ローン・ボーイ | |
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文芸社 |
これは昨年私が翻訳出版した児童書。ゲーリー・ポールセンというアメリカ
の子供向け冒険小説人気作家の、ちょっと毛色の変わったお話です。
主人公の少年がお誕生日におばあちゃんからもらった芝刈り機で、芝を刈る
アルバイトを始めます。それがそれがどんどん大掛かりになり、大勢人を雇
う程の一大企業になっていきます。その上、株式市場にまで進出して、あれ
よあれよと言う間に大金持ちになるのですが。何しろまだ中学生。フェイスブ
ブックのザッカーバーグ氏のように、企業を大きくしたいという野心もなく、天
才的な頭脳や複雑な性格を持っているわけでもなく、とても素直に誠実に一
夏を働き通す、いわば資本主義のお伽話とでも言えるユニークな児童書。
たわいもない話で、結構笑えます。こんな時期には肩がこらなくていいかも。
日本では家の前面に芝生が広がっている家だと、ちょっとお金持ちという
感じですが、欧米では割と普通の家の前庭は芝生のようです。アーサー・
ビナードの『出世ミミズ』の中に「ままならぬ芝生」というのがあって、彼の
家の地域では前庭に芝生を植えないといけない規則だったとのこと。いや
いや芝刈りをしていると、隣の人にも頼まれてお駄賃をもらいます。アメリ
カでは子供の手ごろなアルバイトなんでしょうね。そこからこの奇想天外
な資本主義御伽噺を創り出したポールセンさん、なかなかのものです。こ
の写真は去年ホームステイしたオーストリアのハイグル家の庭。
これはドナウ川のほとりのメルク修道院の庭。ヘンデルの『オンブラ・
マイ・フ』でも聞こえてきそうな格調高い雰囲気の庭でした。