河口公男の絵画:元国立西洋美術館保存修復研究員の絵画への理解はどの様なものだったか?

油彩画の修復家として、専門は北方ルネッサンス絵画、特に初期フランドル絵画を学んできた経験の集大成を試みる

朝鮮の理解

2022-10-04 22:59:55 | 絵画

去年の秋ごろ《反日種族主義》という本が日本語で出版され、すぐに購入した。韓国人の大学の研究者6人による著作で、内容に目を見張った。当時は文・ジェイン前韓国大統領の時代で、民主党とは名ばかりで反日を手段とし、北寄りの政策で政権を握っていた。慰安婦の歴史を盾に、民衆を反日に扇動し、NO-JAPAN運動を展開し、韓国海軍の艦船からレーダー照射で照準を付けられるといった驚愕する関係が連日起きた。だから反日種族主義の本はため息をつきながら読んだ。しかし韓国にもまともな人がいるというのに安心して、幾分韓国に対する反感は和らいだ。

似たような韓国人のエッセイイストで、韓国で歯医者をしていたが、日本が好きで来日し、日本と韓国の比較文化を書いたシンシア・リーという女性の著書を購入した。「高文脈文化、日本の行間」という題名で、語学の才能が勝るのはその人の日常社会の視覚の鋭さから、見たもの、感じたものを表現したいと思うことから始まるのか・・・比較文化論が面白かった。(私は英独仏どれをとっても日本語のように話せず悔しい思いをしているが) しかし隣の国であるけれど、決して韓国語を学ぼうとは思わなかった。中国語はラジオの講座を3年間聞いたが、やっと全発音+イントネーションのバリエーションが1500あるピンインという中国語独自の基礎が一通り終わったところで、西洋美術館で彫刻の石の台座を中国に注文してロダンやブールデル、マイヨールに着け終わって・・・中国語の勉強も終わった。

中国語の方が簡体字とはいえ漢字で表記されているので、まだ親しみがあるのであるが、韓国語のハングル表記は見た目からして「なんじゃこれ・・・難じゃこれ!!」で近寄りたくもなかったが、テレビで韓流ドラマというのが多くあって、一番最初に「チャングムの誓い」というのがヒット。主人公の雰囲気が「吉永小百合」が《キューポラのある街》でデビューしたときの雰囲気にそっくり!!でいきなり気に入って毎週楽しみにして見る事にした。しかしあの時は日本語に訳されていたように思う。その後韓流時代劇は「王朝時代劇」というべきで、なんでも「王様ーー!!」と赤い服を着た重臣たちがひれ伏し、物語も憎しみ、中傷、扇動、など満載で・・・ある意味、これが現代の韓国文化を象徴する韓流かと思うほど・・・ウンザリしていたところ。

実はごく最近まで映らなかったBSチャンネルが観れるようになって、最近「緑豆の花」という李朝末期の混沌とした歴史を描いたドラマがあって、これにはまった。それまでやたら衣装がチャラくけばけばしく原色で派手であったものが染もされていない綿のベージュ色、草鞋を履いて頭に傘の帽子。史実に近い脚色、設定で、これまでなかった安心感が感じられたドラマであった。ここに登場する「東学党の乱」は世界史の教科書で軽く単語だけ出てきたような気がするが・・。しかしどういう訳か「覚えていた」というのが不思議な縁であった。去年から反日種族主義はシンシアの本の次にネットで知った「朝鮮紀行」という、これまだ李朝末期の朝鮮を旅行したイギリス婦人がその時代をよく観察して描写した長編の紀行本を読み始めて、最もリアルな時代認識に近づいてきた。この本にも書かれている東学党について、ドラマで描かれている彼らの理念が「不公平な身分制度、両班(やんばん)による搾取」などからの解放を求めた「民乱(一揆)」であっても、こうした社会的な評価は描かれていない。そして李朝が滅びる原因が「王族の無能」であることは大よそ想定出来ても、ドラマの方で「ほら、やっぱり」と描かれているから・・・反日種族主義で歴史をゆがめてコンプレックスから逃れようとするものではないと・・・安心した。

ドラマ「緑豆の花」は終わってしまったが、「朝鮮紀行」は講談社学術文庫、イザベラ・バード著1680円で買えるから是非読んでみて下さいな。

当時のソウルが王朝韓流ドラマと混乱してくるから。