子どもに語る 日本の昔話〈1〉 | |
稲田 和子,筒井 悦子 | |
こぐま社 |
子どもに語る日本の昔話〈2〉 | |
稲田 和子,筒井 悦子 | |
こぐま社 |
子どもに語る 日本の昔話〈3〉 | |
稲田 和子,筒井 悦子 | |
こぐま社 |
「昔むかしのこったい。ある所に、貧乏なおじいさんがおったと、、、」
このおじいさん、薪を売って生計を立てていたが、ある日薪が一把も売れな
かった。そこで帰り道「竜神さまにさしあげますだ」と全部川に投げ込んだ。
喜んだ竜神さまは、なんでも願いをかなえてくれる「はなたれ小僧さま」と
いう子どもをさずけてくれた。おじいさんが願い事を言うと、小僧さまが
「シューン」と洟をかむ。するとどんな願いもかなって、おじいさんはたち
まち大金持ちになった。そのうち、どこへでもついてくる汚いはなたれ小僧
さまが厭わしくなったおじいさんは、「もう何も欲しいものがなくなったから
竜神さまの所へ帰ってくれ」と言った。はなたれ小僧さまは悲しそうな顔を
して家を出ていった。そして門の所で「ズルン」と洟をすする音がしたかと思
うと、家から何から全部一瞬で消えて、おじいさんは元のあばら家に一人
ですわっていたんだと。
これは『はなたれ小僧さま』という熊本県の昔話です。上の『子どもに
語る日本の昔話』の3に入っています。桃太郎や花咲かじいや、おなじみの
お話はもちろん、日本各地にはほんとに様々な面白い昔話があるのだなあと
感心させられる三冊です。適度に方言を交えたこなれた文章で、読み聞かせ
に最適です。数年前「素ばなし」の講座で、この本から『鳥のみ爺』という話
を選んで発表しました。文章を丸暗記して語るのが素ばなしですが、これが
なかなか大変。暗記というのは難しいものです。セリフの多い俳優さんなん
か偉いものだと思います。その後唯一覚えたのがこの『はなたれ小僧さま』
です。打ち出の小槌でお宝を出すとか、お殿様からご褒美をもらうとか、い
ろいろあるうちで、洟をすすったり、かんだりしてお宝を出したりひっこめ
たりするというのがユニークな笑える昔話です。漫画日本昔ばなしでも、市
原悦子さんと熊倉一雄さんの名調子で残っています。もう一度覚え直して、
今度の小学校の読み聞かせで、語ろうかと思っています。市原悦子さんと
いう訳には行きませんが。