ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

ステージではみなファミリー

2005年08月11日 | 価値観

                                        ♪先週末に手に入れたシカゴの楽譜。



 十人十色とか言いまして、

 人にはそれぞれの考え方があるものですね。

 とくに、ミュージシャンなんて生き物は
 
 自己主張が人一倍強かったりするものですから、

 いったん反発しあうと収拾がつかなくなったり。

   



 例えば1+1=2、という類の、答えがひとつしかない問題なら

 相手の間違いを指摘することも可能ですが、

 例えば、『悲しい時ってどんな時?』 あるいは『リンゴってどんなもの?』などという、
 
 答えがいくつも存在する問題の場合は、

 明らかに間違いでない限り、どんな答えを聞いても、

 「ああそうか、そういう考え方もあるんだな

 というふうに考えることにしています。

 

 ぼくは、基本的には、初対面の人でも、

 「ステージに上がればファミリー」

 だと思っています。

 ファミリーみんなで紙切れ(譜面)に命を吹き込み、

 生きた音楽を作っていくものだ、と考えているわけです。

 これは「個人的に仲良し」ってことじゃないんです。

 話すと楽しい人でも、ステージでこういう姿勢がない人は、

 一緒に演奏していてもつらい時がしばしばあります。

 逆に、人見知り同士(笑)であっても、

 その人の意識や姿勢から生まれるステージ上の音で、

 わかり合えたり認め合ったりできるんですよね。

 


 これは理想論かもしれません。

 でも理想のないところには道もつかないものなんですね。

 




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大阪、8月7日

2005年08月08日 | 自分のライブで

♪演奏前なのに早くも打ち上げっぽい昼ごはん。真ん中の帽子のお方は、海の家でヤキイカを売っている人、ではありません。



 土曜日午後9時過ぎにその夜のお店に入り、日曜日午前3時前に帰宅。支度してすこーしウトウトしたのち、朝5時に出発。7時20分頃大阪市着。
 三々五々とメンバーが集まり、11時過ぎからサウンドチェック。その後、打ち上げによく似た(ワハハ)昼食。13時30分過ぎからリハーサル。
 19時20分本番スタート。22時過ぎから打ち上げ。午前3時半くらいから仮眠をとり、朝9時前に大阪発、昼12時少し前に帰宅。フー、濃い36時間でした


 音を通じてお互いを認め合うことができたり、
 一緒に音を出すたびに徐々に結びつきが固くなっていくのが実感できたり、
 顔を合わせるごとにどんどん仲良くなっていったり、
 新しい出会いに嬉しい思いをしたり。


 昨日は「もし良ければ自分のユニットでベース弾いてください」なんてすごくすごく嬉しいオファーがあったり
 なんかここんとこ大阪に行くたびに充実して帰って来ることができているのです。
 そして彼らのお陰で若くいられます。
 みなさんどうもありがとう!




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ジャズ・アネクドーツ

2005年08月05日 | 見る聴く感じるその他


 つい先日本屋さんを覗いてみたら、出てましたねー、この本の文庫版が。
 「アネクドーツ」とは、こぼれ話とか逸話といった意味です。タイトル通りこの本は、チャーリー・パーカーやサッチモら、偉大なジャズマンの残したジョークや逸話が満載です。


 ぼくはハード・カバーのものを数年前に買って、あまりの楽しさに一晩で読み終えてしまっていたのですが。
 これはやっぱりぼくがジャズ好きだからなのかなあ。
 あまりジャズに詳しくなくても、アメリカ文化を違った視点から眺めてみるつもりで読むと、充分楽しめると思うんだけど。
 和田誠氏の挿画もいつもながらとっても味がありますよ!


 著者のビル・クロウは、実はジャズ・ベーシストです。
 ミュージシャンでありながら、主にジャズ関係の文筆家としても知られていて、ほかにも「さよならバードランド」というエッセイを発表しています。
 ユーモアとペーソスが同居した軽妙な語り口は親しみやすく、品のある良質のエッセイと言えるでしょう。ただの暴露本とは明らかに一線を画しています。
 訳者は、日本の文学界を代表するひとり、村上春樹。挿画の和田誠ともどもたいへんなジャズ通として知られていますね。


     
     ビル・クロウ


 この本の中に出てくる話の中で、好きな小話をひとつ。


 古いジョークに
 「ニューヨークの路上で老婦人がミュージシャンに『すみません、カーネギー・ホールへはどうやったら行けるのですか?』と尋ねた。ミュージシャンは答えた。『練習あるのみ!』 と。」
 というのがある。
 1950年代のある日、ニューヨークのミュージシャンが集まるある店の前で、真面目そうな若い女性が、ミュージシャンのひとりに尋ねた。
 「すみません、カーネギー・ホールへはどうやって行けばいいのでしょう?」
 少なくとも20人以上がそこに立っていたが、全員がそのジョークを知っていた。
 そしてその全員が嬉しそうに声をそろえて答えた。


       「練習あるのみ!」


 「全員が」、「嬉しそうに」、「声をそろえて」。 
 これがいいんですよ。


 ミュージシャンって、洋の東西を問わず、バカ騒ぎとジョークが好きなんですね! 


     



◆ジャズ・アネクドーツ/Jazz Anecdotes
  ■著者
    ビル・クロウ/Bill Crow
  ■訳者
    村上春樹
  ■発行
    新潮社(2000年)




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「老い」は悪いことなのか

2005年08月04日 | 価値観

 ぼくはテレビはほとんど見ません。
 テレビより、本を読んでるほうが好きです。
 でも、ニュースはわりと見るようにはしています。
 

 今日夕方のニュースで。


 元有名野球チーム監督を夫君にもつ、(自称か他称かわからんけど)タレントのN・Sさん。
 辛口の意見がもてはやされていた彼女は、一時テレビにでまくってましたが、いろんなトラブルのためいつしか顔を見せなくなっておりました。


 ところが、今夕ニュースのスポーツ関連コーナーに彼女が取り上げられている。
 なんでも、200万円かけて顔のシワやたるみを取る美容整形を行うんだと。
 それをわざわざニュースで取り上げるのもどうかと思うが、思わず「ん?」と首を傾げざるを得なかったのは彼女のこのセリフでした。


 「(老いた顔は)人に不快感を与えるでしょ?」


 こういう価値観を持っているから、ぼくはこの人の下品で無遠慮な意見(ぼくは、この人の意見が『辛口』だなんて上等なものだと思ったことはありません)を以前からまったく信用していないんですね。


 「老い」は悪いことなのか?
 「老い」は迷惑なことなのか?
 「老い」は他人に不快感を与えているのか?


 「『老い』を不快と感じる心」が生じていることのほうが問題なんじゃない?
 「老い」は、きれいとか醜いという価値観で測るものじゃないですからね。
 

 彼女が何百万もかけて美容整形するのは彼女の自由です。
 「老い」を醜いと思うのも彼女の自由。
 でも「辛口評論家」を気取っている彼女が、公の場で中味のない言葉を(毒舌だと勘違いして)吐き散らしていることこそ、不快です。


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追記(2020.7.18)
 
この記事を書いた当時はこのように思っていました。
これ関するぼくの価値観は変わってはいませんが、いまでは「いろんな価値観があっていいんだ」くらいに思えるようになりました。
自分がN・Sさんに同意するかどうかはまた別の話だし、同意できなくても否定することはないですね。
ぼくは、自分の物差しで正邪を決めて、裁いているだけでした。
どう考えようがそれは「N・Sさんの自由」だという視点がこの頃のぼくにはなかったなあ。
N・Sさんも、そのご主人も今では故人となりました。
謹んでおふたりのご冥福をお祈りいたします。



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ならず者 (Desperado)

2005年08月03日 | 名曲

 「Desperado(デスペラード)」とは、「(西部劇に出て来るような)無法者」という意味です。
 ドン・ヘンリーとグレン・フライの共作で、言わずと知れたイーグルスの名作中の名作です。リンダ・ロンシュタットやカーペンターズなども取り上げていますね。


 歌詞を書いたのはドン・ヘンリー。書きあげたのは26歳の時でした。
 内容は、「人生の転換期に差しかかっている友人に宛てた忠告」という体裁をとっていて、いま一度「生き方」について向き合ってみよう、と語りかけています。
 

     


 「イーグルスの代表曲」という枠にとどまらない、アメリカのポピュラーソング史に残る素晴らしいバラードだと思います。
 ピアノだけをバックに淡々と始まり、ホロ苦さと男の色気で満たされてゆくこの曲、ドン・ヘンリーの艶やかでややハスキーな声が、たまらなく魅力的です。


     


 メロディの良さはもちろんですが、歌詞がこの曲にさらなる深みを与えています。
 もともと自分たちの価値観を歌詞に織り込むことの多いイーグルスの曲ですが、とくにこの曲に現れている人生観は、青春時代を過ぎたぼくに重く優しくのしかかっています。


 歌詞が忠告している「ならず者」はぼくであり、あなたたちなのかもしれません。
 たしかに今のぼくは、ただ年を重ねただけで、まだまだ危なっかしいのです。
 しかし、今は雨なのかもしれないけれど、
 ぼくらの遥か上には、そう、虹が輝いているんですね。
 


     


[歌 詞]
[大 意]
君はまだ気づかないのか 長い間危ない目に遭ってきたのに
君は頑固者だ 君なりの理由があるのはわかるけれど
君が楽しんでいるその生き方が 君を傷つけているのだ

ダイヤのクイーンを引いてはならない
彼女は君を打ちのめすことができるのだ
君の最良の手はハートのクイーンなのだよ
私から見れば君のテーブルには 随分といい札があるように思えるのに
君はひたすら手の届かない札ばかり 追い求めている

ならず者 もう若さを取り戻せはしない
痛みと飢えとが 君を故郷へと向かわせる
自由、自由だって? そんなのはただのお話だ
君は この世を一人ぼっちで歩いて行く囚人なのだ

冬は足が凍えないかい? 
雪も降らず 太陽も照らず 昼と夜との区別もつかない
自分の立場もわからず
感情まで失うなんてバカげたことじゃないか

ならず者 君はまだ気づかないのか
危険を追いかけるのはもうやめにしよう
雨が降っているかもしれないけれど 君の遥か上には虹が輝いている
誰かの愛を受け入れるのだ 手遅れにならないうちに




ならず者Desperado
  ■歌・演奏
    イーグルス/Eagles
  ■発表
    1973年4月17日
  ■収録アルバム
    ならず者/Desperado (1973年)
  ■作詞・作曲
    ドン・ヘンリー、グレン・フライ/Don Henley, Glenn Frey
  ■プロデュース
    グリン・ジョンズ/Glyn Johns
  ■録音メンバー
   ☆イーグルス/Eagles
    グレン・フライ/Glenn Frey (guitar, vocal)
    バーニー・リードン/Bernie Leadon (guitar, vocal)
    ランディ・マイズナー/Randy Meisner (bass, vocal)
    ドン・ヘンリー/Don Henley (drums, vocal)


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ジェフ・ポーカロ (Jeff Porcaro)

2005年08月02日 | ミュージシャン


 話題にするには少し早いかもしれませんが、8月5日は、ジェフ・ポーカロ(Jeffrey Thomas Porcaro)が亡くなった日です。
 

     


 ジェフは三人兄弟です。
 長兄がジェフ、次男はベーシストでのちTOTOにも加わるマイク、末弟はTOTOのオリジナル・メンバーでキーボーディストのスティーヴです。 
 ポーカロ三兄弟の祖父も父もドラマーで、とくに父のジョー・ポーカロは西海岸でも著名なジャズ・ドラマーでした。
 その影響でジェフも子供の頃からパーカッショニストとしての練習を重ね、やがては米西海岸を代表する名セッション・ドラマーとして名を馳せるまでになります。
 飛躍的に日本で名が知られるようになったのは、やはりTOTOのメンバーとして活躍するようになってからでしょう。


     
     TOTO 「宇宙の騎士」


       
     TOTO 「Ⅳ ~聖なる剣」


 ぼくも、TOTOでジェフの名を知りましたが、実は、彼のプレイはすでに、ボズ・スキャッグスや、スティーリー・ダンのアルバムなどで耳に馴染んでいたんですね。


     
     スティーリー・ダン 「プレッツェル・ロジック」


     
     ボズ・スキャッグス 「シルク・ディグリーズ」


 そのほか、トミー・ボーリン、スタンリー・クラーク、ジョージ・ベンソン、ジャクソン・ブラウン、リー・リトナー、ケニー・ロギンスなどなどなど、錚々たる面々の、たいへんな数のセッションをこなしています。


 テクニック、センス、音色とも申し分のない素晴らしいドラマーです。
 あまり泥臭さを感じない、クリアーでスマートな印象が強いのですが、曲を最も生かすことのできる、ツボを心得たドラミングは、歌心にあふれていると言えるのではないでしょうか。
 反面、「ベイクド・ポテト」のセッションで聴かれるような、パワフルで凄まじいばかりのドラミングには、ただただ感嘆のため息が出るばかりです。


     


 ジェフは、正確無比なタイム・キープ能力と、バンドをグルーブさせ続ける強力なリズム感で、多くの音楽ファンを魅了しました。
 とくにTOTOの大ヒット曲として知られる「ロザーナ」で絶賛されている「ハーフ・タイム・シャッフル」は、ジェフの代名詞として語り継がれてゆくであろうリズム・パターンです。

 
 ぼくが理想とするドラマーのひとりである名ドラマー、ジェフ・ポーカロは、1992年8月5日、自宅の庭で薬剤を散布中に突然倒れ、そのまま帰らぬ人となりました。
 死因は、薬剤アレルギーによる心臓マヒだったそうです。まだ38歳でした。         
 

     




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