平家物語・義経伝説の史跡を巡る
清盛や義経、義仲が歩いた道を辿っています
 



平重盛開基と伝えられる法楽寺の山門をくぐると
右側に楠の大樹がそびえ立ち、
その前に水かけ不動明王と二童子が祀られています。


小松院法楽寺と彫られた寺標(じひょう)







法楽寺蔵 摂津名所図会 『法楽寺』より転載

法楽寺の境内には、かつて重盛お手植えの松といわれる
巨樹がありましたが、江戸時代末に枯れてしまいました。
慈雲(じうん)の字で「相伝此樹小松内大臣平重盛公手植」と
刻んだ石碑もありましたが、今は見当たりません。

その代わり樹齢約800年、高さ23㍍余、幹周り8㍍の大楠があり、
大阪府指定天然記念物に指定され、楠大明神として信仰されています。
法楽寺は、日本の小釈迦とまでいわれた徳川中期の高僧、
慈雲尊者が修行し、
のち住職となった寺としても知られています。

楠の大木と鐘楼

水かけ不動

楠大明神

山門の正面には、大日如来が祀られている木造三重塔が建っています。
平成8年(1996)11月26日、三笠宮崇仁(たかひと)親王殿下ならびに
同妃殿下をお迎えして落慶法要が営まれ、
「法楽寺三重宝塔(さんじゅうほうとう)」と名付けられました。

たなべ不動尊の縁日である毎月28日には、
この三重塔が開扉され、参拝者に内部が公開されます。
三重塔の内陣 本尊金剛界大日如来  脇侍不動明王・愛染明王
宝筐印塔 育王山伝来の仏舎利二粒

育王山(阿育王山の略)伝来の仏舎利には、次のような伝承があります。
日頃から信仰心の篤い重盛は、一門菩提のため宋国の育王山に
祠堂(しどう)料を送り、結縁(けちえん)を求めたところ、
その篤志に報いるため、育王山より秘蔵の仏舎利が贈られてきたという。

手水舎

観音堂

宇陀松山藩織田家の殿舎を解体移築した大きな本堂です。



内陣の奥行きが広く、須弥壇はうす暗くて見えませんでしたが、
不動明王・釈迦如来・如意輪観音像などが並んでいると
受付で教えていただきました。
『法楽寺』には、内陣の杉の板戸に描かれた西行像が掲載されています。
本堂内陣彩色画杉戸之内 西行法師像



 本尊は、不動明王の従者、矜羯羅(こんがら)童子と
制多迦(せいたか)童子を従えた
大日大聖不動明王(大日如来の化身)立像です。

不動明王はもとヒンズー教の神でしたが、大日如来のもとにきて
その化身である五大明王「降三世(ごうざんぜ)・軍荼利(ぐんだり)・
大威徳(だいいとく )・金剛夜叉(こんごうやしゃ)」の
中心的役割をはたす仏法の守護にあたった仏です。

大日如来の使者として、剣と縄を持って
眼をむき悪鬼を追い払う憤怒の姿をして働きます。
不動明王の身体の色は、赤、黒、白、青の五色ありますが、
法楽寺の仏像は青黒で鎌倉初の作とみられています。
 
本堂の左手にまわると、ギャラリーへ続く通路に
田辺大根のサンプルが展示してあります。
しまい不動の大根炊き
江戸時代田辺で栽培された大根が美味しいと評判で、
田辺大根として全国的にも有名になり、大正期には
法楽寺周辺で盛んに栽培されていました。
都市化などにより、畑が減少し次第に廃れていきましたが、
地元住民による復活運動で大阪の伝統野菜として蘇り、
毎年12
月28日、法楽寺のしまい不動で
田辺大根を使った大根炊きが参拝者にふるまわれています。

江戸時代、法楽寺の本格的な復興を成し遂げた
洪善和尚の協力者、大宇陀松山藩織田家から
殿舎を拝領し本堂と山門が建てられました。

瓦は堺の職人を呼んだようで、
山門の軒瓦には、
法楽精舎と丸の中に文字を浮かせた瓦、
本堂軒瓦に平家の紋章揚羽蝶、
本堂鬼瓦銘に「宝永八年卯月吉日 
堺□さいく人瓦ふき 三郎□かわらし八三」と刻まれていました。









庫裏の軒丸瓦も揚羽蝶紋です。

昭和53年本堂修理の際、偶然蔵から不動明王図像が発見され、
学術調査の結果、「天下の三不動」の一つ京都青連院の
国宝「青不動」の原画と判明し、大騒ぎになりました。
この図像は、「絹本著色(けんぽんちゃくしょく)不動明王二童子像」と
名付けられ、重要文化財に指定されています。

平重盛公画像
 
重盛が陣中で用いた平重盛陣銅鑼(直径1尺5寸)が本堂にあります。
『平家物語』では、重盛は傲慢な権力者の父清盛と対照して、
どちらかといえば貴族的で柔和な人格者として描かれ、清盛が後白河法皇と
対立するようになると、争いが起きないように気を配っていました。

平治の乱では、郎党を率いて源義朝の長子
悪源太義平(よしひら)と対決し、武勇に優れた一面もみせています。
待賢門合戦(平重盛と悪源太義平の対決)  



修行大師像

大師堂

大師堂に架かる富士山の麓を行く在原業平の絵画



蔵の前に客殿で行われる写経案内板がたっています。

鎮守秋葉大権現
 
法楽寺の年中行事
1月元旦(3ヶ日)歳旦吉祥護摩 1月28日 初不動大祭
2月1~7日 節分厄除星祭  3月中日 春期彼岸会
4月上旬 四国八十八ヶ所巡拝 5月28日 たなべ不動尊大祭
6月21日 青葉祭り 8月15日お盆精霊経木流し
8月18日 大施餓鬼会 9月中日 秋期彼岸会
9月28日 狂言奉納 10月21日 四国八十八ヵ所お砂踏み
11月28日不動講総会 12月28日終い不動 田辺大根炊き
12月31日 除夜の鐘
大阪市の法楽寺(1)源平両氏の菩提を弔った寺  
『アクセス』
「法楽寺」大阪府大阪市東住吉区山坂1丁目18−30
JR阪和線「南田辺駅」下車、東へ100メートル
大阪メトロ谷町線「田辺駅」下車、西へ150メートル
拝観:年中無休。6:00~17:00 電話:06-6621-2103

『参考資料』
永井路子 木南卓一著「法楽寺」(平重盛・慈雲尊者と法楽寺 )法楽寺、昭和53年
三善貞司編 「大阪史蹟辞典」清文堂出版、1986年 「大阪市の地名」平凡社、2001年
ひろさちや監修「仏教早わかり百科」主婦と生活社、1994年



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