このルドン展が良かった!! 先月の13日、新潟市美術館で開催されていた『オディロン・ルドン-夢の起源-』展を観てきた。たまたま新潟市内2か所での個展開催中に知った展覧会だった。画廊に置かれていたチラシを見ると絵画作品が多く出品されていそうである。こんな近くに敬愛するルドンが来ているのだから観て行かない手はない。と、言うわけで個展会場にしばらく在廊してから新潟市美術館に向かった。
絵を描き始めてから今までに、いったいいくつの「ルドン展」を観てきたか憶えていない。特に好きな画家ということもあるが、企画展が多いということは、それだけ日本でも根強い人気のある画家なのだろう。ルドンは印象派と同時代にあって、特異な存在の画家である。同時代の画家たちがひたすら外光と色彩の科学的分析をしていた頃、物語性と自己の内面世界を追求した人であった。今まで観てきた企画展ではだいたい初期から晩年までの作品を時系列に並べているのが常だった。初期の風景や樹木を写実的に描いた絵画・素描作品から始まって、ボルドーの版画家ロドルフ・ブレスダンとの出会い、ポーやボードレールなど同時代の文学者からインスピレーションを得て制作を始めたモノクロームの石版画作品集の数々…そして晩年、色彩に開眼してからのパステル画や油彩画の大作と、追って行く。今展も御多分にもれずこの方法をとっていたが、普段よりも絵画作品が多い。それもルドンの故郷であるボルドー美術館のコレクションと日本で屈指のルドン・コレクションを誇る岐阜県美術館の収蔵作品が出品されていた。僕、個人初めて観る絵画が多くうれしくなってしまった。特に岐阜県美術館はいつかはルドン作品を観に訪れたいとも思っていた。
その中に数点、『アポロンの戦車』や『オルフェウスの死』、『スフィンクス』など神話世界を題材とした比較的大きな作品に見応えのあるものがあった。ルドンの絵画は不思議な魅力に満ちている。近づいて見るとかなり粗い筆のタッチなのだが、光と闇、明暗の構成がしっかりと仕上がっている。長いモノクロームの版画制作時代に会得した技なのだと思う。地方都市での企画展ということもあって会場も空いていて、1点1点ゆったりと贅沢に観ることができた。東京ではこうはいかない。これだけの内容であれば間違いなく他人の頭越しに観ることになる。「偶然とはいえ、こんな展覧会との出会いというのも、たまにはあるんだなぁ」 ひさびさにかなり得をした気分になって会場を後にした。画像はトップが絵画作品『アポロンの戦車』の部分、下が会場入り口の看板、絵画作品『オルフェウスの死』、『花の中の少女の横顔』の部分(いずれも展覧会図録から複写。
※展覧会は昨年、12月23日で終了しています。