先月、今月と締切仕事などが重なりブログの更新がとても遅れてしまった。と、いうわけで先月21日に登った房総の山の話題。
今回はいつもの房総の低山を登る会『Bosso Club』のメンバーではなく、日頃、絵画作品の個展やグループ展でお世話になっているA画廊のメンバー4名と当工房のメンバー2名の合計6名による山行となった。A画廊のメンバーは最近、低山歩きにはまっていて、これまでに筑波山、奥多摩、丹沢などを登ってきたということだ。「長島さんの地元の山でコースはおまかせします」とのことだったので、東京から電車の便が良い鋸山に決定した。
JR内房線、浜金谷駅に朝10時集合。駅からトボトボと登山口まで歩き始めた。この日の前日まで天候が悪く心配したのだが、雨が止んで空には青空、絶好の登山日和となった。このメンバー、どうやら雨男、雨女はいないようである。歩き始めて20分ほどすると登山口に到着、上半身が汗ばんできて各々、寒いと思って着てきたパーカーなどを脱ぐことになった。ウグイスの囀り、カラ類など森林性の野鳥の声がそこかしこから聞こえてくる。A女史が登山道脇に変わった野草をみつけた。近づいてよく観察してみると、サトイモ科のヒガンマムシグサの花だった。この花はこの地域の特産種だが、ちょうど春のお彼岸の頃に花を咲かせるのでこの名前がついている。周囲をよく探すと数多く咲いていた。その他にもキフジやタチツボスミレ、フキノトウそれからチラホラとサクラの花も咲いていた。房総の春は早い。道が山道となり少し登りがきつくなってきたところで苔むしたレールのような敷石が目立つようになった。このコースは名前が表すように、かつて鋸山の天然石を切り出して降ろすことに使われていた仕事道である。石を切り出すのは男の仕事、それを運ぶのは女の仕事だったらしい。「昔の房総の女性は逞しかったんだなぁ」
12時前に新展望台と呼ばれる開けた場所に到着した。ここでランチにすることとなった。ここからの風景は房総の山屈指の絶景である。南に太平洋に浮かぶ伊豆大島、西に天城山、三浦半島、丹沢と並び、その遠景に真っ白に雪をかぶった富士山が見える。東京湾越しのこの富士山は江戸時代の絵師、葛飾北斎が連作『富嶽三十六景』で描いた『上総富士』である。この冬は積雪量が多かったので裾野近くまで真っ白である。さらに北西に視線を移すと東京の街が見えてくる。葛西臨海公園や新宿副都心など双眼鏡で追って見ていくと、ついにスカイツリーを発見。一同、感動したのでした。そこでH女子が一言「東京って狭いねぇ」。東京湾越しに箱庭のように見えるこの絶景を見ながらのランチは最高に贅沢なのでした。時折、トビが「ピーヒョロロロ…」と鳴きながら低空飛翔で弁当を狙ってくるのだけは閉口した。隣のベンチではA画廊のメンバーがコンロでシシャモやスルメを焼き始めたかと思ったら、焼酎を勧められた。絶景を前にしての一杯もなかなかおつなものだった。
昼食を済ませると鋸山のピークに向かう。アップダウンを繰り返し進んで行くと一等三角点のある329.5mの狭い頂上に到着。展望は良くない。早々に切り上げて石切り場に向かう。石切り場の断崖が目の前に開けてくると一同再び感動。このあたりの断崖下で当工房スタッフと二人、アトリ科の冬鳥ハギマシコの♂2羽と♀1羽を間近で観察。県内での観察記録が少ない野鳥である。羽衣に混じるバラ色が美しかった。さらに進むと奈良時代に創建された古刹、日本寺に到着。入場料を払って境内に入る。ここから地獄覗きと呼ばれる断崖絶壁まで一気に登ると空を暗い雲が覆ってきて、冷たい風が吹き始めたかと思うとポツポツと雨が降り始めた。下山を急いで大仏広場までまっしぐら。広場に到着する頃には雨もほぼ止んだので四阿で大休止をとる。水分補給をしたり、大仏様の前で記念撮影をしたりしてから、電車の時間を気にしつつ、一面のナノハナ畑やツクシ摘みを楽しみながら帰りの駅であるJR内房線保田駅に向かった。暖かい南房総の早春の一日、楽しい山行にしてくれた同行のみなさんに感謝します。画像はトップが新展望台から見た館山・伊豆大島方面。下が石切り場の断崖絶壁とモミジの芽吹き。