ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

太田 裕美

2005年09月02日 | ミュージシャン


 中学や高校のころって、「自分にとってのアイドル」が心の中にいたはずですよね。
 でも、ぼくには不思議とそういう「アイドル」がいなかった。
 好きな芸能人がいなかったわけじゃなくて、気が多かったのか移り気なのか、誰かを「いいなぁ」と思っても長続きしなかったんです。
 これは、好みの女性のタイプがとても幅広いことと何か関係があるのかもしれない。


 「好きな芸能人ってだれ?」と尋ねられた時の、出てくる数少ない答えのひとつが、太田裕美さんです。
 熱狂的、というほどではないんですが、曲も、歌声も好きなんです。
 可愛らしくて、ちょっと「お姉さん」ぽい外見も好きです。
 でも、「太田裕美の存在」を知ってすぐにときめいたわけじゃありません。もちろん、スターだったから好きになったわけでもありません。


     


 歌にはなじみがありました。
 大ヒットした「木綿のハンカチーフ」は、ぼくの青春時代もよくラジオから流れていましたから。
 それに、自分が9月生まれということもあって、彼女の「9月の雨」という曲が大好きだったんです。


 彼女の歌は、その歌詞が胸に響きます。
 青春の弱さ、せつなさに打ちのめされそうになりながらも、最後は「希望」に勇気づけられる、そんな物語が秘められている気がするからなのです。
 これは、青春時代ならでは、の甘酸っぱい感性なのかもしれませんね。


     


故郷に恋人を残して都会に出てきた若者。彼は次第に都会の生活に染まり、恋人のことを忘れてゆきます。純粋に若者を待ち続けていた恋人は、最後にひとつだけお願いをします。
 ♪ ~あなた 最後のわがまま 贈り物をねだるわ 涙拭く木綿のハンカチーフください 「木綿のハンカチーフ」
 ・・・涙を拭いて気持ちに整理をつけ、再び前を向いて歩もうとしているんでしょうね。


田舎から都会に出てきた女の子は、最初に赤いハイヒールを買って、希望に満ちた生活を夢見るけれど、きびしい現実に次第に心がすさんでゆきます。でも、純朴な彼女を愛し、そっと見守っていた「彼」は最後にこう言うのです。
 ♪ ~そばかすお嬢さん ぼくと帰ろう 緑の草原裸足になろうよ 曲がりくねったふたりの愛も 幸せそれでつかめるだろう 「赤いハイヒール」


なぜこんないいコが、とりたてて取り柄のあるわけでもない「ぼく」なんかを好きになってくれたんだろう・・・。ぼくと一緒にいるためによけいな苦労をさせてしまっているのに。
 ♪ ~陽のあたる人かげる人 人間なんてふた通り はにかみやさん 面食いなのに もてないぼくをなぜ選んだの しあわせ未満 ふたり春を探すんだね 「しあわせ未満」
 ・・・こんな気持ちになったこと、ありました。ぼくにはもったいないような、いいコでした。。。


愛しいあの人に会いにゆく「わたし」。けれど失恋魔術師が現れて、ふたりの恋路を邪魔しようとする。愛なんて虚ろな夢だよ、彼は来ないよ、と。
 ♪ ~遅れたね、ごめんごめんと 息をつき駆け寄るあなた 「お嬢さん 私の負けさ また今度迎えに来るよ」 いえいえ死ぬまで会わないわ おあいにくさま恋は続くの 「失恋魔術師」
 ・・・もしかすると、自分の心にひそむ脆さ弱さが「失恋魔術師」なのかもしれません。
 「しあわせ未満」のアンサー・ソングとして歌詞を読むと、この曲に出てくる彼女をもっと応援したくなるのです。


  


 好きな曲はまだほかにもあります。
 近年は子供ための歌を歌うなど、積極的に活動を続けているようで、いちファンとしては嬉しいですね。


 太田裕美さんの、舌足らずで透明感のある声は、心の奥にしまってある懐かしさ、せつなさ、ほろ苦さ、甘酸っぱさをかき立ててくれます。
 ぼくにとっては、青春時代を思い出させてくれる人、そして自分の青春を代弁してくれる人のひとりなんです。
 


     



コメント (6)
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