キッチン・トランスレーターつれづれ日記

つれづれなるままに日々のよしなしごとを綴ります。本、風景や花や料理、愛犬の写真などをご紹介。

ぽこりぽこり? ぼこりぼこり?

2011-03-06 15:01:51 | 
日本語ぽこりぽこり
アーサー・ビナード
小学館


    世の中には、日本のネイティブじゃないのに、日本人より正しい日本を綺麗に使い、し

    かも伝統文化にも詳しい外人(もはや外とはいえないほど内を知っている!)がいます。

    パックンマックンのパックンとか、デーブ・スペクターとか。でもこの『日本語ぽこり

    ぽこり』のビナードさん、最高!言葉に対する特殊な感覚を持っているのでしょうか。

    イタリア語やタミル語まで、ごく短時間で会得したようですから。

    この題名の"ぽこりぽこり"は夏目漱石の句「吹井戸やぽこりぽこりと真桑瓜」から来てい

    ます。こんな句全く知らなかった。というより平均的な日本人で、漱石が面白い俳句をた

    くさん作っているのを知っている人がどれほどいるでしょうか。その「ぽこりぽこり」で

    すが別の版では「ぼこりぼこり」となっているそうです。濁音と半濁音とでは、受け取る

    感じが全く違う。ビナードさんはその違いを感じ取って、元々漱石が一体どちらを書いた

    のか知りたがっていますが、自筆稿が残っていないので真相は闇の中のようです。こうい

    うオノマトペ(擬音語・擬態語)は日本語には豊富だそうで、それだけいっそう外から見た

    人の方が興味を引かれるのかもしれませんが。日本語というか言葉の面白さを再認識さ

    せてくれる一文でした。

             

    この立石寺、通称山寺で読まれた芭蕉の名句「閑かさや岩にしみ入る蝉の声」について

    も面白い一文がありました。池袋駅に山寺の写真が張ってあって、そこに芭蕉の句の英

    訳が印刷されていたそうです。how silent! the cicada's voice soaks into the rocks.

    このsilentがどうも変。無声とか沈黙とか言う意味合いで、蝉がウヮーンと鳴いているの

    にこの語は使えない。「人間の喧騒から離れた」静寂という意味の言葉でないと。むし

    ろcalmかstillかpeacefulか。学校で勉強した外国語でそういう語感を分かろうとするの

    は難しいですね。それだけに、おとなになってから日本語を習得したという、このビナ

    ードさんの凄さが分かるし、言葉をそれと同じイメージを持った他の国の言葉に翻訳す

    るのは何と難しいことだろうと思います。私など日本語自体の解釈の段階でつまづき

    ます。一体ここで使わている「閑か」は「静か」と違うのでしょうか?漢字も難しい!     
コメント
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