つい先日本屋さんを覗いてみたら、出てましたねー、この本の文庫版が。
「アネクドーツ」とは、こぼれ話とか逸話といった意味です。タイトル通りこの本は、チャーリー・パーカーやサッチモら、偉大なジャズマンの残したジョークや逸話が満載です。
ぼくはハード・カバーのものを数年前に買って、あまりの楽しさに一晩で読み終えてしまっていたのですが。
これはやっぱりぼくがジャズ好きだからなのかなあ。
あまりジャズに詳しくなくても、アメリカ文化を違った視点から眺めてみるつもりで読むと、充分楽しめると思うんだけど。
和田誠氏の挿画もいつもながらとっても味がありますよ!
著者のビル・クロウは、実はジャズ・ベーシストです。
ミュージシャンでありながら、主にジャズ関係の文筆家としても知られていて、ほかにも「さよならバードランド」というエッセイを発表しています。
ユーモアとペーソスが同居した軽妙な語り口は親しみやすく、品のある良質のエッセイと言えるでしょう。ただの暴露本とは明らかに一線を画しています。
訳者は、日本の文学界を代表するひとり、村上春樹。挿画の和田誠ともどもたいへんなジャズ通として知られていますね。
ビル・クロウ
この本の中に出てくる話の中で、好きな小話をひとつ。
古いジョークに
「ニューヨークの路上で老婦人がミュージシャンに『すみません、カーネギー・ホールへはどうやったら行けるのですか?』と尋ねた。ミュージシャンは答えた。『練習あるのみ!』 と。」
というのがある。
1950年代のある日、ニューヨークのミュージシャンが集まるある店の前で、真面目そうな若い女性が、ミュージシャンのひとりに尋ねた。
「すみません、カーネギー・ホールへはどうやって行けばいいのでしょう?」
少なくとも20人以上がそこに立っていたが、全員がそのジョークを知っていた。
そしてその全員が嬉しそうに声をそろえて答えた。
「練習あるのみ!」
「全員が」、「嬉しそうに」、「声をそろえて」。
これがいいんですよ。
ミュージシャンって、洋の東西を問わず、バカ騒ぎとジョークが好きなんですね!
◆ジャズ・アネクドーツ/Jazz Anecdotes
■著者
ビル・クロウ/Bill Crow
■訳者
村上春樹
■発行
新潮社(2000年)