太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ 三好達治「雪」
2月11日合掌造りの里、五箇山に泊まった夜、しんしんと雪が降り積もり、
朝には村は雪にすっぽり覆われていました。こんなに白一色の世界を見
たのは多分初めての経験です。今年は2メートルほど積もっているとのこと、
それでも、去年は3メートル以上積もったので、まだ今年のほうがましだ
と、合掌造りのお宿のご主人が言いました。住人の苦労が忍ばれます。
スタッドレス・タイヤを履いていてもなんだか怖いような雪道で、坂を登り
きれす立ち往生している車もいました。
合掌造りの集落としては白川郷が有名ですが、そこから北へ30キロ余りの
五箇山は、規模は小さいけれど、より昔のままの素朴な合掌造りの集落です。
同じ合掌造りの集落でも、岐阜県の白川郷は岐阜高山の文化圏、富山県の
五箇山は越中、加賀の文化圏だそうで、言葉や風習も少しずつ違うとのこと。
五箇山には平家の落人伝説もあり、「麦屋節」というとてもすばらしい民謡
と舞踊がのこっています。
でも、五箇山といえば「こきりこ節」。七寸五分の竹(小切子)やささらという
木製の楽器で囃しながら歌うとても古い民謡です。小学校の音楽の教科書
にも載っているので案外誰でも知っています。哀調を帯びているけれど、そ
れでいて、活気のある曲調が胸に沁みます。その夜宿には9人泊まっていま
したが、「ささら」を上手く鳴らせたのは、日本人には一人もいないで、二年
前に英語教師としてスコットランドからやって来たレイラさんだけだったのが
なんだか笑えました。