三中の例ではないですが、あるとき、中学生をもつお母さんが、クラス担任の先生から次のように言われました。
「お子さんは、学校ではひとりでいることが多いです」と。
友だちがいないのかしら。友だち関係がうまくいっていないのかも。いじめられているのかしら・・・・・。
心配になり、いろいろ考えたお母さんは、子どもに問い詰めました。
子どもは、「一人でいるほうが落ち着くから。でも、いつも一人でないし、休み時間には、気が向けば友だちと遊んでいるよ。」
この場合、一人でいることを、親は問題だと思っていても、子どもは少しも問題であるとは思っていません。
このエピソードは、子どもの「問題」について深く考えさせてくれます。
一般的に、思春期には子どもにかかわるたくさんの問題が起こります。
勉強をしない。中学卒業後の進路のことを考えない。友だち関係でもめごとががある。いじめにかかわっている。学校へ行こうとしない。おしゃれやファッションに興味がある。朝、自分で起きれない・・・・。子どもに関する問題はいろいろと起こります。
このような問題に接したとき、「子どもの問題というのは、おとなが問題だと思うから問題になる」ということを意識しておきたいものです。
上の例の場合、お母さんは、学校で子どもが一人でいることを問題と思っています。しかし子どもは気にしていません。
この場合、子どもは問題と思っていませんから、「もっとクラスの多くのこといっしょに行動しなさい」とお母さんが言っても、うまくいきません。
子どもが思春期のときの「問題」は、親の考えるエリアから外れたときにおこります。(もちろん学校の規則や法律から外れた場合の問題は別です。)
つまり、親の思う「常識」・「普通」から外れたときに、「問題」だと見なすのです。
そしてそのエリアつまり「常識」・「普通」は、親によってちがいます。
テストで平均点しかとれないのは問題だ」と思う人もいれば「平均点がとれているならそれでいい」と思う人もいます。
「中学生がネイルアートに興味をもつのは早すぎる」と思う人もいれば、「年頃なんだから、ネイルを飾りたい気持ちは無理もない」という人もいます。
ですから、親が子どものことで問題であると感じたときには、次のように自問自答してみます。
「この問題は、本当は誰にとって問題なのだろうか」と考えてみます。思春期の子どもを受容する基本である「今のあなたで大丈夫」(=「ありのままで」)という態度で、子どもと接するのであれば、変わるべきなのは、問題と思われている人ではなく、問題だと思っている人であることも多いのです。
つまり、子育てに関係した問題というのは、「何が起きているか」ではなく、「起きていることをどのようにとらえるか」がポイントになります。
もし、子どもが「起こっていること」に何とも思っていないのなら、変わることを求めすぎない方がいいでしょう。
逆に、子どもが「これではいけない」と思えば、自ら変わろうとします。その気持ちの変化は、親よりも友だちからのひとことがきっかけになることもよくあることです。
そこで親は、子どもの成長力を信じて、見守ったり、サポートするのです。それが思春期の子を持つ親の役割なのです。