野牡丹と言う花が有る、濃い紫色で4弁の花を初夏から秋口まで咲かせる、非常に強い様だ、最近は彼方此方で見かける様に成った。最初この花を見たのは鉢植えで小さな物だった、色の感じはトルコ桔梗の色に似ているが少し花弁が肉厚だった、店員が「丈夫な花ですよ、温かい所の花だから冬は部屋に入れたほうが良いかも知れません」」と言われて居たのだがすっかり忘れてその頃やっと手に入れた家に1坪程度の庭が有ったので直植をしてみたらどんどん増える、この庭は植物に良いのか、賃貸に居る時に買ってベランダで鉢植えをしていた物を植えるとどんどん大きくなる、最初はバラで次は雪柳だった、バラはやせ細ったままだったが雪柳は大きくなったて道路にはみ出してしまった、細い路地で坂の途中だったので通行の邪魔には成らないのだが散り始めると毎日掃除をしてもきりが無い、風が吹くと吹き溜まりが出来る位だ、此れをねこぞぎ抜いたら隣に植えておいた紫陽花がその分大きくなった、一番小さな鉢に入っていっていた西洋紫陽花だったが株立ちになった、高さは1mを超えて庭の半分近くを占領した、しかし毎年楽しませてくれるのでそのままにしておいたが紫陽花は見ているところは花ではないので何時まで経っても所謂花はなくならない、寒くなる事鋏で切り落とすのだが後で聞いたら此れが大きくなった原因らしい。兎に角残り半分に面白がって色んな花を買ってきて植えてみる、その中にこの野牡丹があった、此れも年々大きくなり株も増える、瑞々しい花は濡れると実に綺麗で花を切って仏様に上げた、しかしこの花は落ちるとどういうわけか落ちた場所に真っ黒の後を残す、残念だが部屋に飾るのには向かない様だった、余り大きくなったのでその頃行きつけになっていた伊豆の小さな旅館に持っていって庭に植えて貰った、その後何年かして行ったが「「綺麗に咲いていますよ」と言われてとても喜んだのだが、今では家も人手に渡り、伊豆の旅館も中々行く事も出来ない、暑い日差しの中で咲いている野牡丹を見ると我が身の移ろいが沁みて来る、(又、野牡丹の有る家に)と自分に言い聞かせているのだが、遠い夢の様な話だ。
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