この頃はまっているアーサー・ビナードのエッセイ『日々の非常口』を読んでいて
双子の話に興味をそそられました。彼は幼い時から近所に住む双子の兄弟と仲良
くしていたけれど、日本に来て結婚し、奥さんに「あの兄弟のどっちがお兄さんな
の?」と聞かれるまで、双子に兄弟があるなんて意識したこともなかったそうです。
これはとても良く分かります。英語やドイツ語の文章を翻訳していて、brotherや
sisterが出てくるといつも困ります。兄か弟か姉か妹か分からないと日本語にでき
ないんです。でも原文にelderやyoungerが付いていることはほとんどありません。
兄か弟か、文章のどこかにヒントがないか探すこともあります。日本はまだまだ昔か
らの慣習で長男意識が強いような気がしますが、考えて見れば、先に生まれたから
って何が偉いんだってことですよね。その辺はやっぱり欧米の方が気楽な感じです。
ところが上の『海のはてまで連れてって』(原題Sea legs )では、双子の兄か弟かが
大問題なんです。このいたずらっ子の双子、父がスチュワードとして乗船している
豪華客船にこっそり乗り込むんです、一方が自分が兄だと主張し、何事にも主導権
を握ろうとします。でも兄から命令されっぱなしの弟のほうが実は賢くて、挙句の
果てに弟だと思っていたほうが、先にこの世に生まれてきたのだと分かります。ま
あ結局仲良し兄弟で、密航していることが何度もバレそうになりながらも、最後に
は海賊を捕まえて、めでたしめでたしとなります。結構えげつない悪戯もしでかす
この兄弟、憎めないんですよね。
シアラーの作品はたいてい男の子が主人公です。もっとシリアスでファンタステック、
時に気味の悪い作品が多く、そちらの方が人気がありますが、言葉遊びの多い、
単純にアハハと笑えるSea legs! 大好きです。