奇才ヘンリー・シュガーの物語 (ロアルド・ダールコレクション 7) | |
山本 容子,Roald Dahl,柳瀬 尚紀 | |
評論社 |
世の中には、波瀾万丈の数奇な人生を送る人と平凡な一生を送る人がいます。
私などの人生は今までのところ平々凡々。それは境遇による面と、自ら冒険を
求めないという性格の問題でもあるでしょう。
上の本の作者ロアルド・ダールは境遇からも性格からも、すばらしく波瀾万丈
の一生を送った人です。面白い経緯で作家になり、大人向け、子ども向けたく
さんの本を書いています。どれもなかなかに突拍子もないお話ですが、結構
自分の経験に裏打ちされているようなのです。上の本の訳者、柳瀬尚紀さんは
彼を傍若無人(かたわらに人がいないかのごとく振る舞う)の人と形容してい
ます。人の思惑を気にしないというのは、私を含め日本人に欠けた資質かも。
そんな意味で、ダールに惹かれるのかもしれません。『チャーリーとチョコレ
ート工場』など、その作品の面白さは言うまでもなく、人物にも興味をそそら
れます。もう亡くなっていますが、とても楽しい彼のWeb Siteは健在です。
この本には、自伝的なエッセイやオチのついたユーモア短編、風変わりな冒険
譚など、8つの話がわりと脈絡なく収められています。ただ、幼少年時代のパ
ブリックスクールでの恐怖の寄宿生活が元になっているのでしょうか、人間っ
て理性だけで動かない、理不尽な残酷さを持った生き物だ、けれども、同時に
どんなに非道な扱いを受けても尊厳を失わない人たちもいるということを語っ
ている気がします。「あまりにひどい目にあわされて、それが忍耐の限界を超
えると、ただ屈伏してあきらめる人間もいる。一方、数は多くないけれども、
どういうわけか、どういうときでも征服されない人間がいる。・・・不屈の精
神を持っていて、なにごとにも、苦痛にも拷問にも死の脅威にも、決してあき
らめない」(『白鳥』より、柳瀬尚紀訳)読んで勇気をもらえる作家です。と同
時に、ストーリーテリングのあまりの巧みさ、奇抜さに、読んで最高に楽し
めるのがダールの第一の特長です。
マチルダはちいさな大天才 | |
クェンティン・ブレイク,Roald Dahl,Quentin Blake,宮下 嶺夫 | |
評論社 |
ダールに入るには、この『マチルダは小さな大天才』あたりがいいでしょう。
きれいな、易しい英語なので、原文で読むにも適したお話です。