとは違ったが・・・・。えぇ~!ヘルシンキ市内に地下鉄があるの?知らなかった。そうか・・・・。その地下鉄の終点ルオホラハティ駅付近、街の中心から少し離れた新興住宅地でのロケだそうだ。メインな観光では分からないはず。
実は、展覧会でお世話になっている画廊のスタッフMさんが、このチラシを見て、この監督の映画のファンだと言われた。へぇ~そうなんやちょっとゆっくり系の作品が多いとのこと。私の好みじゃないかな?なんて思っていた。
しかし、気になるので、8月26日、京都みなみ会館にて鑑賞。だと聞くと、やはり観なくちゃなんて思い、19:30の上映時間に行くことに。
感想・・・・良かった何がいいかというと主人公のけなげさだ。愛を確信した相手に裏切られても、信じる心が凄いのだ。どん底まで落とされるのに、それでも相手を裏切らないその一途さ。ちょっとアホちゃうかと、イライラしてしまうけど。
おはなし
ヘルシンキ、ルオホラハティ地区、警備会社ウェスタン・アラーム社に夜警として勤務するコイスティネン(ヤンネ・フーティアイネン)はその朴訥な性格が災いしてか?同僚からも、上司からも気に入られず黙々と仕事をするだけの日々だった。同僚は彼を見るとからかうも、決して仲間に入れようとしないし、上司は彼をいつクビにしょうかまよっている。友人もいない。愛する人もいない。家族もいない。食堂へ行っても、パブに行っても、声をかける人など、誰もいないひっそり影のようにヘルシンキの場末で暮している。
夜勤明けに、いつもソーセージ屋に向かうその店を営むアイラ(マリア・へイスカネン)が彼を迎えてくれる彼のために、ソーセージを丹念にグリルするアイラでも、コイスティネンは彼女の気持ちに気づくことなく・・・・。いつもうわの空そして、誰にともなく告白、「警備会社を起業して、奴らをツブしてやる」と・・・・。アイラもうなずく。
そんなコイスティネンをパブで偶然見かけた男がいた。彼の性格を見抜き、付け込もうとする危険な奴(イルッカ・コイヴラ)だ。そんな男の存在に、コイスティネンはまだ気づいていなかった。
あるった日のカフェ。休憩時間に美しい女性がコイスティネンに近づいて来た。いきなり彼の前に座り、「あなたが寂しそうだから」という。コイスティネンは突然に落ちたふたりはつっましやかなデートをする。
彼の胸に突然ひかりがその希望が原動力となり、なけなしの貯金をはたいて、職業訓練学校で勉強して卒業証書を手にする。さあ銀行へ融資をと、勇んで出かけるも、まったく相手にされず銀行から侮辱のまなざしを受けるだけさらに、パブの前につながれたを不憫に思い、飼い主の元に乗り込むも、殴られ、雑巾のように放り出される始末。
それでも彼の胸はあの美しい女性ミルヤ(マリア・ヤルヴェンヘルミ)への愛にあふれていた
ある月明かりの美しい夜。突然仕事場にミルヤが訪ねてきた「会いたかったわ」という言葉とともに、「一緒にウィンドウショピングがしたい」と言う。そんな彼女の誘惑に断りきれず、夜のショピングセンターへ・・・・。(何やら怪しい雰囲気?)そして、宝石店の警備に入るとき、コイスティネンが押した暗証番号をミルヤは見逃さなかった数日後、ミルヤは初めて、コイスティネンの部屋を訪ねる。もてなす用意をしてドキドキ状態のコイスティネン、やって来たミルヤの表情は何だかおかしい予測するコイスティネンの思ったとおり的中!!「母が病気だから、実家に帰る」ということだった。コイスティネンはショックそして泥酔状態最後に辿り着いたのはソーセージ屋のアイラの元・・・・・。美しい女は去って行ったのだ
しかしミルヤは再び戻ってきた。(何で?)話があるというが、なかなか切り出さない(凄~く変)いよいよ彼を嵌める準備だ。に睡眠剤をいれ、何とショッピングセンターの鍵を奪う後はマフィアの男たちがを奪う手はずになっていた。
宝石は奪われる~~~
容疑はコイスティネンにかけられるが、証拠不十分で釈放。仲間がいるはずと警察は睨んだ。あくまでもひとりでやったと主張するコイスティネン釈放されても、世間の眼は冷たい。牢獄以上のものだった
性懲りも無く、またミルヤがやって来た。「謝りたい、わけを説明させて」なんて白々しいそれでも彼はミルヤを愛していたのに・・・・。また彼を!!盗んだの一部と鍵をソファに隠す。コイスティネンは知っていた。でも何も言わない。何で役割を終えたミルヤは悠々と立ち去る
もちろん通報され、コイスティネンは牢獄へ・・・・。1年の服役が言い渡される。
季節が移り変わっていく。夏から秋へ、そして冬なった。彼は冬の風景を窓からせつなそうに見つめる。アイラからのが来るが、ミルヤからのが来る事はない。アイラからのは読まずに破り捨てる。
春になった。出所したコイスティネンは簡易宿泊所に居を置き、レストランの皿洗いをしながら、再出発する。偶然街で会ったアイラが宿泊所を訪ねてくる。夢を失っていないことを話すコイスティネンにアイラは微笑む
またしても、夢をつぶされるコイスティネン
ある晩コイスティネンの勤めるレストランにあの男がやって来た。美しいのようなミルヤを連れて。そして男の策略によって、窃盗犯だとバラされ、店をクビに。
ついに怒りが込みあげるコイスティネン!!ナイフを研ぐ彼の姿があった。店に戻り、男を刺そうとするも、かするだけ・・・・。部下たちに瀕死の重傷負わされたコイスティネは小さな友人と犬によって助けられる。
不思議なのは、役者さんのテンションがあまり高くない演技です。むしろ意識的に全体に抑えられているという感じです。内容は孤独で愛情に飢えた男がかなり卑劣な女性と男たちよって徹底的に落とされるという内容なのに、喜怒哀楽がない淡々とした展開は何ともいえないものを感じます。
これだけ裏切られても、一度信じたら、主人公の愛したものに対して裏切らないという姿は無償の愛なのかもしれませんね。慈愛に満ちたという表現は納得できます。
孤独な世界、誰に愛される事もない、友だちもない、家族もない・・・・そんな“ないないづくし”のコイスネィテンに声をかけてくれたミルヤは確かに悪女だったけど、彼にとっては愛するという気持ちを芽生えさせてくれた唯一の女性だったのかな?なんて・・・。 一途に思いを寄せるアイラの姿も素晴らしいな。
今までにないひと味違った作品でした。アキ・カウリスマキ監督に
『街のあかり』公開記念として、京都みなみ会館と神戸アートビレッジセンターで、
カウリスマキの今までの14作品を一挙上映!