ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

キャロル・キング (Carole King)

2006年04月08日 | ミュージシャン
♪お気に入りアーティスト46(海外篇その33)


 ロック一辺倒だった頃には分からなかったキャロル・キングの音楽の味が年々心地よく感じられる。


 10代~20代の頃は、シンガー・ソング・ライターの存在に対してはどちらかといえば地味な印象しか持てなかった。派手なギター・ソロとか強烈なビート、あるいはメンバーのスター性や演奏力などを前面に押し出してくるロック・バンドの方が華やかだったし、直情的で、なにより単純にカッコよく見えたからだ。


 ミュージシャンの個性とか、いろんな種類の音楽の味の違いなどが分かってくるようになると、「渋さ」や「濃さ」、「苦さ」、「暗さ」なども音楽には欠かせない味わいであることに気づくようになり、またそれらと「甘さ」や「親しみやすさ」をブレンドすることで、音楽というものはいっそうさまざまな表情を見せてくれる、ということをも知るようになった。そしてこういうことが感じられるようになった時が、カーペンターズとか、カーリー・サイモンとか、キャロル・キングなどの音楽の楽しさを再認識できるようになった時でもあった。


     


 いったんキャロル・キングの音楽の魅力に取り付かれると、それはもう離れ難いものになる。
 穏やかで温もりのあるソウルフルな歌声。自然なグルーヴ感。それらに加えて、自身の私的なできごとや想いをつづった歌詞が彼女の音楽をより身近に感じさせてくれる。
 シンプルだが練り込んだ感じのするアレンジ、味のあるバックの演奏もいい感じで、とても好きだ。
 そしてなにより素晴らしいのが、キャロルの作曲能力である。
 彼女の書く曲にはアメリカン・ポップスのエッセンスがぎっしりと詰まっている、といっていいと思う。
 キャロルの音楽のルーツは、やはりジャズやソウルやゴスペルなどの黒人音楽だろう。そしてそれらを極めて自然に咀嚼し、そのうえでラテンやポップスやファンクなど、さまざまな味付けをしながらも、流行に流されることなく「キャロル・キングの作風」をしっかりと保っている。もちろん「自身の個性や作風を保つ」ことはなにもキャロルに限ったことではなくて、偉大なミュージシャンは皆そうだろうと思う。


 キャロル・キングは、16歳で結婚した最初の夫君、ジェリー・ゴフィンとの共作で、1960年から63年頃にかけて20曲あまりの全米トップ40を世に送り出している。「ロコモーション」(リトル・エヴァ)、「アップ・オン・ザ・ルーフ」(ドリフターズ)、「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ」(シュレルズ)などが有名だろう。
 その後、ビートルズ旋風によってビート・バンドがポピュラー音楽シーンの主流となったが、キャロルはこれに流されることなく自身の音楽を追求し続け、1970年代に入ると、あの名作「つづれおり」を発表、ジェームス・テイラーやローラ・ニーロなどと並んでシンガー・ソング・ライターの草分け的存在となる。
 1970年11月に発表したアルバム「つづれおり」は、302週(約5年10ヶ月!)にわたってチャート・イン、15週連続全米1位の大ヒットとなり、現在までに実に2300万枚のセールスを記録している。
 レッド・ツェッペリンは、名盤「4」のみ全米1位を逃しているが、それはキャロルの「つづれおり」をどうしても抜くことができなかったからだという。
 キャロルはこのアルバムの大ヒットで、1971年のグラミー賞を4部門で獲得している。


     


 キャロルが楽曲を提供したのは、ゴフィンとの共作も含め、リトル・エヴァ、ドリフターズ、ライチャス・ブラザーズ、エヴァリー・ブラザーズ、シフォンズ、シュレルズ、モンキーズ、ブラッド・スウェット&ティアーズなど多岐にわたっており、そのほかカーペンターズやジェームス・テイラー、アレサ・フランクリン、ダニー・ハサウェイ、ロバータ・フラック、ロッド・スチュワート、最近ではデビー・ギブソンなどもキャロルの曲を取り上げている。いかにキャロルの曲が幅広く受け入れられていたか、これだけでも分かろうというものだ。


 キャロルの曲を聴いているとなごむ。ホッとする感じだ。そして軽やかさが心地よい。また、バラードではしみじみと泣ける気がする。
 ぼくの好きなキャロル・キングの曲は、
 「ナチュラル・ウーマン」「ソー・ファー・アウェイ」「アップ・オン・ザ・ルーフ」「アイ・フィール・ジ・アース・ムーヴ」「小さな愛の願い」「ブラザー、ブラザー」「イッツ・トゥー・レイト」、そして「きみの友だち」などである。


 キャロルは1980年代以降はやや低迷していた(それでも発表した作品には佳曲が多いと思う)が、1990年にはロックの殿堂入りを果たしている。
 1999年には映画「ユー・ガット・メール」の主題歌「エニワン・アット・オール」がヒット。2002年には8年ぶりにアルバム(「ラヴ・メイクス・ザ・ワールド」)も発表している。
 今年の2月で64歳になったキャロルだが、これからもまだ素敵な曲を歌い続けてほしいと思う。できれば来日なんかもしてくれたりすると嬉しいのだが。


     


 そういえばキャロルって、角度によればちょっと「大竹しのぶ」っぽく見えたりするね。シンガーとして活動している娘さんたち(ルイーズ・ゴフィンとシェリー・ゴフィン)にもキャロルの面影が色濃く出ている。
 ところで、ニール・セダカの大ヒット曲の「オー・キャロル」、これはキャロル・キングのことを歌ったものだとは知らなかった。ふたりは高校時代にドゥー・ワップ・グループをやっていたことが縁で、付き合っていたことがあったんだそうである。


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コメント (6)
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