長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

84.春の里山に咲く花・その3

2013-04-12 13:14:28 | 野草・植物
4月も中旬になると、そろそろ木々の新緑が伸びてくる時期である。当工房周辺の里山でも芽吹き始めた落葉樹の新葉のグリーンがパステルカラーのように淡く美しい。一口にグリーンと言っても樹木の種類によって色彩が微妙に異なる。緑青がかっていたり、黄色っぽかったり、日本画の画材店で岩絵具の緑色系の新鮮な顔料を眺めているようである。さて、『春の里山に咲く花・シリーズ第3弾』としては、林縁部で観察できる花たちをご紹介しよう。林縁とは、つまり平坦地と丘陵部の境目という程度の意味である。

斜面林がまだ冬枯れ色の早春の頃、真っ先に咲く樹木の花がある。それは数珠を切って枝にぶら下げたような花で、淡いデリケートな黄色をしている。周囲の木々がまだ葉が伸びない頃に咲くのでとてもよく目立つ。キブシ科の『キブシ』という種類だ。僕は里山の樹木の花の中でも特に好きな花でキブシの花房が伸びてくると「あぁ、ボチボチ春が来るんだなぁ」と思う。お次の樹の花はバラ科の『モミジイチゴ』である。山野に多い落葉低木で林縁の比較的低い位置に斜めに出た枝から下向きの真っ白い花を咲かせるので、すぐにそれと解る。花期は以外に短いが、5-6月に直径1、5cmぐらいの美しい黄色のイチゴの形をした実を付ける。黄色いイチゴの意味から一般に『キイチゴ』とも呼ばれる。

それから、草の花である。早春の時期の林や林縁で多く見かけるのはなんといっても、このスミレ科のタチツボスミレである。青みがかった紫色が実に美しい。ときどき驚くような大群落を見つけることもある。スミレの仲間は種類が多く似通っているので同定が難しい。この周辺でもスミレ、ニオイタチツボスミレ、マルバスミレなどを観察している。タチツボスミレが満開になった頃、少し遅れて咲くのはケシ科の『ムラサキケマン』という花だ。ケマン(華鬘)とは花を糸で通した飾りで、ハワイのレイのようなものらしい。この華鬘に似て赤紫の花が咲くという意味でこの名がついたようだ。以上ざっと、春の林縁で目につく種類をとりあげてみた。まだまだ名前をあげればキリがないが、とりあえず今回はここで締めとする。画像はトップがキブシの花房。下がモミジイチゴの白花、タチツボスミレ、ムラサキケマン。