箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

自発性は見返りを求めない

2020年02月11日 07時33分00秒 | 教育・子育てあれこれ









私が中学1年生の学級担任をしていた頃の話です。

教室に観葉植物の鉢植えを置いていました。

担任している一人の女子生徒が、終礼が終わると横に置いていたじょうろで水を汲みにいき、観葉植物に水やりをしてくれていました。

彼女は、私が頼んだのでもなく、誰かから言われたのでなく、自発的に毎日水やりをしてくれていました。

聞くと、「家でも鉢植えに水をやっているから。先生、ちょっとずつだけど大きくなっているよ」と言っていました。

わたしは、彼女に「ありがとう」とだけ言いました。

こういう場面に出くわすと、学校の先生はこのことをとりあげて、クラスの生徒に紹介したり、発表したり、ほめたりすることがあります。

しかし、ここはよく状況を見きわめなければなりません。

彼女は、自発的に始めたのです。植物が大きくなるのが楽しみだったのです。好きだからやっていたのです。

もし、クラスに紹介すれば、好きだからやっている自分の行為を、なぜクラス全員の前で話されなくてはいけないのか。ほめてもらうためにやっているのではない。

この行為を続けると、ほめてもらうためにやっていることと、まわりから受け取られてしまう。こう思うと、水やりをやめてしまうことになりかねません。

じっさい、思春期の子どもの心理は、このように感じやすく、傷つきやすいこともあるのです。

「いいことは、なんでも、ほかの生徒に知らせて知ってもらわないと」と、大人が勝手に判断して、情報を拡散していくのは、子どもの心に土足で脚を踏み入れていることになります。

このケースでは、大人は「ありがとう。きっと植物も喜んでいると思うよ」だけでいいのです。

子ども本人が自分のやる気で自発的に取り組むことに、ふつう「見返り」など求めません。

ほめてほしい、評価してほしいという気持ちは持っていないのです。ただ、そのやる気で、まわりの人が喜んでいることが、本人に伝われば十分なのです。



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