河口公男の絵画:元国立西洋美術館保存修復研究員の絵画への理解はどの様なものだったか?

油彩画の修復家として、専門は北方ルネッサンス絵画、特に初期フランドル絵画を学んできた経験の集大成を試みる

アイターンは正解だったか?

2021-10-22 12:20:53 | 絵画

首都東京から田舎町に引っ越して10年が過ぎた。年も取り、元気がなくなって来て、次第に行く末が見えなくなってきた。いとこから「やるなら今しかないよ!!」とハッパをかけられたこの先の生き方。

父が亡くなって生家である岩国のへんぴな家と田畑に山まで相続してしまった。要するに誰かが実家の世話をしなくてはならなかったから・・・。父が生きている頃、父は「お前とは一緒に住まん」と言い、私は少なくても東京より近場の島根県浜田市に家を見つけた。その浜田にもう10年になるのだ。最初はヒラマサや大鯛の80cmオーバーを釣ろうという夢もあったが、釣り具を盗まれたり、隣の地所とのいさかいもあって訴訟で3年半も費やすなどバカげた生活にウンザリしても、直下地震が来ると野良猫まで含めて13匹を連れてきたてまえ、すぐに音を上げることも出来ず、今日まで来た。

家が二つもあるというのは良くない。しかもどちらも私の理想からほど遠い。理想は必要とあらばすぐ見上京でき、またフランドル絵画を訪ねてヨーロッパを旅できるだけの環境だった。今の家でも絵は描けるが、なんせ交通の便が悪く、車が頼りである。浜田から県庁所在地の松江は120km、山口に120km、広島に100km、岩国の実家にまで155kmあるから、丁度いずれからも隔離された感じがする。

実は浜田に住んで見てわかったことだが、市町村合併で周辺の町村と合併し、やたら面積は増えているが、住民はやっと4万人で、1960年代に既に「市」であるには3万人以上必要とされてきたはずだが、今になってやっと4万人で、その内の4割以上が無税、つまり所得税無し、市民税無しの人たちである。税収が限られ、そのうちに「夕張市」と同じ破綻行政区となると言われてきたが、前の市長は瀬戸が島産業地区、今の市長も箱もの行政で自分の仕事をアッピールする(前の市長の参与をしていた)大馬鹿者で、無い城の「浜田城資料館」を作った上、今回市長改選でまたこいつが「市の資料館」(予算7億2千万)を作ると選挙で公約して再選された。対立候補と600票差であったというが、市民の半分は行政の現状を考えない者ばかりである。どちらも資料館の資料がなく、学芸員もおらず天下りの市の教育委員会の役人やもと中学校の先生とかで固めた。

浜田城という城は幕末の長州征伐の時、逆に長州の大村益次郎によって責められ、松平の殿様は城や藩庁にに火をかけて、親戚の岡山の美作にかくまってもらった具合。そのころまた浜田地震というのがあって町民2500人から死者を出していた。この時の地震のせいか、城の石垣は大破し、明治以降に適当に素人修理されていたため、全国の城の実態調査をしていた者が激怒して放置したという話も聞いた。その上城の敷地内には民間の会社の建物が、どういう訳かある。何故かしら「文化の香る町」というキャッチフレーズを言うが、昭和初期の最も木造建築が最高の技術で建てられた旅館とか潰して鉄筋コンクリートの建物に置き換えてしまう町である。「文化の香り」などありはしないから、無い物ねだりで「資料館」を建てるコンプレックスそのもので充満している。

一方で福祉事業は予算を充当せず、介護保険(実際は保険ではない。厚生省の謀略である)税は日本一高い基準で徴収される。私も要介護3になって気が付いたことは、介護も週に3回ヘルパーさんが毎回1時間ほど来て、洗濯と買い物をしてくれるだけであったのには、何という税の使われ方かと立腹。要介護3は寝たきりで自分の排せつなどの日常が出来ない状態であるにもかかわらずそれ以上何もしてもらえなかった1か月半であった。

ガンのような大病をすれば広島に行くしかない。ここはやぶ医者ばかりで、医療技術は保証されない。

何となくここまで書くと分ってもらえるだろうか?・・・こんな町で死にたくない・・・と。

東京にいても同じだったろう、家の固定資産税が高く、年金の3分の1が持って行かれ、貯えも大してなく、どんなに様々なものが手に入る、サービスが受けられる恩恵があっても、未来が見えなかった。「知に働けば角が立ち、情に竿させば流される。とかくこの世は住みにくい。何処に行っても同じだと思ったとき、ふと詩がある・・・」と漱石の草枕の一節は結局「詩の中でしか息が出来ない」という意味だ。

私は「絵の中でしか息が出来ない」とかつて書いた。しかし絵を描くことが、自由に出来るほど実力があるということではなく、毎度切磋琢磨しないと一枚も完成しない。完成した作品を順次並べてみて自分の人生が見える。

ああ、どこか良い所はないのか??!!

工事中です


来るもの拒まず、去る者追わず

2021-10-20 17:32:03 | 絵画

コロナのせいで、皆と随分疎遠になってしまった。日頃から「地球で最後の一人になっても独りで人生を貫く」と豪語していた私だが。

ちょっと寂しく感じる。そんな中、常に私のことを気にかけて下さるN先生が10日に一度は見える。一緒にコーヒーでも飲んで世間の話。ほとんど同じ価値観の人物と会話すると、ストレスはない。ヨーロッパ的な個人主義者ではないので、議論には発展しない。いろんな話をしてもテーマは尽きず、終わりはない。

そのN先生が見えた直後、居間にあらっと思う猫が一匹いる。白い毛でしっぽがキジトラ。他の猫たちと一緒にいて違和感なし。いやなんだか喜んでいる。よく見ると「チョビ」ではないか!!

私は直ぐに触って顔を確かめた。ちょうど口の周りに特異な文様があって、五年前、この子が初めて家に来た時、遠くから、口の周りに仏様のようなひげが生えているように見えて、「チョビ髭の猫」として「飯でも食って行きない!!」と呼んで、いつの間にか家の猫になった子である。さて、もう一年半になるであろうか、去年の春に「でぶ」と一緒に行くへ知れずになった。我が家からいなくなる子は体調が悪くて「死にに行く」か「多くの猫の中にいるのに不満が出てきた」かである。

そのチョビが帰ってきたので、体をなぜまわして、体調の具合をみて、「良く帰ってきた」とカリカリを与えた。N先生と話している内にまた出て行ったが・・・。

その後、三日目の午後、また玄関に現れて、私が散歩から帰宅するのを待ちかねていたようで、私の目を見ながら喜んでいる。猫も尾っぽを振るのである。今日は愛想が良い。

まだ4時であったが夕食の缶詰を開けて振舞った。よほど美味しかったかと思う、たくさん食べた。私が用があって二階に上がると、チョビはまたいなくなった。どこかに居心地の良い「寝場所」があるのだろう。寒くてもそこで頑張る値打ちがあるのだろう。

私としては、ちょっと期待してしまう。また帰って来ないかな・・・。

 


おお寒!!

2021-10-19 19:53:03 | 絵画

土曜日から寒くなって、家の前の海は大荒れ。波も6mの高さで岩磯を洗い砕ける。ときたまこんなことがあるが、今日の波は10年に一度といわれるほどきつい。家の庭に立つと潮しぶきがかかる。

こんな時に限ってトラが行くへ不明。あいつはもう人間年齢では86歳だから、徘徊老人猫だ。浜田では防災無線スピーカーで徘徊老人の注意情報を流しているが・・・暴風の日には全く聞こえない・・・で・・・猫だから探してくれない。仕方がないから折から降る雨の防風だから、雨合羽を着込んでトラを捜しに出かける。雨が相当降っているではないか!!

私も濡れて、恐らくトラもと思うと悪い予感がする。案の定、いつも居る草むらに丸くなって、雨の中寝ている。どういう神経なのか・・・もう認知症老猫だろう。「おい!!トラ!!」「こんなところで寝るんじゃねえ!!」しかし悪い予感もあるが・・・生きていて、「みやあー・・・」と言うから、一寸腹が立つ。無理やり抱いて帰る。

帰宅するとタオルで拭きまくる。「とうちゃんは怒っているんだぞ!!あんまり心配かけんじゃねえ」と言っても・・・無駄。翌日も同じ繰り返し。

日曜日も海は大荒れで、家から出たくない。夜八時にはNHK大河ドラマの「渋沢栄一」を見なくちゃ・・・と車庫に行って車のエンジンをかける。(うちはNHKやTBS系が映らないのだ。10年前に引っ越して来たら、すぐに視聴料を徴収に来たが「この地域は映らんらしいというではないか!!」と言って追い帰した・・・奴め、知ってるくせに)まあ、それで車のナビで小さな画面で見ている。めんどうだが。

ついでに、またトラを捜す。すぐに徘徊老猫になるので、夜中でも雨が降ると、起きて捜しに行かなくてはならない。

面白いことにっ昨日から急に寒くなって、気温が夕刻に16度に下がって、ソファーに座った私の膝の上に猫達が乗り始めて、膝に4匹横に3匹、モモに顎を乗せたり、体よくっつけてきた。よほど寒さが感じるらしい。ねこは敏感だ。じっと彼らのやりたい放題に我慢するには私も寒い。「よし!!ストーブをつけてやる」まだ10月だというのに、石油ストーブをつける事にした。これで私の膝は「猫団子」から解放された。で、翌朝は13度にまで下がって、結局ストーブを焚きっぱなしにした。

このまま寒さは続くのだろうか。実は植えたバターナッツは雌花が咲いて、雄花から花粉を筆にとって、ジョン高受粉を繰り返したせいで、16個の実がなったが、まだ青い。大きなズッキーニみたいな状態で、熟さないと青のバターの切り口みたいな美しい甘みのある実にならない。農家をやっている釣り友達に聞いたら、カボチャと同じで春に植えないといけないそうだ。葉が落ち、茎が枯れて来て「収穫」出来るのだそうだ。このままだと12月までかかるから・・・・今年はあきらめて。ズッキーニと同じつもりで食べることになりそうだ。ちなみにイタリアではズッキーニは縦にスライス状に切って、両面にニンニクをすりつけて炭火で焼き、塩コショウ、バルサミコ酢で・・・前菜として食べるのだと。では、やってみっか!

それにしても今夜も寒いで!!

 


己の老いとどう付き合うか

2021-10-13 12:06:12 | 絵画

白くなった髪をメンズビゲン6で黒く染め、若く見せる・・・・直ぐに生え際が白くなって忙しい。自分は若いつもりでも、あれこれと老化が見える。特に肉体的な老化には勝てないから、一寸躓いて(つまづいて)こけて膝をすりむいていた。風呂に入るまで血が出ていることも気が付かない。足腰が弱くなったことも認めたくないし、忘れ物が多くなってトラブルが多い。

ちょいと二階に上がって、食べ終わった夕食の膳を片付けようとして、何かを忘れた気になって階段を下りて、其のまま外出した。小一時間して帰宅するまで片づけは忘れていた。

朝はインスタントコーヒーを砂糖を一杯入れて飲むのが毎日で、これは忘れないが、砂糖の専用のさじが見当たらないと、近くにいた猫に聞いてみる。「何処にやった?」「隠したろう?」・・・・何か自分の過失は認めたくない・・・・上級国民でもなく・・・認知バイアスが働くのだそうで・・・。「ふん!!自分は間違っていない!!」。

マグカップの中には時々クモが巣を作っているから、コーヒーを入れる前には気をつけている。何故そこに巣をつくるのか・・・「おい!効率が悪いだろう!」と呼びかけるも返事はなく、また他のクモも繰り返す。我が家の生物多様性はいつか書いたと思うが、クモに関しては何百といるから、たとえ廊下であっても二時間ばかりあれば完全なクモの巣をつくるから、歩くのにも気をつけなければならないが・・・よく顔にクモの巣をつけて歩くことになる。

貴方は毎日歯を磨いているだろうか?在職中は就寝前に磨いたが、最近は磨いたのは3日前である。磨くより食事の際に歯の隙間に詰まる何かの筋をワイヤーフロスで引っ掻き出すのに忙しい。そして寝る前は歯磨きを忘れる。そしてインプラントに頼る・・・もう5本入れたから・・・およそ135万円払ったことになる。食事は美味しくなった気がする。腹の出っ張りは前方向から横にまで膨らみ、食事中にものを落とすと、腹の出っ張りで受けることが出来る。また体重が80kgを超えたろう。

気持ちだけは年老いたとは思いたくないのだ。

虫歯には勝てない。河口家では親子代々「歯磨き」はしない家族だった。父はいつも磨いていると嘘を言い、歯槽膿漏で歯を失った。で、寝る前に入れ歯をコップにいれて洗っていた。あれは嫌だからインプラントにしたのだが・・・・今後さらに虫歯で抜くことになったら、またインプラントになるだろう。どうしても焼き肉とかカニとかガジガジと食べたい。要するに年を取ったことを認めたくないのだ。

気持ちだけ若いと思う。いや、思い続けるのだ。

物忘れも気にせず、そういう性格だったと思えばよい。


額縁を作る

2021-10-06 23:47:48 | 絵画

絵画の完成は筆を置いたときではなく、額縁をつけた時だろう。昔の画家たちの作品には必ず注文主の費用で、作者の要望も含めて製作が立案されたであろうから、作者は額装され展示までされた作品をしっかりと確認して満足したに違いない。近代絵画ではモネが自分の作品には個人的趣味で額を採用した。西洋美術館のもの作品の共通したデザインはモネの選択だ。

まさに「馬子にも衣裳」だから、作品を大事に扱ってやろうと、最近になって額縁を作るための材木を集め始めた。95年のロンドン在外研修で、ホームセンターで色々面取りした棒ブチを買い集めたのがあるが、これはそれぞれ1mと短く、四辺に使うには角を直角に切断するのでかなり小さな作品いしか用いられない。日本のホームセンターではみな2mものであるが、なんせデザインがダサい。色々組み合わせてみて作品に合わせる。

ああ勿論木目や木の色がまちまちだし、決して自由に発想できないが、もし柄が合わなくてみっともなければ、ペイントする他ない。木地だし出来れば「都染め染料」を水に溶かして乾かしては塗ることで深みを与える方法もある。

西洋美術館在職中は木島木工という額縁専門の会社にお願いして、館の所蔵品には最も良い選択が出来た。私も退職前に自作の絵画4点に幅が15センチもある白木の額を注文した。彼らは職人気質を発揮して、最も均質な高価な木材を選別して用いてくれたから、あとは私がどの様に着彩仕上げをするかである。実は3点は黒に、1点は茶色に仕上げたが、黒は退屈な仕上がりとなった。これをちょっと剥がして古色を感じさせるような色にしてみたい。要するに均一できれいな仕上がりというのは現代絵画のための棒ブチのようなものだ。

さて、今日は何も出来なかった。最近特にお腹が丸く膨らむように出てきたので、少し体を動かそうと、昼間に庭の草刈りをやったら左手首が腱鞘炎を起こして痛くてどうしようもない。明日まで治ると良いが。