ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

出版社のポスターを鑑賞しました

2025-02-09 16:56:55 | 対話型鑑賞

みるみるの会 1月例会

島根県立石見美術館 石岡瑛子Iデザイン

https://www.grandtoit.jp/museum/ishioka_eiko_idesign_iwami

日時:2025年1月12日(日)14:00~

鑑賞作品:石岡瑛子「女性よ、テレビを消しなさい 女性よ、週刊誌を閉じなさい」角川書店ポスター(1975)

参加者:19名(みるみるメンバー8名)

ファシリテーター:吉田理沙

 

1.作品選定について

 個人的に読書・本がとても好きなので、出版社の広告、特にキャッチコピーにひかれて選定した。石岡さんの作品は、当時の女性の生き方に示唆を与えるものが多く、メッセージ性も強い。このポスターの女性のまなざしも印象的で、この女性のまなざしや女性の生き方についても鑑賞者と共に考えたいと思った。

 

2.鑑賞の流れ

【前半】被写体とキャッチコピーについて

F:「まずはじめに、みえたものとか、考えたこと、感じたこと、印象でもいいのでお話しください」

〇上と下2枚あるが同じ女の人 上が遠くをみている、下はバチっと目が合う

 流行に惑わされるな!というメッセージ 女性の輪郭がはっきり 週刊誌の広告かな

〇テレビを閉じて、週刊誌も閉じて、本を読め というメッセージでは

〇上と下でつながりがある、カラー写真であるのに色が少ない、暗い

 「…なさい」と口調が強い 本を読みなさいというメッセージだと思う

〇冬っぽい グレーで寒空 水辺に見える 季節は冬に見える

 襟付きのコートで 寒いきりっとした印象

 髪も風に吹かれてなびいている

◇2枚の写真、被写体の女性、キャッチコピー、印象など一気にいろいろな気づきが出てくる。

F:「2枚あるが、上と下を比べて、上の方から気づくことはありますか」

〇女性が同じポーズなのでカメラがぐるっと女性の周りを回って撮ったのでは

 何十枚か撮ったうちの1枚かな

〇私は女性が動いたと思う 背景が変わっていないように見える

 あと、女性の襟の形が変わらないから首だけ動かしたのでは

F:「2枚あることの意味はどう考えますか」

〇上は最初の呼びかけで 下はもう一度呼びかけられて、こちらを振り向いた

 「女性よ」という呼びかけが気になる 今の時代なら問題になりそう 時代的に

【後半】時代背景や女性に対するメッセージ性について

F:「時代はどれくらいだと考えておられますか」

〇80年代初頭?テレビでもない週刊誌でもない、別の媒体にあったのでは。角川文庫が映画を作っていた時代 

 とか…経営が思うようにいかず、文庫本になっている映画を見せたかったのかもしれない

〇テレビは映像が流れていて、ただつけているだけで見られる受け身なもの。週刊誌は自分で開くから能動

 的。だが、内容はゴシップだったり・・・書籍を読むことよりも内容が大衆的で堕落的。女性も目覚めなさ

 い、社会的にきちんと学んで世の中変えていこう、的なメッセージがあるのでは

〇書籍を読んだほうがいいというメッセージかなと。でも、この女性は書籍を閉じている。 上(の写真)は

 遠くを見ていて、下は人を見ている。活字を読むのも大事だけど、1人になって自分を見つめるのも大事。

 1人で行き詰まったら活字を。活字から得られるものもある、本もそばにあるよ、というメッセージにも感

 じられる

〇本を読みなさいよ、だと思うが、1枚のフィルムで撮られた、CMのよう。本を読むことで真実を見つめな

 さい、みたいな?本が純白であるのも意味があるのでは。角川文庫は女性だけをターゲットにしているわけ

 ではないから、男性ver.もあると思う

F:「70年代、80年代をイメージされたときに、この時代の女性って?」

〇この時代はテレビ、新聞、ラジオなどの媒体が主流。石岡さんを使うことで、企業イメージをあげるため? 

 角川文庫の今後を担う存在であったのか

F:「女性への働きかけはなぜ?」

〇女性が文庫本を読むという行為は遠かった。今よりも専業主婦が多かったのではないか。 昼間のなんとな

 くの時間に、テレビや週刊誌を見るのではなく、本を手に取ってほしかったのでは。本が白であることも、

 それぞれに必要なものを手に取ってほしいというメッセージかもしれない

〇この時代の後に女性が社会で活躍する時代がくる。専業主婦が多かった時代に、女性に変わろう!というメ

 ッセージ。男性でなく、女性の作り手であることも大きな意味があるのでは

◇はじめはキャッチコピーから、テレビや週刊誌など媒体に関するメッセージについて話したが、当時の社会背景や女性のあり方(生き方)にも話が及び、鑑賞が深まった。男性・女性それぞれの視点からお話をいただけたのも興味深かった。

 

3.ふりかえり

・はじめの方で、テーマに沿うような意見(キャッチコピーや色彩、女性の印象など)がたくさん出てきたので、どこを焦点に話していくかを決めきれず、自身がはじめに考えていた進め方(上の写真から下の写真へ順を追って話していくこと)を優先してしまった。午前中に受けた研修で、鑑賞者から出た意見“点”をつなげて“線に、そしてそれをさらに広げて“面”に、“立体”にしていくというお話があったので、意見をつなげていくことを意識したかったが、少し焦ってしまったように思う。どこにフォーカシング(焦点化)していくか、順序だてて話していくことの大切さを学んだ。

・前回(10月)の反省点だったパラフレーズ(鑑賞者の意見を言い換えること)、サマライズ(鑑賞者の意見を小まとめすること)を意識したが、ファシリテーターの解釈が加わり過ぎると、鑑賞者の発言の意図とは異なる価値観や解釈を生じてしまう危険があると分かった。鑑賞者の発言に沿った的確なパラフレーズやサマライズを心がけたい。

・座席配置も大事。ファシリテーターが鑑賞者を全員視界に入れられるよう配置すること、鑑賞者がどこに座っても声が届くような立ち位置を考える必要がある。

・自身も一緒に鑑賞しながら作品をみることを楽しむことができた。作品の時代背景は私が生まれる以前のことなので実体験が伴わないところも多く、自分より年長の鑑賞者に学ばせてもらいながら、ファシリテーターと鑑賞者がフラットな関係で作品をみることができたと感じる。 

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