絵を描くモチベーション

絵を描く動機は何ですか？と尋ねられたら、何と答えますか？「描きたいから・・・・描く」だろうか？

このブログを書き始めた去年に、すでに述べたことだが、「デッサンが大事」と強調したつもりだが、なかなか分かってもらえないのは何故だろうかと考える。やはり石膏デッサンの影響で自由になれない人が多いこともあって、世間を見渡せばみな写真的な写生を「リアリズム」と思って、そこから発展しないところにはまり込んでいる。

最近、美術雑誌を買った。めったに雑誌は買わない人だが、もう一度ブログで「絵画のリアリズム」について語っておこうと思ったから、テーマとしてこの雑誌の特集を取り上げることにした。

それは月間アートコレクターズ１２月号で、特集は「虜になる写実絵画」と題していた。表紙に女性の顔が描かれているのだが、じっと見るには耐えられない、不思議と気持ちの悪い絵である。何故気持ち悪いかは私の主観だから誰も同じに感じるとは限らないだろう。しかし写真的で目線が宙に浮いているようで、こちらを見ている顔は「モナリザ」とは全く違う次元である。

この雑誌はコレクターに気持ちを持たせようとするために、特集を組んでは商品を推薦して売り絵のマーケットを創り出している。コレクターの為に宣伝を兼ねているとしても、大衆受けする言葉の羅列に、観衆は言葉の定義と現実を直視する鑑識眼を持つ必要を感じる。

ここで取り上げられた作品のほとんどは写実絵画と言えども、写真的リアリズムと言うべきで、私の考える「リアリズム」ではない。ここで現代日本のリアリズム絵画（具象画）を分類しておいた方が良いだろう。それは学芸員や評論家が見る側の分類ではなく、描く側の分類方法である。

①石膏デッサンを学んだ写生的正確さで描く

②基礎学習は不要で、描き始めれば何かが生まれると信じ込んで描く

③自分の好きな世界観が描きたくなって、個人的な世界を描く

①は画学生で、そのまま年を取って、石膏デッサンを卒業しなければ、物を描写するのにも正確に描くしか能がなくなる。悲しいかな究極の技術は写真と見まがうことなく正確に描けるようになることだと、帰結する。感性が固定化され、見えるものの状態以外に見えなくなるし、描けなくなる。おそらく黙々と作業を行うことで満足感があるのかもしれない。しかし表現性のあるなしは、おそらくモチーフを選択する時に個人的であっただろうが、対象に正確性を与えれば「創造性」は失われる。つまり芸術性は無いに等しい。

この分類に当たる人たちのモチベーションは、現行の市場で大衆受けする「写生技術」を認めてもらうために熱心になれる唯一の選択に近づけるところにあるのだろう。

しかしどうせ写真的に描くのなら、そんな面倒なものより、きれいな女性の写真の方が素敵だと思う。素人画家が撮った写真より、むしろプロの写真家が撮ってくれた写真の女性の方がきれいだと思う。男の写真的な絵は、政治家は会社社長の肖像を除いて、基本的に売れない。やはりきれいなお姫様と言うことになる。西洋美術館にヴァン・ダイクが描いた男の肖像があるが、人気がない。優れた技量でこれぞヴァン・ダイクと言える作品であってもだ。現代で、こうした優れたデッサン力の持ち主は世界中を探してもいない。だから女性を描いて売ろうとすると、写真的に「きれい」に描くのが手っ取り早いのだ。しかし出来栄えは「気持ちが悪い」、魂の抜けた肖像に、表面だけ写した石膏デッサンから進歩していない質を感じてしまう。

②は趣味で絵を描く者の多くがこれに近い。曖昧な次元で描き始め、終わりは見えていない。描き始めはすごく楽しいに違いない。素人画家のモチベーションは、この描き始めの浮き浮きした瞬間にあるだろう。描いている時間が経つにつれて、迷いの中で選択（決定）を失う。油絵を楽しむ人たちは「油絵の良いところは描き重ねが出来るところ」と信じているだろう。こってりと盛り上がることに遠慮はない。この国独自の盛り上げの油絵が多いのは、このあたりが出発点かも知れない。（欧米で趣味で絵を描いている人で、盛り上げる人を見たことがない。それは、彼等には美術館に行けば、無駄のない表現に徹した巨匠たちの作品に出合うから、無駄はしないのだろう。）

「描き始めれば何かが生まれる」という考え方は、まるで宗教の如く現代美術の作家たちの間にもあるから、単に素人と言うのではなく、「趣味人」というべきだろう。

実際に何かが生まれたと信じることで、次作へのエネルギーが生まれるのだろう。苦痛がない。

 ③の個人的な世界を描く者は単に趣味人でいられなくなって、独学であっても域を超えようとする。技術的なことは二の次でも、表現に拘るだろう。他人の真似でもどうでも良い。技術は自分の世界を作り出すうちに出来上がってくる。それは他人にはできないこと、自分だけのことになっているだろう。画業で生計を立てるなどという高邁な考えは持たないであろう。運が良ければ注目され、生活を支えられるかもしれないが、その者が自分の世界をお金に換えるかどうか？

この者の画欲を満たすには「紙と鉛筆」があれさえすれば良いだろう。

しかし、基本はデッサン力で、魅力的な線や形を引き出すことが出来る能力こそ求められる。アイデアではなく感性で支えないと、そこいらにある現代美術と変わらないものになるだろう。現代具象絵画に立ち向かっている人たちの中にも、少しはこうした人が居るみたいだから・・・・。

 絵を描くモチベーションには運命的な傾向があると言えるだろう。いずれにせよ結果が大事。時代の価値観に厳しく影響された、ほんのちょっと前の過去の社会と違って、モチベーションは個々の自由であるが故、現代というこの時代は、如何なるものであっても受け入れているように見えるが、動機がもたらす結果は歴史の中で評価される。だから好きにすればよい。

 

今日はネコの話

家に猫が２４匹居ると話したと思う。おととい突然客間の中から猫が私を呼ぶ声がしたので、のぞいてみたら「ありゃー」「何処の子か？」と一時よく思い出せなかったのが・・・・驚いた。「７か月前に家出した家の猫だ」「名前を思い出せない・・・・うう」。「ポンちゃん、ポンちゃん・・・だ」。やれやれ、年のせいか物忘れが激しくて、愛おしい猫の名前を忘れていた。机の下から、甘えた声で私を呼んでいた。部屋に入ると、そこに他の猫たちがどっと入って来て、ポンちゃんはうなり始めた。家出した理由は、他の猫たちと感情的に上手くいかなかったから。

我が家からいなくなる猫の一番は猫の集団生活に満足できない、個の強い性格で食事や温かい家より、自分の格を守りたがる猫。そのほかは人懐こく誰にでも好かれそうな「可愛い子」が帰って来なくなる。後者は誰かに飼われている可能性があるから、悔しいけど可愛がってくれればと思って我慢する。そのほかの可能性は「死」を迎えた子は、自分で死に場所を見つけると、翌日にはいなくなる。それは何となく毎日顔を突き合わしていると判る。ああ、そうそう、生まれて間もなく、我が家の猫にならないうちの子猫。生まれて直ぐには私のことは敵であって、家も自分の住まいだという意識はないから、うまれて２か月までの子猫は、我が家の猫と勘定しない。この子たちが一番多く死ぬので５匹生まれて、４匹になり、気が付いたら１匹になっていたというのは良くある。しかもこの子たちの母親は私に触らせない本物の野良猫なのだ。

我が家の野良猫は４匹。雄２、雌２の割合。彼らは不妊も去勢もしていない。一匹のメスは（名前はふーちゃん）は既に５回にわたって多くの子供を産んだ。父親は分からないが、家の中のオスではない。生まれた子供のうち７匹が生き残った。１０匹以上が死んだ。原因は育児放棄、病気が主だと思うが、散歩中の犬に殺された子もいた。庭中穴を掘って埋葬した。（市役所が野良猫にエサを与えるな、理由は爆発的に増えるから・・・・と言うのはうそだ。家の中に居ても多くが死ぬ。環境の悪いところではもっと死ぬだろう。）特に生まれて３か月ぐらいは病気や空腹で簡単に死ぬ。外に遊びに出て迷子に成ったら終わりだ。皮下脂肪が少ないから寒さも死亡原因になる。ふーちゃんは未だに触ることが出来ない。名前の通り、触ろうとすると「ふーっ！！」と威嚇する。

野良のオス２匹は体がやたら大きい。名前はデブとゴンタ。どちらも家の猫の大きい子と比べて、はるかに大きいが、ゴンタは特に浜田で一番だろう。顔の大きさが直径１８ｃｍぐらい。体積はうちの一番の２倍以上。デブとゴンタは去年の同時期にやって来て、よくケンカをしていた。うちの子に手を出さない限り好きにしろ・・・がモットーだから・・・。しかし、私はケンカが好きではないので、「おいこら！！ケンカするなら来るな！！」とよく言ったもので、血を見るケンカも、その内しなくなった。不思議なもので。デブはロシアンブルーの毛色に顔と手足の先が白で、鼻の横にほくろの様な点がある。それは体の割に可愛いポイント。彼のメスの連れ・・・名前はうめちゃんと一緒に来た。子猫を連れて一家でやってきた。子猫はネズミのような顔をしていて、私から逃げまくるので、しばらく名前も付けなかった。あれから１年、この子は大きくなって（父親似で）、今は私にべったり。

東京から５年前に引っ越してくるとき、１２匹の猫を連れてきた。家猫７匹に駐車場でエサをやっていた野良５匹を車に乗せて連れて来て、しばらく家の中で暮らさせたが、争いが絶えなかった。４か月後に戸を開けて、自由にしてもいいぞと解放したら１匹、一番乱暴だったオスが逃亡した。このオスが居なくなって争いがなくなったというのも・・・・ストレスがあったのだろう。母屋と倉庫に分かれて皆暮らすようになって、いつの間にか浜田の野良猫もやって来てご飯を食べるようになった。そして最初の野良のメス猫（クロちゃん、育児が終わると居なくなった）が３匹の子猫を産んだ。この三匹にてんちゃん、ぷんちゃん、ぽんちゃんと名前を付けた。文頭で紹介した。７か月家出をしていたぽんちゃんはこの時生まれた。てんちゃんは人なつこく・・・行方不明に。ぷんちゃんは私から逃げまくって、一年後に４匹の子猫を産んだ。この頃のＮＨＫ朝ドラの「花子とアン」の登場人物から、花子、もも、兄やん、あむ（歩）と名前を付けた。同時期にふーちゃんが４匹生んで、かよ、タネ、がね、もう一匹は子猫のうちに死んだ。

だんだん子猫に名前をつけるのが雑になってきた。ごめん。最近つけた名前は、メガ、ギガ、テラとか、二文字が分かり易くて良いと思うのだが・・・・。ある時、ふーちゃんが二匹の黒い子猫を産んだ時、どっちがどっちか分からなくなるので赤い首輪と青い首輪を買ってきて、つけて赤ちゃん、青ちゃんと呼んだ。黒猫を「おーい！赤ちゃん」と呼んでいるのに、「変！！！」と言う人もいたが、こっちは識別できればと思っていたら、ふたりとも同時に首輪を無くして帰ってきた。１０８０円だ。どうしてくれる。この子らは未だによく間違えるが・・・どっちも行儀が悪くて、台所荒しをよくやる。チャーシューを作るために、たれに着けた豚もも肉を丸ごと盗んで食ってしまった。昨日は買い物の荷物を車から降ろす間に、油揚げを二枚食べた。「赤と青め、てめえら監獄に入れるぞ！！」と怒鳴ってみる。

今年、港に捨てられていた２匹。一匹はアメリカンショートヘア（メス）、もう一匹は長毛種の最近流行の子（名前が分からないが）生後４か月ぐらいで毛が長く、首周りにちじれ毛のマフラーをしているみたいな子（オス）、もう一匹は突然夕方の食事時に飛び込んできた三毛の子（メス）だが、誰かが家に投げ込んだに違いない。我が家は本通りから１００メートル以上も奥まった囲繞地（いにょうち、周りを他人の土地で囲まれた土地のこと）で隣の水産高校の学校関係者か、無断で入ってくる釣り人や散歩の住人くらいだが、私は既に「猫おじさん」として有名になりつつあるので・・・・。だいたい子猫がどうして直接、違和感もなく食事時に上がり込んで、知らない「おっさん」の前でご飯を食べれるだろうか？この子は飼われていた家猫であることに違いなかった。「おいおい、この子は誰の子だ！！」と言っても返事がない。その後も私にべったりで、名前（あいちゃん）を呼ぶと、小さな口を開けて返事をする。結局今年は生まれることなく３匹増えた。この三匹の子猫は集団生活のルール無視、学習能力なし。大暴れ。それにしても人なつっこく、その内誘拐されるかも。

ネコに差別はしないが、区別はしないといけない。みなひとりひとり性格が違うし、主張が違うから。うちの一番猫は初代珠（たま）ちゃん。館長秘書が口をきいてくれて、アメリカンショートヘアの子猫を１万円の図書券と交換でもらった。当日、美術館の研究室にトイレとカリカリを用意して離したら、私の膝に上がって、寝込んでしまった。この日は仕事がはかどらなかった。彼女は１４年間私と連れ添った。しかし最初自分独りだったのに、だんだん周りに知らない猫が増えて、気に入らなかったのだろう。ストレスが私にも感じられたが、浜田にきて３年目の冬、３月のまだ寒い時期に、よく留守をするようになった。そして夜になると帰宅して、私の布団に潜り込んで、私の腕枕で寝るようになった。一番好きなカリカリを食べると３時間くらいするとまた外出した。そして２週間後に居なくなった。珠ちゃんロス・・・・。いつかきっと帰ってくるだろうと、思い続けたが・・・・もう彼女も年だ。諦めるために、二代目珠ちゃんがきっとやって来たのだろう。二代目珠ちゃんはまだ子猫だから、何とも行儀の悪いこと。子猫の時分から個性的。初代珠ちゃんのことを無理に忘れることもないかと・・・思う。

 また寒い冬がやってきた。

野良猫たちにとって、厳しい冬は食べ物も、温かい寝床もなくなる。死ぬ猫も多いだろう。今年の初め、マイナス５度の日があって、１４匹の猫たちが私のシングルベットの上で寝ていた。当然寝ている私の上にも載っていたのだ。一度トイレに立つと、もう帰って寝ることはできない。「ちょっと！！君ら、どいてよ、とうちゃんが寝れんじゃろ！！」

彼らは日本語（山口弁）が分からないのだ。「くそー！！学費出してやるから、学校行って勉強して来い！！」いつものセリフ。

仕方がないから、客間に行ってベットを作り直すと、そこにまた４匹やってくる。私とどうしても一緒に寝たい子がいるのだ。だいたい想像できると思うけど、彼らは土足で上がってくる。家中汚れが凄い。砂以外にゲロをするし、お漏らしをする子もいる。私のベットで下痢をした子がいて、一時間ばかり寝れなかった。ベットメイキングはしょっちゅうで、布団はボロに限る。上にシーツをかけて、いつでも洗えるようにして、自己防衛。それでも次第に黄色くなってきたから、ハイター、マジックリンとファブリーズは必需品だ。

そうそう、猫が書斎、アトリエに入ることは厳禁です。ＰＣにおしっこを掛けられて、修理に７万円、もう一台は棚の上から額を落とされて全壊。「もう、いけんちゃ！！」油断は禁物。怒るなら３秒以内だ。それ以上たつと何をしたのか思い出せないのだ。障子もふすまもボロボロ。建具は爪でひっかかれて、かさがさズタズタ。火の着いた石油ストーブの上を歩いた子が、飛び跳ねるのを見た。その瞬間芸に圧倒されたが・・・・見ただけで痛そう。そうそう居間の天井周囲にキャットワークを作ってあるが、そこから私の頭目がけてジャンプ。猫がジャンプを繰り貸す時、後ろ脚の爪は出ている・・・・いてーじゃねーか！！といってもといっても、知らん顔。現行犯注意も役に立たないこともある。頭に血がにじんでいて・・・・ビール瓶でなくてよかったなあ。

アトリエに入りたがる珠ちゃん。描いている絵に毛が付くのは許されない。服に着いてくるのでコロコロで除去。

一日のうち、２時間以上彼らに時間を奪われている。トイレの掃除、エサやり、部屋の掃除、病気の世話など限り無し。これでいいのか？

なんで２５匹も猫を飼っているかって？断れないのです。来るもの拒まず、去るもの追わず。現在、猫の食費、一日１２００円、私６００円、猫の医療費、年間２０万～３０万、私５～６万円。

命あるもの愛おしい。

追記：

猫が居ると絵を描く気になる・・・・あり得ない。絵を描くモチベーションは、日常的気分が大事。その気分が壊れる原因が「猫」。どうにかしなくてはと。いたずらがきが大事。イメージの世界に入るきっかけになるから。