第2週の鑑賞会 「みるみると北斎をみる」
日時:2024年1月21日(日)14:00~14:30(ターン③)
作品:両国夕涼 印:画狂人(葛飾北斎)作 (島根県立美術館所蔵 永田コレクション)
ファシリテーター:津室和彦
参加者:一般参加者6名 みるみる会員2名
図版は島根県立美術館のHPより引用した
第2週は,県内外から集まられた6名の方々と鑑賞しました。うち5名は男性で,様々な方向からの発言が飛び出し,大変盛り上がりました。
今回は,作品の構成を生かすために,発言そのものを画面に配置した図に表してみました。
対話は,空にある赤い不思議な形から始まりました。花火という見方と稲光という見方の二通りがあり,それぞれそう考えたのはどこからかを問いながら,しばらくやり取りをしました。
その後,人物について話し合いました。遊んでいるらしい男の子二人と,右の着物姿の女性3人は,ちょっと属性が違うのではないかという話になり,お太鼓結びの帯から,遊女という見方が出ました。それに関連して,当時のファッションリーダーであり,身に着けている着物や団扇もおしゃれで高級なものではないかという考えが共有されました。
背景については,太鼓橋のようなシルエットや水面に浮かぶ屋形船なども細かく見ていきました。
このようなディスクリプションを経て,次第にそれぞれの要素の関連が語られ始めました。
〇女の子は,稲光に気づいて指さした→雷鳴は遅れてくるので男の子二人は気づいていない→遅れて鳴り響く雷鳴に「たまげて」落水するかも=雷光と雷鳴の間の刹那を描いたのかも
〇稲光がピカっと辺り一帯を照らした瞬間で,向こうの景色はシルエットになって浮かび上がっている→空も水面も今の一瞬は雷光で明るい,本当は暗いので屋形船は提灯をともしている
〇女性は遊女→囲われていて出歩く自由はないはず→屋形船上のお座敷に呼ばれて船を待っている
〇材木屋か何かの私有地→所有者の関係者ではないか→特別なイベントがあるからここにいる→花火大会?
宗理美人という言葉がありますが,この作品の中の女性の様子を詳しく見て考えてくださった鑑賞者のおかげで,単なる夕涼みにとどまらず,水上のお座敷を控えているプロフェッショナルであるとか,遊女は当時のファッションリーダーなんだろうというような部分にも迫ることができました。
また,子どもも得意とした北斎が生き生きと描いた子供たちからは,空の赤いものが雷光だとすると,この絵に描かれている次の瞬間,雷鳴が轟いて驚いて水の中に落ちていくのではないかという想像ができました。遊び心のある北斎なら,そんな含みを持たせているかもしれないとか,もしかしたら男の子が落ちた場面もえがいているかもしれないという楽しい空想を皆さんと一緒に広げることができました。一緒に鑑賞することで,若い北斎のエネルギーや遊び心を感じられるひと時となりました。
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