町のスーパーに行ったら、もうおせちの具材が並んでいた。数の子は一月前から「買わせよう」と高額なパッケージが並んでいたが、あんなものは大みそかに値が下がったところで買えばよい。それよりちょいと懐かしい故郷の味を捜したい。何時だったか、年の瀬に御徒町の甘横に出かけて、売り子の声がけたたましく飛び交う魚屋の前で立ちどまると、壁に懐かしい塩鱈の一本物の開きが、五千円の値札でぶら下がっていたのに、すかさずおやじに声をかけた「その鱈三千円にしないか!!?」と。すぐに「ああいいよ!!」ときた。今でもうれしかったのを思い出す。
この鱈の干したのは山口市で過ごした15年間の正月には欠かせない「贅沢」であった。母が作ってくれたおせちの少ないレパートリーの中で最も輝いていた一品だ。他のおせちと言えば黒豆とゆで卵のカツだ。他にごぼうのアナゴ巻き、くぎ煮とかはいつも同じだったけど、家族団らんで、冬休みの宿題はしなくて、すごろくとか遊んでいられたのが嬉しかった。
その家族はもういない。猫が25匹いる。
独りでままごと遊び以上の「おせち」を作っておこう。
そうそう、先々週岩国の実家に帰って、柚子を2000個ぐらい取ってきたのをやっと絞ってタッパの小さな器に入れて冷凍した。人にも配ったけどもっとあげればよかった。別に欲張っていたのではないけど、油断したのだ。お陰で、台所での立ち仕事にくたびれた。他にキウイと富有柿も取って来たけど。富有柿は小さかったけど完熟でも硬くて甘く、医者に「果実による糖尿病に気を付けなさい」と言われたのを思い出すほどだった。多くは泥棒に盗られていたが、来年は柿だけは気を付けよう。「泥棒はケイサツに突き出す」と看板がぶら下げてあるのだが、効果なし。
さほど甘くない柿は「なます」にするといい。
で、今年は何をおせちにするか?・・・・やはりズワイガニが食べたいかな。品のある味は毛ガニだね。ごつごつして食べにくいけど、カニは人を無言にして意地を張らせる。この浜田の人はカニを食べないせいか、冷凍ものが主流で、美味しくなく、生きたカニは東京の二倍する。カニは足が速い(傷みやすいってこと)、どうせ冷凍するなら生のまま冷凍して欲しい。まだ味がましであるから。カニが居たら他におせちはいらない・・・・黒豆ぐらいは欲しいか・・・・。
数の子はそのままが品が良いが、味が難しい。出汁味が微妙で、傷みやすくプロの味が出せないから、面倒だから松前漬けにするのが、これまでの習慣。これなら7日は持つ。ああ、そうそう! 真鯛の西京焼きが食べたいね。タイの切り身を最強みそに漬け込むが、少し甘めにして一つ一つラップして冷凍すれば日持ちする。ビニール袋はいけない。臭いが付くから、ラップで包んでからビニール袋に入れるのなら良し。
二段重ねの御重に、目一杯の逸品という訳にはいかない。そうそう江の川の川漁師の天野さんにもらった「鮎のうるか」がある。これは腸ではなく、卵巣や白子を塩辛にしたもので、その味は天下無双。辛口の日本酒を冷でなめていただこう。
・・・ぬ、なに?絵を描くことはどうしたって?・・・やはり食うことと絵を描くことは同一レベルなのだ。
何でこうなるかは・・・この町には「美味い物」がないから・・・って、言い訳・・・エキュスキューズミー!!
今夜は「年越しそば」を食べてしまった。「浸け鴨そば」を用意してあったのを我慢できずに食べた。白ネギをぶつ切りにして油で軽くきつね色を付けて、ネギ油の香りが発つようにして浸け汁を用意する。二八そばをゆでて良く水洗いをし、ざるに取る。鴨肉はロースつまり胸肉スライス(今ちょっと高い)を煮立った浸け汁に入れ、色が変わると火を切る。アクをすくって除いて、器に移せば出来上がり。元旦に一度食べたくなる。
それより絵を描けって・・・・。