長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

126. 新年の描き初め(かきぞめ)

2014-01-10 20:25:57 | 絵画・素描

新年の書初めと言えば一般的には書道である。子供の頃、癖字で書が苦手だった僕は冬休みの宿題として家族の見つめる中、額に汗して何枚も書き直した記憶がある。そして今でも書道が得意な人にはあこがれのような気持ちを持っている。

今回の話題は絵画作品のお話し。一応、絵画や版画制作を30年以上も続けてきた僕の新年の描き初め(かきぞめ)はやはり絵の制作である。今年の描染め作品は水彩画。お題は昨年暮れよりラフスケッチをあたためていた『オイディプスとスフィンクス』。ギリシャ神話をテーマとした西洋絵画に定番として描かれる物語場面を描いた。近世フランスの画家、アングルやモローの油彩画は特にその傑作として有名である。スフィンクスは上半身が人間の女性で下半身がライオン、背中には鷲の羽が生えた魔性を持つ幻獣である。スフィンクスが住む岩山を通る人に謎かけをし、それに答えられなかったり、間違った回答をすると連れ去って食べてしまうという恐ろしい性質を持っている。物語はザックリ書くと、スフィンクスの恐怖に悩まされる市民を正義感の強い王家の青年オイディプスが救おうと立ち向かい、謎かけの難問に正解しスフィンクスが身を投げて死ぬという筋書きである…その両者の出会いの場面を4号大の紙に描いた。

手法は昨年の個展から試みているネパールの手漉き紙に水彩とアクリルを併用したもの。吸い込みの強い紙だが、日本画家の知人に新しく開発されたドーサ液(にじみ止めの画溶液)を進められ使い始めてから紙の扱いや描画が楽になった。物語性が強くなったので両者の関係を表現するのに苦労したがなんとか仕上げることができた。描き初めも無事終了!2014年もこれに弾みをつけて制作に精進して行こう。画像はトップが僕の左手と制作途中の水彩画、下が制作途中の部分図と固形水彩絵の具。