ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

平成29年度島根県立石見美術館「みるみると見てみる?」①レポートが届きました!(2017年12月17日開催)

2018-01-16 23:26:26 | 対話型鑑賞

遅ればせながら、2018年本年もよろしくお願いいたします。

そして、もうすでに始まっていますよ!
島根県立石見美術館コレクション展「あなたはどう見る?-よく見て話そう美術について-」の関連イベント「みるみると見てみる?」。
今年度第1回目の「みるみると見てみる?」ナビレポートをお届けします!


みるみると見てみる? ナビレポート
2017/12/17
津室和彦

日時:平成29年12月17日 14:00~14:40
場所:島根県立石見美術館 展示室A
作品名:「どこかものたりない不可思議な人物たち」
作 者:藪内佐斗司 1982年 
島根県立石見美術館 蔵
ナビゲーター:津室 参加者:9名
(内みるみる会員4名)

 「みるみると見てみる?」初回(初見)なので早めに石見美術館に行き,作品選択をしました。エントランス正面にあるこの作品にやはり釘付けになりました。自身も作品リストを見ずに考えました。立体作品でナビをした経験がないこともあり,挑戦してみることを決意。

 あらかじめ考えていたことは,①立体作品だから,ぐるりと全体から見ることを促さなければいけないこと ②人物像でありながら,捻った表現であることに関して意見が出るだろうことの2点です。

①立体作品ならではの注意ということで,ナビ自身で最初に「動きながら見ましょう」と働きかけましたが,始めにできた人の輪がそんなに動くことはありませんでした。しかし,「見る位置を前後に移すと印象が違う」などの発言の後は,自然と皆さんが動き始めました。言葉のナビと同様に,見る位置のナビも鑑賞者全員の必要感や場の雰囲気をよく読んで,促したり「では,こっちから見てみましょうか。」などと働きかけたりすればいいのだと思いました。ナビ自身は,発言者の位置に移動したり,関係しそうな位置から見たりして,鑑賞者のモデルになることを意識しながらナビを続けました。

②いわゆる具象の人物彫刻とは一見して違うことから,予想どおり多様な意見が得られました。

キーワードを以下に示します。
○(一瞬の)時間の隔たりや経過
○残像
○手による感情表現
○手から始まった表現
○後ろのめりと前のめり
○動作性
○運動していないのとしている
○助けようとする人と助けられる人
○曲線と直線
○ある部分と無い部分
○人の体のようでいて人ではない
○面のような,とって付けた顔
○(男女)どちらでもあるようなどちらでもないような
○両性具有
○性別はグレー(どちらともいえないという意味の灰色=グレー)
○不完全さ
○あいまいさ
○内面と外面
○対になる
○分断
○不完全な印象

 反省点は,「挙手→指名により発言するというルール」「2体でひとつの作品である」このふたつの確認を怠ったことでした。
 初参加の方もおられ,発言意欲も高かったため,挙手なしの発言が続いた時点で,ナビとして注意を促すべきでした。
 また,タイトルやキャプションを示さない本展覧会だからこそ,ふたつの彫像がセットでひとつの作品であることを最初に話すべきでした。トークが進むにつれ,自然と対比的・類比的な話になったのはよかったと思います。しかし,前述の「通常の表示」がないことに起因する『同じ作者による別々の作品?』という疑問は未然に防げたと考えられるからです。どちらか一体から話すというよりも,両方を見渡しながら自由に発言できる時間を導入でしっかり確保すればよかったというご意見もいただきました。

 みるみる会員による振り返りのミーティングでいただいた意見の概要を示します。
○ふたつセットの作品なのに,あまりに早く片側を話題にしてしまったのはまずい。時期尚早。2体対の作品を扱う際のナビ設計を考えておくことが必要。
○彫刻作品とくに身体をモチーフにした作品だからこその意見が出た。性の幅,二対 二つの間にある循環 内外面 交換可能なパーツのような状態というような内容。
○時間の隔たりを体の部位が離れていることと結びつけていた前半は,とても面白い。
○常に物事は流動的であるという普遍的なものの見方にまで到達した。
○彫刻作品なので,視点をナビがはっきりと示しながら進めるとよかったのでは。
○言い換えによって,『私が考えていたことは,つまりはそういうことだったんだな!』と発言者がメタ認知できるとよい。
○復唱のパラフレーズではなく,一歩進んだパラフレーズでよかった。
○終わり方は,今日のように,みんなそれぞれの解釈をもって帰ってもいいのではないか。

 ナビ自身,一見難解な立体作品という印象はありましたが,対話を重ねながら自分の解釈が変容していくことの気持ちよさを感じてもらえたのではないかと思います。
 作品は、人体を表現している彫刻だと思われるのですが、一般に人々が想像する人体とは異なり、総てを表現している訳ではなく、ところどころ意図的に未表現な部分があるところから、鑑賞が様々に考えることができるというところ自体が、作者の狙うところだったのかもしれません。
 余談ですが,作品の部分部分や2体の厳密な距離や位置についての作家の指示はないという廣田学芸員さんのお話もおもしろいと思いました。美術作品は,作家の意図だけではなく,展示を担当する人や環境によっても鑑賞者は違う感じ方をするのだと改めて思いました。まさに流動的です。



今年度第2回目の「みるみると見てみる?」は1月21日(日)14:00スタートです。
対話を重ねながら自分の解釈が変容していく!?みるみるメンバーとともに、そんな体験をしてみませんか?
グラントワ内島根県立石見美術館 展示室Aでおまちしております!
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